ボルボ V40に試乗|Volvo
Volvo V40|ボルボ V40
北欧プレミアムコンパクト
あたらしいボルボ V40に試乗
かつては、「40シリーズ」と言えば、セダンボディのモデルが「S40」と呼ばれ、「V40」はワゴンボティのモデルを指す呼び名だった。しかし、2004年にワゴンモデルが「V50」という独立したモデルとして再出発をし、「V40」の製造を終了して以来、長らくそのネーミングは途絶えていた。9年を経て今回、「V40」のネーミングが復活。あらたにハッチバックボディを手にいれて、強豪ひしめく激戦区、「Cセグメント」への参入を果たした。北欧のプレミアムコンパクトハッチバックとはどんなものなのか? 島下泰久氏による、イタリア ベローナでの試乗記につづいては、ついに日本でも発売された新型「V40」に乗り込んだ、小川フミオ氏のインプレッション。
Text by OGAWA Fumio
Photographs by ARAKAWA Masayuki
競争熾烈なクラスに挑む
プレミアムスポーツコンパクトを謳う新型ボルボ「V40」が、2013年2月19日よりわが国で発売された。
「ボルボの大型モデルの特徴や機能を小型車のパッケージにとりいれる」(ボルボ カーズ ジャパンの広報資料)といい、効率のよいエンジンにくわえ、安全装備の充実が商品性の核となっている。
ボルボV40のプレス向け試乗会が開催されたのは、千葉・木更津。ちかくに東京湾アクアラインがあり、市街地と高速道路、2つのことなる交通モードでクルマを試乗できる。「アルミと高張力鋼板を多用して軽量化をはかるとともに、リアサスペンションには応答性にすぐれたモノチューブダンパーを採用」とボルボ カーズ ジャパンが誇らしげに謳う、V40の持つ動力性能と操縦性と相性がよい、という判断も、主催者がわにはあったのだろう。
日本に導入されるモデルは、1.6リッター4気筒の直噴式エンジンで、ターボチャージャーを備える。最高出力は180ps、最大トルクは240Nm。6段デュアルクラッチ変速機を介して前輪を駆動する。「V40 T4」(269万円)と、革シートを備え、1インチ大きい17インチ径のタイヤを履く「V40 T4 SE」(309万円)の2本立てとなる。
アウディ「A3」や、メルセデス・ベンツ「Aクラス」、それにBMW「1シリーズ」、さらにレクサス「CT」が気を吐く熾烈なプレミアムコンパクトクラスで、V40の存在価値はどこにあるか。試乗しての印象をひとことで書くと、インテリアに凝っているため趣味性がもっとも高く、走る・曲がる・止まるの全方位的にバランスのとれたモデルだった。
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審美的価値が高い
試乗会場で出会ったV40(ブイ・フォーティ)は、初見では、既発の「S60」や「V60」などとデザイン的な近似性が強い印象だ。しかし、4輪とボディとのバランスがよいプロポーションをもっており、面の構成やラインの入れかたもていねいで審美的価値が高い。
「(ボルボ)史上最良の燃費・環境性能を備え、運転する喜びや所有する喜びといった価値に満足していないハイブリッドカーユーザー層へもアピール」(ボルボ カーズ ジャパン)というように、このクラスで最多販売台数を記録しているレクサスCT200hのユーザー層の切り崩しも狙っているモデルとしては、内装を含めて、たしかに確固たる存在感がある。
V50と比較すると、ホイールベースが5mm延びるいっぽう全長は150mmコンパクトになっているV40。ライバルとくらべると、アウディA3およびメルセデス・ベンツ「A 180」より全長で80mm長く、BMW 116iよりも35mm長い。しかし大きなクルマという印象は薄い。このときの試乗会にあわせてスウェーデンから来日したエクステリア チーフデザイナーのサイモン・ラマー氏は、1970年代初頭の同社のステーションワゴン「P1800ES」とのヘリティッジをもちだし、ロングルーフのステーションワゴン的な要素も兼ね備えていることを強調した。後方でキックアップしたベルトラインなど、どちらかというとクーペ的な印象をうけた。
なにはともあれ、速い
スポーティさもV40のコアバリューとされるだけあって、走りは意外なほどきびきびとしていて、なにはともあれ、速い。
この1.6リッターターボエンジンは、3,000rpmから上で活き活きとしはじめるキャラクターで、燃費とは両立しにくいが、ここから4,000rpmあたりをつかうと、すばらしく楽しいおもいができる。アクセルペダルの踏み込みにたいする反応はよく、かつボルボのエンジニア自慢のサスペンションシステムはしなやかに動き、くわえて操舵もしっかり感がある。
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モダン家具をおもわせる
V40の運転席に腰を落ち着けると、ボルボ車でおなじみ「フローティングセンタースタック」とよばれるモダン家具をおもわせるセンターコンソールとともに、一眼式モニターというV40ならではのメーターが印象的だ。これはボタン切りかえ式で「エレガンス」(アナログ式速度計が大きく、わきにエンジン回転数と使用中のギアを表示)、「エコ」(燃費など効率のよさをインジケーターで表示)、そして「パフォーマンス」(アナログ式の回転計と使用可能な出力を表示するパワーメーター)と、3つのモードがえらべる。
