アウディのハイブリッド 3台に試乗|Audi
Audi A6 hybrid|アウディ A6 ハイブリッド
Audi A8 hybrid|アウディ A8 ハイブリッド
Audi Q5 hybrid quattro|アウディ Q5 ハイブリッド クワトロ
アウディのハイブリッド 3台に試乗
ドイツプレミアムブランドは、各ブランドが、ハイブリッドにたいして、独自のアプローチをおこなっている。高効率化したエンジンのエクストラパワーとして、電気モーターのアシストを使うという発想こそ、現在のところは共通しているが、今後、より、ブランドごとの特徴は明確になっていくだろう。今回は、「e-tron」、「g-tron」によって近未来にむけて動き出しているアウディの、現在のハイブリッドモデル3台すべてを一度に試す機会に恵まれた。アウディの今後を垣間見ることはできるか? 小川フミオ氏のインプレッション。
Text by OGAWA Fumio
Photographs by MOCHIZUKI Hirohiko
ハイブリッドの割合は10パーセントほどに
ハイブリッドは日本車の専売特許ではない。環境への低負荷が求められるいま、ドイツ車も力を入れている。アウディも上級車種に続々ハイブリッド仕様を導入。「A8」、「A6」、そして「Q5」が揃った。そしてどれも驚くほどよいのである。
環境問題にたいする企業責任はますます重くなり、各国で実施されつつある燃費規制は厳しくなる。そして基準に満たなければ懲罰的課税も予定されている。このように、クルマをめぐる状況は過酷になっている。
欧州では、触媒がない車両は市街地から締め出される国も。これは避けられない流れだが、生き残りのために各自動車メーカーは、いま小さなエンジン、効率よい燃焼技術、代替燃料と、さまざまな技術開発にいそしんでいる。そのひとつが、ハイブリッド車である。
ハイブリッド車は、比較的小排気量のエンジンでも力強い加速が得られることと、市街地などでの低速域で燃費が劇的に向上することから、東京をはじめとする日本の街によく向いているのは、先刻ご承知のとおり。アウディのハイブリッド車も、電気モーターだけで走るEVモードの性能向上がめざましく、日常の足にしたくなる魅力がある。
「クラウン」ではシリーズ全体でハイブリッドが占める割合が7割だが、アウディ ジャパンでは「供給量は10パーセントていどに留める」としている。購買層の指向に多少差があるかもしれないが、乗った印象からすると、その10パーセントのユーザーはまことに幸運なひとのようにおもう。ここでは、A6、A8、そしてQ5の各ハイブリッド仕様の印象を、簡単になってしまうが、個々にまとめてみよう。
Audi A6 hybrid|アウディ A6 ハイブリッド
Audi A8 hybrid|アウディ A8 ハイブリッド
Audi Q5 hybrid quattro|アウディ Q5 ハイブリッド クワトロ
アウディのハイブリッド 3台に試乗(2)
新世代のラグジュリーセダン
「A6ハイブリッド」は、3台そろったアウディのハイブリッド車のなかではもっとも日本市場への導入が早く、2012年9月に発売が開始されている。車型はセダンのみ。エンジンは小型軽量の2リッター4気筒直噴式で、ターボチャージャーが組みあわされている。駆動方式は前輪駆動で、パラレル式という、欧州車が得意なエンジンとモーターが同軸に置かれたハイブリッドシステムが採用されている。
アウディのパラレル式ハイブリッドは、シリーズ式とよばれるトヨタのTHS-IIとは大きくことなっており、従来の変速機をつかうのも特徴だ。アウディでは8段オートマチックトランスミッションを用意している。ただし、通常のATでつかうトルクコンバーターのかわりに、電気モーターと湿式多板クラッチが一体になったハイブリッドユニットが組み込まれている
そもそもA6はシャシーの軽量化をはじめ、燃費効率の向上に徹底的に取り組んだのを謳い文句にしていたこともあり、操縦しての印象は軽快。これがおなじパワートレインを使うA8ハイブリッドとの大きなちがいだとおもう。A8ハイブリッドは重厚だが、A6ハイブリッドは軽快。まったくキャラクターがちがう。
走り出しは電気モーターの力でゆたかなトルクで引っ張られるように力強く、スムーズにEVモードで50km/hほどまで加速していったのち、さらにドライバーがアクセルペダルを踏みつづけていれば、エンジンがスタートする。
EVから内燃機関への移行はスムーズで、トヨタが「クラウン ハイブリッド」に今回4気筒エンジンを採用した際、「V6と同等のスムーズさを実現することにとても気をつかった」とエンジニアが話してくれたのを聞いていたが、アウディA6ハイブリッドも滑らかである。メーターを目にしていないと、どちらのモードで走っているかわからないほどだ。
