Porsche Panamera S hybrid|ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド 試乗
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2015年4月9日

Porsche Panamera S hybrid|ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド 試乗

Porsche Panamera S hybrid|ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド

ラグジュアリアスなポルシェ製ハイブリッドサルーンに試乗(1)

ポルシェから市販ハイブリッドモデル第2弾となる「パナメーラ S ハイブリッド」が誕生した。カイエン S ハイブリッドとおなじパワートレインを積み、市販ラインナップ史上もっともCO2排出量が低いと言われるこのプレミアムサルーンに、モータージャーナリスト 渡辺敏史氏が試乗した。

文=渡辺敏史写真=ポルシェ ジャパン

ポルシェの積極的な環境負荷低減策

世界の先進国が地道に推し進めるCO2排出量の削減は、自家用車の世界でもいよいよ待ったなしの状況だ。それは大量生産を前提としていないスポーツカーやラグジュアリーカーのブランドについても、何らかの対応を迫ることになる。

そんななか、ポルシェはレースフィールドでも市販車の世界においてもハイブリッドの可能性を積極的に模索している。すでに日本でも発売されているカイエン S ハイブリッドについで、このパナメーラ S ハイブリッドもまもなく日本に上陸。一方で限定生産されるアルティメイトスポーツ 918 スパイダーにはプラグインハイブリッドシステムを導入予定、さらにレーシングフィールドにおいては911 GT3 RにF1と同様、減速エネルギー回収型の電気ブーストシステム「KERS」を実戦投入中……と、その姿勢は他のメーカーに先んじているともいえるだろう。

Porsche Panamera S hybrid|ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド 試乗|02

先に発表した2014年のル・マン24時間レース復活参戦、そこでもハイブリッドをふくむ、なんらかの環境技術がマシンに投入されることは想像にむずかしくない。

話をパナメーラ S ハイブリッドにもどすと、日本市場においてはシリーズの本丸ともなり得るだろうそれは、今年ヨーロッパに投入されたディーゼルユニット搭載版パナメーラをも凌ぐ「ポルシェ市販車史上もっともCO2排出量の低い」クルマとされている。

Porsche Panamera S hybrid|ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド

ラグジュアリアスなポルシェ製ハイブリッドサルーンに試乗(2)

最新の4気筒Cセグメントカー同等の環境性能

現に157g/kmというカタログスペックは、ポルシェとして前人未踏どころか、最新の4気筒Cセグメントカー(メルセデス・ベンツ SLKクラスの4気筒モデルでCO2排出量142-151g/km)あたりとも大差ないものだ。専用設定されたミシュランの低転がりタイヤを用いずとも、160g/km台前半となる優れた環境性能は、270km/hの最高速や6秒フラットという0-100km/h加速というあたりがしめす動力性能と両立される。

搭載されるパワー&ドライブトレインは、駆動方式こそFRながら基本的に先出のカイエン S ハイブリッドのそれと同様だ。333psを発揮するV6 3リッタースーパーチャージャーユニットと47psを発揮するモーターは直列で8段ティプトロニックSにリンケージされ、1枚のクラッチでエンジンとモーター、相互の動力補完を制御する。

おどろくほどなめらかなリンケージのショック

パナメーラ S ハイブリッドにはモーター単独での、いわゆるEV走行を任意で選択できるスイッチも備えられているが、試乗のあいだにその機能は使うことは一度もなかった。アクセルワークに多少気づかいさえすれば、負荷の大きなゼロスタートでも発進から30km/h程度までのゾーンをEV走行でカバーすることはたやすく、実践的な省燃費走行のパラメーターがきちんと練られていることが伝わってくる。

Porsche Panamera S hybrid|ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド 試乗|05

トルコン式 8段ティプトロニックS

Porsche Panamera S hybrid|ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド 試乗|06

その後、速度があがるに連れてエンジンが連携することになるわけだが、そのさいの始動およびリンケージのショックは、おどろくほどなめらかに設えられていた。このあたりの制御はエンジニアいわく、カイエン S ハイブリッドとおなじということで、モーター領域の使いやすさや連携のシームレス感に貢献しているのは、EU計測値で2トン以下という軽い車重によるところも大きいのかもしれない。

Porsche Panamera S hybrid|ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド

ラグジュアリアスなポルシェ製ハイブリッドサルーンに試乗(3)

音や振動の違和感は皆無

走行時の燃費を大きく低減する鍵となっているのが、低負荷時や定常時には160km/h超までエンジンを停止させることが可能というコースティングモードだ。日本の高速道路で多用するような速度域であれば、目まぐるしいという言葉がピッタリなほどその介入は頻繁。さすがに120km/h巡航中にエンジンがストッと切れてしまう感覚は当初違和感を覚えるが、仮にそこから加速するさいの再始動時に発せられる音や振動の違和感は皆無に等しい。このなめらかさは、あえてトランスミッションをデュアルクラッチ式のPDKでなく、トルコン式の8段ティプトロニックSとした、そのATのコンバーターが緩衝材としての役割を果たしているという一面も大きいものと思われる。

Porsche Panamera S hybrid|ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド 試乗|08

Porsche Panamera S hybrid|ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド 試乗|09

ポルシェの名に恥じない加速性

なんとしても2トンを切りたかった(EU値)とエンジニアが言うように、同級のハイブリッドと比較しても非常に軽いパナメーラ S ハイブリッドは、異様なまでの軽快感を個性とするパナメーラ V6にほど近い軽妙なハンドリングを披露する。低回転域からたっぷりのトルクを発生する3リッター V6スーパーチャージャーユニットは、それ単体でも大柄な車体に十分見あうものだ。さらにアクセルをフルに踏み込むとモーターのトルクがそこに一気に上乗せされるため、セダンとてポルシェの名に恥じない強力な加速を得ることができる。一方で、高速道路を淡たんと走れば10km/ℓオーバーの燃費など朝飯前というのだから、この二面性はやはりあたらしく、気持ちよい。

この秋口には日本の路上を走りはじめることになるだろうパナメーラ S ハイブリッド、すでに全国のディーラーで予約は受付け中である。

Porsche Panamera S hybrid|ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド
エンジン|3.0リッターV型6気筒
最高出力(エンジン)|245kW (333ps)/5,500–6,500rpm
最高出力(モーター)|34kW (47ps)/1,150rpm
最大トルク(エンジン)|440Nm/3,000–5,250rpm
最大トルク(モーター)|300Nm/1,150rpm
トランスミッション|8段ティプトロニックS
燃費|6.8ℓ/100km(41.5mpg)
CO2排出量|159g/km

           
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