プレミアムコンパクト ボルボV40に試乗|Volvo
CAR / IMPRESSION
2015年4月2日

プレミアムコンパクト ボルボV40に試乗|Volvo

Volvo V40|ボルボ V40

プレミアムコンパクトカーにボルボという選択肢

ボルボV40に試乗

プレミアムコンパクトカーが豊作だ。あたらしくなった「アウディA3」、モデルバリエーションの充実した「BMW 1シリーズ」、そして、姿をかえた「メルセデス・ベンツ Aクラス」。ここにくわわってくるのが、「ボルボV40」だ。モデル名こそV40だが、新型V40は、セダンである「S40」のステーションワゴンモデルとして1995年に登場した初代、「V50」という名に変更された2004年発売の2代目から、ハッチバックへと姿を変え、事実上は、まったくあたらしいクルマだ。今年、ジュネーブモーターショーにて登場した、このモデルに、おなじみ、島下泰久氏が試乗した。

Text by SHIMASHITA Yasuhisa

ボルボにとっての初挑戦

いわゆるプレミアムコンパクトカーは、輸入車のなかでも今もっとも活気のあるセグメントのひとつだ。「アウディA3スポーツバック」や「BMW1シリーズ」は好調な販売をつづけており、そこに今後はコンセプトを一新した「メルセデス・ベンツAクラス」も参入してくる。さらなる盛り上がりは必至といったところだが、来年初頭にはさらにもう1台、強力な選択肢がくわわることになる。それが「ボルボV40」だ。

このV40は、現行の「C30」より上位に位置し、実質的には「S40」や「V50」と置き換わるべく用意されるモデルである。しかしながらボディ形状は、そのいずれともことなっている。つまりボルボにとっては、ほぼ初参入のカテゴリーということになる。



肩の力がぬけた

それだけに重要なのは、まず存在感をしめすこと。V40は特にそのスタイリング、そしてパッケージングで、その個性を強くアピールしている。

XC60」以降の新世代ボルボの延長線上にあるダイナミックな造型のボディは、ロングルーフのフォルムによって、ハッチバックというよりワゴンに近い雰囲気を醸し出している。実際、開発陣もこれはワゴンの一種なんだ、と話していた。車名にボルボのステーションワゴンに共通の“V”を使うのには、ちゃんと意味がある。

一番の見所はといえば、ルーフ、ショルダー、ドアシルの3つのラインが、V60にも通じる特徴的なリアエンドに向けてきれいに収束していくサイドビューだろうか。キャビン後半部分が強く絞り込まれて、リアフェンダーを逞しく浮かび上がらせているあたりもなかなか。全身無駄のない、緊張感あるシルエットはスポーティだ。

いっぽうで、よく見ればVシェイプのボンネットや大きなラジエーターグリル、縦型のテールランプ等々、ひと目でボルボとわかるディテールが、そのなかにしっかり溶け込んでいる。

唯一、どんな意味があるのか不思議におもって聞いたのは、ショルダーラインがリアのドアノブの上辺りで一旦キックアップしている部分なのだが、じつはこれはボルボ往年のスポーツワゴン、「P1800ES」からの引用なのだという。

とはいえ、ディテールが複雑過ぎるということもなく、全体に造型はとてもきれいにまとめられている。すでに「XC60」、あるいは「S60 / V60」が世の中で受け入れられているという事実を背景に、何だか肩の力が抜けたという印象も漂う。

Volvo V40|ボルボ V40

プレミアムコンパクトカーにボルボという選択肢

ボルボV40に試乗(2)

インテリアにも妥協はない

室内も、やはり今のボルボに共通の雰囲気で仕立てられている。アナログ文字盤の代わりにTFTディスプレイをもちい、気分や好みに応じて“エレガンス”、“エコ”、“パフォーマンス”といったメーター表示の意匠を自由に選択できるメーターパネルをはじめ、LEDが輝くクリア素材のシフトノブや、様々な色を選べるLEDのライティングなど、遊びの要素が増えているのは、ターゲットユーザーを若く設定しているからだろうか。いっぽうでクオリティは十分に高く、それこそ「S60/V60」にまったく遜色ない。

内装色には、「C30」などでも見られたような大胆なものが用意されている。カラー&マテリアルデザインマネージャーを務めるマリア・ウグラ女史によれば、このクオリティと色使いにかんして妥協は一切排して、質の高さとスカンジナビアンテイストを強調したという。余談ではあるが、試乗車のうちの1台、最初のページのメインビジュアルのクルマがまとったブルーとグリーンと中間のようなボディカラー、「ミスティブルー」は彼女のイチ推しとのことである。



ラージカーフィーリング

空間的にも余裕は十分。前席は左右方向の広がり感と、身体をすっぽり包む大きめのシートが好印象だ。いっぽう、後席は着座位置がやや高めで、かつ左右席が微妙に内側に寄せられていて、視界が開けているのが良い。パノラミックルーフ付きでも頭は天井には触れないし、足元スペースも広い。ボルボはこの室内をして“ラージカーフィーリング”と謳っているが、確かにそれも納得というところだ。

