マクラーレン「720S」発表とほぼ同時に日本にも上陸|McLaren
McLaren 720S|マクラーレン 720S
日本にもわずか12時間後に上陸
新世代のスーパーシリーズ「720S」デビュー
マクラーレンは、ジュネーブ国際モーターショー 2017で、スーパーシリーズの第2世代となる新型「720S」をワールドプレミアした。そのわずか12時間後には日本でも「720S」を発表。ここでは日本の発表会を中心に、マクラーレンの新世代モデルをお伝えする。
Text & Photographs by UCHIDA Shunichi
大幅に向上したパフォーマンス
まずは最も興味が高いであろう、パフォーマンスの話から始めよう。新開発の4リッターV型8気筒ツインターボのM840Tエンジンは、最高出力720ps、最大トルク770Nmを発生。1,419kgのボディを0-100km/hまで2.9秒、200km/hまで7.8秒、300km/hまで21.4秒で到達させる。0-400メートル加速は10.3秒で、最高速は341km/hをマークする。0-200km/h加速で比較をすると、ランボルギーニ「アヴェンタドール」より1秒、フェラーリ「488GTB」よりもコンマ5秒速い結果だ。
このエンジンは、これまでのツインターボ V8 エンジンシリーズの流れを組んでおり、マクラーレン スポーツシリーズに引き続き搭載されている3.8リッターエンジンをベースに41パーセントのパーツが変更された。
720Sはアーキテクチャも変更された。基部となる新しいカーボンファイバー製のタブと上部構造の“モノケージII”を中心とした結果、「650Sと比較し18kgの軽量化に成功している」とマクラーレン オートモーティブ アジアパシフィック リージョナル セールス マネージャーのピーター・セル氏は説明する。
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踏襲したキャブフォワードデザインと、進化したエアロダイナミクス
これまでのマクラーレンと同様に、エクステリアデザインはキャブフォワードデザインを取り入れ、視認性を重視するとともに、そのシルエットはパワフルでダイナミックさを強調している。
ディテールでは、ヘッドライト部分に手のひらが入るほどの空間が設けられた。ここにはロー テンパレーチャー ラジエーターを搭載し、有効な冷却が施されている。そのヘッドライトはアダプティブLEDマトリックスを採用。ハイ&ローを自動的に切り替えるアダプティブライトは照射範囲をコントロールするためモーターで角度を調整することが多いが、720Sはライトの一部を点灯、消灯することで角度を調整。「これによりモーター重量を削減した」とセル氏はいう。
マクラーレンお得意の跳ね上げ式のディヘドラル ドアも踏襲され、ルーフまで大きく切り欠きを入れることで乗降性が高められた。更に、ドアを開いた時には650Sよりも片側15センチ内側に入っているので、駐車スペースを気にする必要も減少した。
またこのドアはエアロダイナミクスにも大幅に貢献。フォーミュラ1のバージボードをドアに採用している。セル氏によると、「フロントホイールアーチから来る高圧エアを利用し、バージボードでダウンフォースに変換しているのだ」と説明する。
このサイド面ではエアインテークが見当たらないのも特徴だ。「サイドエアインテークを用いると、空気の流れの方向を変えなければいけないのであまり効率的ではなかった。そこで、クルマの近くを通るエアフローは非常に高速で大きなエネルギーを持っているので、それを利用してエンジンを冷やしている」とし、サイドシル付近やショルダー付近、ルーフを流れるエアを利用しエンジンを冷却していることを語る。
インテリアではクオリティ面で大幅に改良が加えられた。レザーはBridge of Weir(ブリッジ オブ ウィアー)というスコットランドの最上級のレザーを使用。アルミの部分は削り出しを採用している。更にフォールディング ドライバー ディスプレイという新しいディバイスも投入。これは新しいTFTクラスターで、スポーツ走行するときにはメーターを90度回転させ情報を最小限まで落とすことが出来るものだ。
実用性の面では、フロントには150リッターのラゲッジスペースを確保。オプションとして360度のパーキングカメラも用意されている。
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誰でもヒーローになれるドライビングダイナミクス
軽量化されパワーも上がったことから、コントロール性も向上させるためマクラーレンとしてのイノベーションとテクノロジーも投入された。
720Sは、650Sのプロアクティブ シャシーをベースに“プロアクティブ シャシー コントロールII”に進化。「スタビライザーは装着されず、油圧で全てを制御しています。具体的には新たに各ホイールに3個、合計で12個センサーを追加しました。内訳は4つの加速度センサーと8つのプレッシャーセンサーです」と説明。それらの情報は、システムの中枢にあるオプティマル コントローラー アルゴリズムによってミリ秒単位で分析され、その結果にもとづいてサスペンションの減衰力が直ちに最適化される。このアルゴリズムは、「ケンブリッジ大学との共同で、6年の歳月を経て開発に成功した」とセル氏は胸を張る。