そして強くアクセルペダルを踏みこむと、電気モーターがトルクを供給し、加速はいっそう勇ましく、かつ胸がすくようなおもいができる。
室内への透過音は窓まわりも路面からも少なく、合成樹脂とウッドパネルとレザーとで構成された完璧な仕上げの室内空間に身を置いていると、このA6ハイブリッドの690万円という価格も納得がいくものとおもえる。新世代のラグジュリーセダンである。
Audi A6 hybrid|アウディ A6 ハイブリッド
Audi A8 hybrid|アウディ A8 ハイブリッド
Audi Q5 hybrid quattro|アウディ Q5 ハイブリッド クワトロ
アウディのハイブリッド 3台に試乗(3)
A8の名に恥じない
アウディ「A8ハイブリッド」は、A6ハイブリッド同様、2リッター4気筒直噴+ターボチャージャーのエンジンに、パラレル式に電気モーターを組みあわせた前輪駆動。変速機もトルコン式の8段オートマチックだ。5.1mという堂々たる車体だが、意外なほど気持ちよく走る。ガソリンエンジンの排気量だけみると、これで2リッター? と驚くぐらいだ。ハイブリッドシステムの長所をうまく活かしている。
EVモードからエンジンスタートへの移行は自然で、メーター上で「エフィシエンシー」(燃費効率のよい走行モードという意味だろうか)の領域にとどまることを意識しながら加速をしてみたが、それでも速度はあっというまに法定速度の上限に達する。
4気筒ゆえか、神経を集中しているとややラフな感覚があるのは否めないが、おおむね、気持ちのよい滑らかな走行感覚だ。ラインナップの最上級に位置するA8の名に恥じないとおもう。とくに重厚感のある乗り心地や、広々とした室内空間は、ハイブリッド仕様でも大いなる魅力だ。
また、しっかりしたシャシーは、ダイナミックモードを選択すると、その真価を発揮する。本来、ダイナミックモードではEVモードが停止し、エンジンのみの走行になるが、それだけに内燃機関のもつトルク感覚を、重さを増す操舵感覚とともに味わうのは、やはり気持ちがよい。
これではハイブリッドに乗る意味がない……と内心忸怩たるおもいにさいなまれながら、たかだか2リッターのはずなのに、走行性能に感心させられるのだった。948万円という価格は、3.0TFSIクワトロ(962万円)より低く、シリーズ中もっとも廉価なA8である。これも魅力かもしれない。
Audi A6 hybrid|アウディ A6 ハイブリッド
Audi A8 hybrid|アウディ A8 ハイブリッド
Audi Q5 hybrid quattro|アウディ Q5 ハイブリッド クワトロ
アウディのハイブリッド 3台に試乗(4)
ハイブリッド唯一のクワトロ
アウディ「Q5ハイブリッド クワトロ」は、A8ハイブリッド同様、2013年1月に日本で発売されたモデルだ。このクルマの特徴は四輪駆動のクワトロと、ハイブリッドシステムを組みあわせていることだ。方式としては、A6、A8各ハイブリッドとおなじパラレル式だが、詳細にみるとトランスミッション後端にセンターデフを持つのがQ5ハイブリッド クワトロの特徴となっている。
パワートレインに使用するパーツは、A6ハイブリッドおよびA8ハイブリッドとおなじだ。エンジンは、2リッター4気筒直噴式でインタークーラー付きターボチャージャーを備える。これに40kWの電気モーターが組みあわせられている。変速機は8段オートマチックのトルコン式である。
印象をひとことでいうと、ビックリするほど低速域で力があり、トルクの山にのっかって、気持ちのよいサーフィンをしているような快感がある。「1,500rpmから実質的に効きはじめるターボの設定といい、A6ハイブリッドやA8ハイブリッドと基本的には同一」とアウディ ジャパンではするが、体感的にはいちばん重量級のQ5ハイブリッド クワトロが、3台中もっともパワフル感が強い。
4気筒エンジンのざらつき感とでもいう回転マナーはやや高級感を殺ぐのはQ5ハイブリッド クワトロでも同様だが、中立ふきんから反応のするどいステアリングといい、コーナリング時でのフラットな姿勢といい、スポーティな楽しさがそれを相殺してあまりある価値を提供してくれる。回転があがれば、電気モーターを利用したブースト効果が得られるので、パワフルだ。知らないで乗れば、2リッターとはおもえないだろう。
Q5ハイブリッド クワトロは、A8ハイブリッドとはちがい、シリーズ中、もっとも高価。スターティングプライスが、2.0TFSIクワトロの579万円であるのにたいして、715万円だ。A6ハイブリッドとはまったくことなる方向で、ハイブリッドのキャラクターを活かしたモデルなのだ。
Audi A6 hybrid|アウディ A6 ハイブリッド
ボディサイズ|全長4,930×全幅1,875×全高1,465mm