ただし、それとのトレードオフで荷室容量は通常時で335リットルに留まる。それでも中折れ式のフロアボードを採用し、立て掛けて荷室を区分けしたり、フルフラットに、あるいは容量優先で深さを稼いだりとアレンジの自由度は高い。「V50」のような正当派ワゴンだとおもわなければ、使い勝手は悪くなさそうである。

Volvo V40|ボルボ V40

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ボルボV40に試乗(3)

フットワークには訴求力がある

走りの面でもV40は「ドライビングダイナミクスでクラスをリードする」と謳うぐらい威勢が良い。その土台となるボディは剛性アップと軽量化が図られ、S40/V50のものの発展形だというシャシーにも徹底的に手が入れられている。

エンジンはガソリン5種類、ディーゼル3種類が用意されるが、そのうち今回は最高出力180ps、最大トルク240Nmを発生する1.6リッター直噴ターボエンジンを積み、パワーシフトと呼ばれる6段デュアルクラッチギアボックスを組み合わせた“T4”グレードに試乗した。

標準の“ダイナミック”ではなく、10mmローダウンされる“スポーツ”シャシーを奢っていた試乗車は、18インチのタイヤ&ホイールを履くこともあって乗り心地はやや硬くロードノイズも大きめなのが、らしくなく感じられたが、いっぽうで爽快なフットワークには大いに唸らされた。

操舵力を3段階に調整できるステアリングは、掌に伝わるフィーリングこそ豊かというほどではないが、レスポンスは上々。減速してステアリングを切り込み、旋回姿勢に入るまでの一連の挙動の繋がりが良く、強引に引き寄せられる感覚なしに、ごく自然に、しかし素早く向きが変わっていく。

このあたりの一体感、自然な感覚は、今にしておもえば新生ボルボを特徴づけるべくクイックさが強調されていたS60/V60を凌ぐと言ってもいい。たんに初期応答性が高いだけでなく、コーナー後半に至るまで舵はしっかり効くし、立ち上がりの加速もスムーズ。軽快感があり、しかも上質なこのフットワークは確かに訴求力がある。

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プレミアムコンパクトカーにボルボという選択肢

ボルボV40に試乗(4)

朗報 Sレンジ

動力性能にも不足はない。特に上までまわした時の加速は上々だ。一方、低回転域では、やや線の細さを感じる場面も。スペック上は1,600rpmから5,000rpmまでのあいだで最大トルクを発生しているはずなのだが、回転が落ちると再加速の際に一瞬間が空き、結局キックダウンさせなければならないということが頻繁に起こるのだ。

朗報は、パワーシフトに変速ポイントを高回転側に寄せるSレンジが追加されたこと。長年、ボルボのATにはこれがなかったのだ。できればパドルシフトも欲しいところだが、まずはこれだけでも随分リズミカルな走りが可能になったのは間違いない。

当然のように、きわめて安全

ボルボにとっては当然のことだが、V40は安全性には最大限の配慮がなされている。定評のシティセーフティ(低速用追突回避・軽減オートブレーキシステム)は標準装備だし、歩行者の自動検知をもおこなうヒューマンセーフティも設定。BLIS(ブラインドスポットインジケーター)はアップグレードされ、速度規制などの道路標識を認識してメーターパネル内に表示するロードサインインフォメーションも搭載された。

さらにV40は、世界初の歩行者用エアバッグも用意する。これは歩行者との接触が起きた際にエアバッグによってボンネットを持ち上げ、更にフロントガラスやAピラーの下側3分の1ほどの範囲をカバーすることによって、跳ね上げられた歩行者が、この周辺に頭を打ち付けるのを防ぐというものだ。ここ日本でのデータによれば、交通事故死亡者全体のうち、歩行者事故はじつに36パーセントを占めるという。車内の乗員ではなく、車外の人を助けるためのエアバッグ。大きな効果が期待できるはずである。



日本導入が待たれる

冒頭にも記したように、昨今ますます熱気を帯びてきているプレミアムコンパクトカー市場。この秋には新型VWゴルフも登場の予定だから、さらに注目が集まることは間違いない。しかしながらこのV40、ゴルフはあまり競合と考えていないそうである。確かに、サイズはそれより若干大きく、室内も広い。ユーティリティにもボルボのVモデルらしい工夫が盛り込まれたV40は、たんに優れた実用車だというのではなく、よりライフスタイルギア的な性格が強い1台と言うことができそうだ。

日本での発売は来年初頭の予定。今回試乗したT4のパワーシフト仕様が導入される予定である。

小川フミオ氏による国内試乗記はこちら

spec
Volvo V40 T4|ボルボ V40 T4
ボディサイズ|全長 4,369 × 全幅 1,802 × 全高 1,445 mm
ホイールベース|2,647 mm
車両重量|1,450 kg
エンジン|1,596 cc 直列4気筒DOHCターボ
駆動方式|FF
最高出力|180 ps / 5,700 rpm
最大トルク|240 Nm / 1,600-5,000 rpm
トランスミッション|デュアルクラッチ式6段オートマチック
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット/マルチリンク
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤ|245/40 R18

           
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