2代目 BMW 1シリーズに試乗!|BMW
BMW 1Series|ビー・エム・ダブリュー 1シリーズ
走らせて楽しい2代目1シリーズに試乗(1)
エントリーモデルといっても、「BMWらしさ」を備えた1シリーズ。2011年9月にフルモデルチェンジを受け第2世代となった。エンジンは1.6リッターに一本化。8段ATが搭載されて、パワーと燃費の両立をめざす、現代的な内容になったのが特筆すべき点だ。
Text by OGAWA FumioPhoto by ARAKAWA Masayuki
幅広い層に支持される小型ハッチバックの2代目
BMW 1シリーズは、ベストセラーであるフォルクスワーゲン ゴルフやアウディ A3のマーケットに切り込んだともいえるハッチバック。エンジン縦置きレイアウトと後輪駆動でスポーティな操縦感覚をアピールし、独自性を打ち出している。
ボディは実用性を重視した4ドアハッチバックで、運転を楽しみたい比較的若年層、あるいは、大きなクルマを必要としない都市型のドライバーに支持されている。ちなみに先代には派生車種として、クーペとカブリオレもラインナップしていたが、現行モデルへの追加は少し先になるようだ。
新型1シリーズの1.6リッターエンジンは、チューンのちがいで2種類用意される。今回乗った116iは、1.6リッター4気筒ターボで、最高出力は136ps(100kW)、最大トルクは220Nmとなる。これにたいしてチューンナップをくわえ170ps(125kW)のパワーをもつバージョンは120iと呼ばれる。
116iの標準価格308万円で、試乗車は「116iStyle」といい、内外装ともにカラーと素材でスタイリッシュな演出をほどこしたもの。こちらのベース価格は318万円だ。
BMW 1Series|ビー・エム・ダブリュー 1シリーズ
走らせて楽しい2代目1シリーズに試乗(2)
運転する楽しさを大切にするためのパッケージング
1シリーズは、一般論としては、後輪駆動車がもつ自然な操縦感覚を、軽量コンパクトな車体に組み合わせるという、望ましいパッケージを与えられたモデルだ。車両の大型化が進むなかで、かつての3シリーズなみの取りまわしのよさが、BMW好きから評価されている。スタイリングは、キャビンといって乗員が乗る空間を少し後ろにずらして、前後の重量バランスが50対50になるように配慮したことを喧伝するのがBMW流だ。
操縦すると、バルブトロニックに、可変バルブタイミングおよび可変バルブリフト機構であるダブルVANOSを備えたエンジンがよくまわるのが印象的だ。
容量を変えることで低回転域から高回転域までカバーするツインスクロールターボチャージャーも自然な効きでフラットなトルク感がある。街中から高速道路、そして楽しみのために走るワインディングロードまで、あらゆる状況下で、楽しさ、実用性ともに恩恵を感じることができる。
BMWは、かねてよりドライビングマシンと自社製品を位置づけており、多少パッケージが悪くなって居住空間が犠牲になっても、ドライバーが味わう「ファン」を大切にしてきた。
計器が並ぶダッシュボードをドライバーのほうに向けた「セントラルテーマ」をいちはやく採用したのもBMWだったし、4ドアといえ116iもその伝統に忠実であることがわかる。特等席はつねにドライバーズシート。運転するとその意味がわかると思う。
BMW 1Series|ビー・エム・ダブリュー 1シリーズ
走らせて楽しい2代目1シリーズに試乗(3)
パワー、トルク、燃費、それぞれが大幅に向上
変速機は8段オートマチックが新採用された。制御が緻密で、かつ、「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」との相性がよい。これは、シフトレバーわきのスイッチで、「スポーツ」「コンフォート」さらに、実燃費向上を目指した「ECO PROモード」の3つを選択可能にしているシステムだ。ボタンでエンジンのレスポンスやシフトタイミングが変わる。このクルマのBMWとしての「真価」を味わうには、とりわけ「スポーツ」がよく、回転でパワーをかせぐ小排気量のBMW車独特の感覚が、3,000rpmから上で堪能できる。
いっぽう、現代のクルマとして116iの実力を、より改善された環境性能におきたい場合には、ECO PROモードが用意されている。好燃費のためのアクセルワークを示唆したり、航続距離の変化といった情報を伝えてくれるシステムだ。
さらにシフトアップタイミングをはやめたり、エンジン・オート・スタート/ストップ機能や、ブレーキ・エネルギー回生システム、さらにオイルよりエネルギー消費量が少ない電動アシストをもったパワーステアリングシステムを採用。結果として「最高出力を11パーセント、そして最大トルクを38パーセントも向上させながら燃費を24パーセントも向上」させたとBMWではする。
BMW 1Series|ビー・エム・ダブリュー 1シリーズ
走らせて楽しい2代目1シリーズに試乗(4)
ツーリングカーレース用車と同様のパターンが採用されたギアシフト
Styleのもつアルミニウムの質感を活かしたキドニーグリルは斬新な印象で、すぐれたデザインを好むひとにはとりわけ魅力的に見えるはずだ。ATセレクターは靴べらのような独特のデザインで、慣れるとブラインドで扱いやすく、機能のためのデザインも忘れられていないことがわかる。
このクルマは、たしかにエンジンがよくまわり、足まわりの設定もよく、高速ではやや硬いと思わせるぶん、屈曲した道でカーブを次つぎにこなしていくときはしなやか。かつ、車体の姿勢保持にもすぐれ、楽しさを強く感じさせてくれる。
ギアをマニュアル操作すると、ギア比が近接している3速から5速のあいだをひんぱんに使うことで、コーナーからすばやく立ち上がっていくことができる。フロアシフトを前後に動かしてギアを選ぶ際、前に押すとシフトアップ、引くとダウン。これは多くの他社と反対だ。
ツーリングカーレースに出る車両ではBMWと同様のパターンが採用されており、こんなところにもスポーティ性を謳う同社の主張があらわれている。いずれにしても、シフトを前に押し、手前に引き、さまざまな大きさのカーブが組みあわされている道で最適なギアを選んで走るのは、かなりうれしいことだ。比較的小排気量のエンジンと、多段ギアボックスは、よい組み合わせだ。
唯一のネガはステアリング(?)
ひとつ不満をいえば、ステアリングだ。中立ふきんでも、ごく小さな動きに反応するのだが、しかし少し切り込んだときに車体の追従性がいまひとつよくないように感じられる。一発で舵角を決めてコーナーを抜けていくときはあまり気にならないが、直線路をふくめて、なんとなく落ち着かない。
すばらしいステアリングのクルマは、乗ってハンドルを動かしたとたん「いいなあ!」と感嘆するのだが、116iでは「あれ?」と思った。ブリヂストン トランザというタイヤのせいだろうか。スポーティな乗用車向けのポテンザに快適性を加味した、欧州向けのタイヤだ。ひょっとしたら、ほかのタイヤでは、このように感じることがないかもしれない。ちょっとしたことだが、このちょっとしたことが、官能的感覚を大切にする人間という生き物にとって重要な要素だ。もしショールームで試乗するときは、落ち着いて、ここを評価するといいだろう。
多様性がクルマを楽しくしてくれるという言説にしたがえば、コンパクトでも「走る楽しさを」という自社のポリシーに従って、後輪駆動車にこだわるBMWの姿勢は、あらためて評価したい。