ホイールベース|2,910 mm
トレッド 前/後|1,625 / 1,615 mm
最低地上高|150 mm
最小回転半径|5.7 メートル
トランク容量(VDA値)|375 リットル
重量|1,850 kg
エンジン|1,984cc 直列4気筒 DOHCインタークーラーターボ
圧縮比|9.8 : 1
ボア×ストローク|82.5×92.8 mm
最高出力| 155kW(211ps)/ 4,300-6,000 rpm
最大トルク|350Nm(35.7kgm)/ 1,500-4,200 rpm
モーター出力|40kW(54ps)
モータートルク|210Nm(21.4kgm)
システム最高出力|180kw(245ps)
トランスミッション|8段オートマチック
ギア比|1速 4.714
2速 3.142
3速 2.106
4速 1.666
5速 1.284
6速 1.000
7速 0.839
8速 0.666
減速比|3.252
駆動方式|FF
サスペンション 前|5リンクダブルウィッシュボーン スタビライザー付
サスペンション 後|トラペゾイダルウィッシュボーン スタビライザー付
タイヤ |245/45R18
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃費(JC08モード)|13.8 km/ℓ
燃料タンク容量|73 ℓ
CO2排出量|168 g/km
価格|690万円
Audi A8 hybrid|アウディ A8 ハイブリッド
ボディサイズ|全長5,145×全幅1,950×全高1,465mm
ホイールベース|2,990 mm
トレッド 前/後|1,640 / 1,630 mm
最低地上高|130 mm
最小回転半径|5.8 メートル
トランク容量(VDA値)|335 リットル
重量|1,930 kg
エンジン|1,984cc 直列4気筒 DOHCインタークーラーターボ
圧縮比|9.8 : 1
ボア×ストローク|82.5×92.8 mm
最高出力| 155kW(211ps)/ 4,300-6,000 rpm
最大トルク|350Nm(35.7kgm)/ 1,500-4,200 rpm
モーター出力|40kW(54ps)
モータートルク|210Nm(21.4kgm)
システム最高出力|180kw(245ps)
トランスミッション|8段オートマチック
ギア比|1速 4.714
2速 3.142
3速 2.106
4速 1.666
5速 1.284
6速 1.000
7速 0.839
8速 0.666
減速比|3.252
駆動方式|FF
サスペンション 前|5リンクダブルウィッシュボーン アンチロールバー付エアサスペンション
サスペンション 後|トラペゾイダルウィッシュボーン アンチロールバー付エアサスペンション
タイヤ |245/45R18
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ベンチレーテッドディスク
燃費(JC08モード)|13.8 km/ℓ
燃料タンク容量|75 ℓ
CO2排出量|168 g/km
価格|948万円
Audi Q5 hybrid quattro|アウディ Q5 ハイブリッド クワトロ
ボディサイズ|全長4,630×全幅1,900×全高1,630mm
ホイールベース|2,810 mm
トレッド 前/後|1,615 / 1,615 mm
最低地上高|175 mm
最小回転半径|5.4 メートル
トランク容量(VDA値)|540-1,560 リットル
重量|2,000 kg
エンジン|1,984cc 直列4気筒 DOHCインタークーラーターボ
圧縮比|9.8 : 1
ボア×ストローク|82.5×92.8 mm
最高出力| 155kW(211ps)/ 4,300-6,000 rpm
最大トルク|350Nm(35.7kgm)/ 1,500-4,200 rpm
モーター出力|40kW(54ps)
モータートルク|210Nm(21.4kgm)
システム最高出力|180kw(245ps)
トランスミッション|8段オートマチック
ギア比|1速 4.714
2速 3.142
3速 2.106
4速 1.666
5速 1.284
6速 1.000
7速 0.839
8速 0.666
減速比 前輪/後輪|3.759/3.763
駆動方式|4WD
サスペンション 前|5リンクダブルウィッシュボーン スタビライザー付
サスペンション 後|トラペゾイダルウィッシュボーン スタビライザー付
タイヤ |235/55R19
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃費(JC08モード)|12.7 km/ℓ
燃料タンク容量|72 ℓ
CO2排出量|183 g/km
価格|715万円