VOLVO V60|ボルボ V60 あたらしい世代のステーションワゴン
CAR / IMPRESSION
2015年3月16日

VOLVO V60|ボルボ V60 あたらしい世代のステーションワゴン

VOLVO V60|ボルボ V60

クーペとワゴンを両立させた新世代のステーションワゴン(1)

クーペとワゴンのハイブリッドともいえるボルボV60(395万円~)が登場。家族がいるけれどカッコいいクルマに乗りたい、なんていうユーザーにぴったりかもしれない。

文=小川フミオ

独特なキャラクターラインとS60と共通の顔立ち

ボルボ・カーズ・ジャパンでは、2011年5月9日、新型車ボルボV60を発売した。セリングポイントは、デザイン、走りのよさ、燃費、そして安全と多方面にわたる。スタイリッシュなデザインを強調することで、若々しいイメージと機能とをうまく両立させ、ニッチ(すきま)マーケットに対応しているのが特徴といえる。エンジンによるバリエーション2種類。3リッター6気筒ターボ搭載モデル(539万円~)と、ダウンサイジングコンセプトによる1.6リッター4気筒ターボ搭載モデル(395万円)。

ボルボV60はたしかに目を惹くデザインだ。テールゲートを備えたワゴン車型でありながらキャビンを低く抑えている。かつてのホンダが得意としたハイブリッド(ふたつのスタイルの合体)コンセプトだ。フロントグリルはさきに発表されているS60と共通する、ちょっとアクの強いデザイン。強烈にボルボと印象づけられる。もっとも印象に残るのは、斜め後方からの眺めで、低く抑えられたキャビンと、ボルボが「ダブルウェイブ」と呼ぶ躍動的な車体側面のキャラクターラインとが、このクルマの個性となっている。

VOLVO V60|ボルボ V60 あたらしい世代のステーションワゴン|02

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ボルボはニッチにはまる商品を出すのが、不得意なメーカーではない。むしろ独特の個性をもったモデルなら、いくつもすらすらと挙げることができる。たとえば――。車高をやや高めてSUVの要素をステーションワゴンに加味したV70クロスカントリーや、クーペのようにキャビンを小さくまとめた4ドアセダンの先鞭をつけたS60、それに大型SUVにルーフ前後長を抑えてコンパクトでスタイリッシュな印象のキャビンを載せたXC60……。ありそうでなかったモデルの開発に積極的だった。これらのモデルには共通点がある。ボルボが意識しているのは、若々しさと思えることだ。「V」とは多様性(Versatility)のことだそうだが、それがよく合うモデルだ。

V60も若々しいイメージを特徴としている。止まっている姿と動いている姿の印象が、おもしろいほど好対照で、走っている姿には強い躍動感がある。側面から見ると、後方にいくにしたがってルーフラインは下がり、いっぽうサイドウィンドウのベルトラインは上がり、結果として後席や荷室の存在感が弱くなり、それがワゴンが象徴する実用性や機能性の印象を薄めるのに成功している。

より気持ちよく運転できるハイパフォーマンスモデル「T6」

モデル構成は、大胆にふたつの方向性を大きく分けている。3リッター直列6気筒ターボという大型エンジンにフルタイム4WDシステムを組み合わせた「T6 AWD」(539万円~)と、燃費志向の1.6リッター4気筒ターボの「DRIVe」(395万円)だ。後者のDRIVe(ドライブ・イーと読ませる)はS60を皮切りに、最近ではV70や限定的だがS80に搭載モデルを設定している。環境志向の時代に向けて開発された肝いりのパワーユニットだ。

操縦した感覚は、トルクがたっぷりあって扱いやすく、かつ乗り心地が快適。これは6気筒も4気筒も共通している。T6の場合、440Nmものトルクが2,100rpmから発生する設定が運転しての気持ちよさにつながっている。力強く、しかしスポーティさは適度に抑制されたステアリングで、リラックスして快適な操縦ができる。

いっぽう、DRIVeの1.6リッター4気筒ターボユニットは、全長4,630mm×全幅1,845mm、かつ1560kgのボディをという車体をもてあますことなく、意外と軽快な走りを見せる。S60で体験ずみだったので驚かなかったが、180psの最高出力をもち、240Nmの最大トルクを1,600rpmから発生するこのエンジンは、よくできていると思う。

ではどちらが、というと、価格差を無視できるなら、試乗会で箱根を走った印象でいえば、6気筒のT6のほうがしっとりしていて好ましい。モデルによっては、大型エンジンにはスポーティな足まわりを組み合わせて、キャラクター設定を明確に分けることもあるが(V60にもT6 AWD R-Designという硬めの足まわりをもつモデル設定があるが)、T6 SE AWDとDRIVeは、どちらも適度にスポーティで、リラックスして乗れるという点でおなじ方向を向いているようだ。そこにあって、大型エンジンと重めの車体によるしっとりした乗り心地という点で、T6がより好ましく思えたのだろう。