「日本導入モデルとして過去最良」とボルボ カーズ ジャパンが謳う、リッター16.2kmの燃費(JC08モード)を重視するなら、ゆったりと2,000rpmあたりで走らせればよい。いっぽう、活発に、というなら、さきにも書いたように、3,500rpmあたりのターボゾーンをしっかり使うと、V40は別のキャラクターをみせる。V40から「パワーシフト」といって、マニュアルモードをもったセレクターが採用されたので、スポーティなドライビングが味わえるようになっている。
望めば応える
V40の特性としては、きわだつスポーティさはないが、ドライバーが要求すれば、それにしっかりこたえてくれるというのがある。巡航速度域はそうとうたかいし、ハンドリングはウルトラシャープというのではないが、それでもコーナリングではしっかりした応答性が確保されている。
姿勢制御もしっかりとコントロールされていて、ロールは抑えめ。コーナーでは進入から脱出まで、過渡領域をふくめて、安定感が強い。総体的な印象としてスポーティなモデルではないが、求めれば得られる。それでいいのだとおもう。
独特なリヤシート
「コンパクト」というわりには全長4,370mmと比較的余裕ある全長をもつV40。室内は前席は空間的余裕があり、居心地がよいし、操縦性も高い。シートの座り心地はよく、乗員のホールド性も高い。
落ち着いてドライビングに意識を集中できるし、助手席の乗員は、リラックスしていられる。プッシュボタンを多用したセンターダッシュボード上のコントロール類は、配置の問題などあり、慣れないうちはブラインドタッチができず、扱いにくいのが気になるが。
いっぽう後席は、「前方への見通しを考えて、乗員の着座位置を中央に寄せた」とボルボ カーズ ジャパンでは説明するように、独特のポジションをとる。ぎりぎりのスペースで、やや窮屈。どちらかというと、このクルマは、2人でつかうひとに向く。
もうひとつ、後席で気になったのは、乗降性。側突による安全性を確保するためサイドシルが太く、足さばきがいまひとつよくない。降りるときに必ずズボンの裾がサイドシルに触れるのも気になる。雨の日など荒天時に白いズボンや長いスカートははけないだろう。
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ボルボ ブランドへの信頼
ふだんは気づかないが、オーナーには重要なのが安全装備だ。ボルボV40のもうひとつの魅力は、そこにある。とくに10種類の機能が詰まった「セーフティパッケージ」が20万円のオプションで全車に設定されている。機能を列記してみよう。
1 歩行者や車両を感知して衝突を回避、あるいは衝撃を軽減する「ヒューマン・セーフティ」
2 車速追従機能つき「アダプティブ クルーズコントロール」
3 前方車両との車間距離が縮まると警告灯が点滅する「車間警告機能」
4 ドライバーの運転状況に応じて警告音を発する「ドライバー アラートコントロール」
5 車線逸脱を修正するボルボ初の「レーン キーピング エイド」
6 ドライバーの死角の車両の存在を伝える「ブラインドスポット インフォメーション システム」
7 急接近する車両の存在を伝える「レーンチェンジ マージ エイド」
8 後退するとき左右からの車両の接近を知らせるボルボ初の「クロス トラフィック アラート」
9 制限速度など道路標識をメーターパネルに表示する「ロードサイン インフォメーション」
10 前方の車両を感知しハイビーム走行時にロービームに切りかえる「アクティブ ハイビーム」
さらに「歩行者エアバッグ」(オプション)も、以前から安全性を謳ってきたボルボ的な安全装備だ。歩行者をはねあげた際にけがを軽減するためウィンドシールドとボンネット後端とのあいだにエアバッグが展開されるというシステムだ。ボンネットは歩行者をうけとめるべく変形する設計だが、ウィンドシールド下端やAピラーといった硬い部材との接触を防ぐ目的がある。
こういう安全装備はこれからも各ブランドで充実していくだろうし、価格はどんどん下がっていくだろう。その先鞭を切るのは、イメージをリードする意味でマーケティング的にもたいへん重要だ。クルマが守ってくれている、という意識をドライバーが日常的に持つことは、そのブランドへの信頼性にもつながる。その意味で、オプションながら安全装備の数かずを充実させたボルボV40の取り組みは、おおきく注目に値いする。
Volvo V40|ボルボ ブイ フォーティ
ボディサイズ|全長4,370×全幅1,785×全高1,440mm
ホイールベース|2,645 mm
トレッド 前/後|
(V40 T4) 1,550 / 1,540 mm
(V40 T4 SE) 1,545 / 1,535 mm
最低地上高|135 mm
最小回転半径|
(V40 T4) 5.2 メートル
(V40 T4 SE) 5.7メートル
トランク容量(VDA値)|335-1,032 リットル
重量|1,705 kg
エンジン|1,595cc 直列4気筒 直噴DOHC ターボ
最高出力| 132kW(180ps)/ 5,700 rpm
最大トルク|240Nm(24.5kgm)/ 1,600-5,000 rpm
トランスミッション|6段オートマチック(湿式デュアルクラッチ)
駆動方式|FF
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット / マルチリンク
タイヤ|
(V40 T4) 205/55R16
(V40 T4 SE) 225/45R17
燃費(JC08モード)|16.2 km/ℓ
価格|
(V40 T4) 269万円
(V40 T4 SE) 309万円