更に可変ドリフトコントロールも追加された。これは、センターコンソールにあるダイナミックパネルで操作でき、「新しいレベルに達した電子制御スタビリティ コントロール(ESC)により可能になった」とセル氏。ダイナミックパネルに表示されている操作エリアを指でスワイプするだけで、ESCの介入レベルを調整し、ドリフトアングルを設定することが出来、それによって、「誰でもジェンソン・バトンやフェルナンド・アロンソのようにヒーローになることが出来るのですよ(笑)」という。
この可変ドリフトコントロールについてセル氏は、「ラップタイムを重視したテクノロジーではない。それよりもよりドライバーに楽しんでもらうことを考え、スリップアングル、ドリフトアングルを設定することによって通常のドライバーでも楽しく安全にドリフトができるようにしています」と説明した。
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スーパーシリーズの2ndジェネレーション
さて、マクラーレンのラインナップは大きく3つのカテゴリーに分類される。ひとつは「P1」や「P1 GTR」がある「アルティメット シリーズ」。次に「570S」や「570GT」などの「スポーツ シリーズ」。そしてこの「720S」が属する「スーパー シリーズ」だ。
スポーツ シリーズはマクラーレンのエントリーラインとして存在。一方のアルティメット シリーズは究極のマクラーレンとしてスポーツ走行を主体に開発されたもの。その中間がスーパー シリーズで、2011年の「MP4-12C」がそのスタートだ。その後「650S」や「675LT」を経て2ndジェネレーションとなる720Sがデビューしたのだ。
マクラーレン オートモーティブ アジア・パシフィック マネージング ディレクターのジョージ・ビッグス氏は、この720Sについて、「720Sは、スーパーシリーズを新しく進化させます。ほんの少し進化させたり、正常に進化させるのはマクラーレン流ではありません。我々は、大きくジャンプするのです。スタイリングやパフォーマンス、使い勝手、エンゲージメントの全てにおいて飛躍的進歩を遂げています。そのキーワードは“raising your limit”(リミットを上げよう)です」と述べ、大幅に進化していることを強調した。
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12時間後に日本でローンチした理由
「日本市場はマクラーレンにとって非常に重要で、昨年は全生産台数の6パーセントを日本で販売した。東京、大阪、名古屋、福岡でしっかりとした基礎を固めているので、さらに成長したいと考えています」とビッグス氏の言葉を裏付けるように、各市場の中で最初にローンチしたのが日本市場だった。
その理由についてビッグス氏は日本市場の特徴を挙げる。「日本のスーパーカー市場は非常に成熟しており、スーパーカーが何たるかをよく知っているユーザーが多くいらっしゃいます。そのユーザーに向けて、我々はこの720Sが完璧にフィットすると考えているのです」と話す。
更に、マクラーレンン オートモーティブ アジア日本支社の名取雅裕氏も、「日本で成功すればアジア諸外国はそこについてくると考えています。その理由はベンチマークを作りたいということと同時に、スーパースポーツカーのカルチャーや文化自体が、少なくとも40年から50年の歴史があり、アジア諸外国と比べると最も成熟し、かつ、ユーザーのクオリティも高い。ここで成功した実績が諸外国に伝播して牽引役になることと思います」と述べた。
名取氏は720Sについて、「日本市場で確実に存在感を表すことが出来、更にマクラーレンの認知度を一層上げられるモデルであり、強力な商品が出来たという自負もあります。マクラーレンの存在感はこのモデルを通じてより強化できます」とし、2ndジェネレーションに進化したことで、更なる躍進につながることが期待されている。
マクラーレン 720Sの日本での価格は3,338万3,000円。デリバリーは7月からを予定している。
McLaren 720S|マクラーレン 720S
ボディサイズ|全長 4,543 × 全幅 1,930 × 全高 1,196 mm
ホイールベース|2,670 mm
乾燥重量|1,283 kg(油類及び燃料90パーセント積載のDIN値は1,419 kg)
エンジン|3,994 cc V型8気筒 ツインターボ
最高出力| 537 ps(720 ps) / 7,500 rpm
最大トルク|770 Nm / 5,500 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(SSG)
駆動方式|MR
ブレーキ 前|φ390 mm カーボンセラミック ディスク
ブレーキ 後|φ380 mm カーボンセラミック ディスク
サスペンション|ダブル ウィッシュボーン
タイヤ 前/後|245/35R19 / 305/30R20
トランク容量|フロント 150リッター、リア 210リッター
最高速度|341 km/h
0-100km/h加速|2.9 秒
0-200km/h加速|7.8 秒
0-300km/h加速|21.4 秒
0-400m|10.3 秒
200-0km/h減速|4.6 秒、117メートル
100-0km/h減速|2.8秒、29.7メートル
CO2排出量|249 g/km
燃費(NEDC combined)|10.7 ℓ/100km(およそ9.35 km/ℓ)
価格|3,338万3,000円