VOLVO V60|ボルボ V60

クーペとワゴンを両立させた新世代のステーションワゴン(2)

シンプルなインテリア、豊富な内装色と革のコンビネーション

室内のデザインはシンプルで整っていて、オプションで用意された豊富な内装色や革とのコンビネーションを選べるのも、印象として豊かでユーザーには高得点だろう。後席スペースも実際にはヘッドルーム、レッグルームとも余裕があり、スタイルを手にいれるためにどこかでガマンをする必要はない。細かいといえば細かいことだが、DRIVeのリアシートバックは40/20/40の3分割可倒式。「これは上級車で見られますが、通常60対40となるこのクラスでは異例」とボルボ・カーズ・ジャパンでは胸を張る。

ワインディングロードを走るとき、からだが動いてしまう。大柄な国民が多いスウェーデンが、瞬間風速的には為替の問題で高価格化して販売の伸びが鈍化しているとはいえ、主市場のひとつである米国向けに開発したからか、シートが日本人の多くには大きすぎるせいだろう。上体を左右でしっかりホールドしてくれるなら、もうすこし小ぶりだとうれしい。あるいは革張りシートに乗ったからこの印象が強かったのかもしれない。ファブリックシートだと、すべりは抑えられ、より快適な感覚が強くなるとも考えられる。

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事故ゼロを標榜する最新ボルボの運転支援機能

今回の試乗とは関係ないので、触れておくだけにとどめるが、歩行者保護という現在のボルボにとって重要なテーマも、V60には活かされている。2020年までにあたらしいボルボ車がかかわる事故や死傷者をゼロにするという目標を掲げているボルボでは、電子器機を積極的に使って、事故回避システムを採用している。「あたらしいボルボ」はいつからのモデルをいうか定かではないが、「シティ・セーフティ」と「ヒューマン・セーフティ」が搭載できるV60はそこに入るのだろう。

「シティ・セーフティ」は先行車との衝突を回避するか損傷を低く抑えることを狙ったシステムだ。赤外線レーザーで先行車との距離を測定していて、いざというときブレーキ制御をする。相対速度が時速15kmまでなら追突回避、時速30kmまでなら衝突軽減と謳われる。こちらは全車標準装備。

「ヒューマン・セーフティ」は、「歩行者検知機能つき追突回避・軽減フルオートブレーキ」。レーダーとカメラで車両前方をチェックしており、ブレーキ制御により、歩行者や車両との衝突を回避しようという働きをもつ。時速35kmまでは衝突回避、歩行者の場合、時速80kmまでは衝突ダメージを軽減する。こちらは全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロールや車線からの逸脱を警告するレーン・デパーチャーウォーニング、死角を走行する車両の存在を知らせるBLISなどと組み合わされた「セーフティ・パッケージ」(25万円)として用意される。ボルボ・カーズ・ジャパンによると、S60では7割がこのオプションを装着しているそうだ。

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細かなニーズに応える、ボルボ車の多様性

価格的にも日本市場をかなり意識して戦略的な方策がとられたようだ。ボルボ・カーズ・ジャパンによると、V60 DRIVeの場合、ベーシックプライスの395万円にナビパッケージを装着しても420万円で、おなじ価格帯のライバルを探すとメルセデス・ベンツC200 Blue EFFICIENCYステーションワゴンLITE(419万円)が挙がる。そのうえはアウディA4 アバント2.0 TFSI(458万円)や、パーキングアシストリアビューカメラやサイドエアバッグ、先行車への追突回避システムであるPRE-SAFEといったものを備えるメルセデスC200 Blue EFFICIENCYステーションワゴン(460万円)などが並ぶ。ナビゲーションシステムは未装着だ。V70はさらにレザーパッケージを選択しても445万円で、価格優位性が強調される。

豊かというのは、たんに装備が豊富であればいいというものではない。ライフスタイルが個人によって千差万別なように、クルマも微妙に異なるニーズに細かく応えてくれることが求められている。シートの色やダッシュボードの材質からして、細かい設定がされているボルボ。なかでも、あたらしい世代のステーションワゴンといえるV60の存在意義はそこにあるだろう。

VOLVO V60 DRIVe|ボルボ V60 ドライブイー
ボディサイズ|全長4,830×全幅1,845×全高1,480mm
ホイールベース|2,775mm
車輌重量|1560kg
エンジン|1.6リッターDOHC水冷直列4気筒
最高出力|180ps(132kW)/5,700rpm
最大トルク|240Nm/1,600-5,000rpm
価格|395万円

VOLVO V60 T6 AWD SE|ボルボ V60 T6 AWD SE
車輌重量|1,800kg
エンジン|3.0リッターDOHC水冷直列6気筒
最高出力|304ps(224kW)/5,600rpm
最大トルク|440Nm/2,100-4,200rpm
価格|559万円

           
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