LOUIS XIII Chapter 8 アンバサダー ダヴィッド・ブラン
LOUIS XIII|ルイ 13世
アンバサダーインタビュー5
ダヴィッド・ブラン
(グランド ハイアット 東京 料飲部 副総料理長 西洋料理担当 兼「フレンチ キッチン」料理長)
13人のアンバサダーが、ルイ13世という最高のブランデーの妥協を許さない酒づくりに共感、ルイ13世が持つ魅力を発信するプロジェクト。六本木グランド ハイアット 東京のバー「マデュロ」に期間限定オープンした「メゾン ルイ 13世」から毎回インタビューをおとどけする。第5回目は、おなじグランド ハイアット 東京にて、料飲部 副総料理長 西洋料理担当 兼「フレンチ キッチン」料理長をつとめるダヴィッド・ブランさん。
Text by MATSUO DaiPhotographs by IGARASHI Takahiro
ブランデーのある日常で育った
日本では、ワインを飲むことが多く、ブランデーを飲む機会はそんなにありません。けれど、フランスの実家に帰ったらブランデーは必ず飲みますね。わたしが生まれ育ったヴェンヌ県のポワティエという街は、フランス西部に位置し、ブランデーの産地として知られるコニャック地方からだとわずか80kmほどのところにあるんです。だから子供の頃から、家族で集まっての食事のあとには、祖父や祖母が必ずブランデーを飲んでいたことを記憶しています。たぶん、ポワティエの街では、どこの家族でも同じように味わっているんじゃないでしょうか。わたし自身もフランスにいるときは、コーヒーを飲み終わったカップに入れて飲んでいたし、シガーと一緒にブランデーを愉しむというのは日常的なことです。
でも、そんなブランデーを身近に感じているわたしたちフランス人にとっても、このルイ13世は誰もが知っている特別なお酒です。100年にもわたる長い年月を経てはじめて製品となる、気の遠くなるような年月を積み重ねたブランデーです。仕事という領域を超えた「パッション」を感じる酒造りがここにはあります。
30分以上もアロマが続く
実はわたし自身、このルイ13世を飲んだのは日本に来てから友人と一緒に飲んだのが初めてです。一般的にブランデーのイメージといえば、強いというものだと思うんですが、これは違いました。まずは、そのままの旨さを味わいたいと思ったのでストレートで飲みました。ブランデーですから、もちろん強いとは感じました。でも、決して喉が熱くなったりしない。とても飲みやすいんです。香りもすばらしい。香りのイメージは、最初から強いアルコールに共通する鼻を刺すものがない。樽由来のウッディな、フランス語でいうところのボワゼ、という印象でしょうか。そのあとで、フルーツコンフィのようなアロマがあります。何しろ100年も熟成しているお酒なのに、フルーティというのは驚きです。どうしてこんなに爽やかなんでしょうか。飲んだあとも、ずっといい香りが口の中に漂って、30分以上いい気持ちでいられます。料理とマリアージュするなら、ブランデーなのでデザートですね。たとえば焼いたフルーツあるいは、世界三大貴腐ワインとして知られるソーテルヌのゼリーあたりがいいのではないでしょうか。
フランスが誇る二つの文化
わたしは、このルイ13世にフランス人としての誇りを感じます。私の料理にも共通した哲学ですが、シンプルで素材を大切にしていますね。これほどの年月をかけなくてもおいしいブランデーを作る方法はあるのかもしれないですが、あえて何もくわえない。その妥協を許さない姿勢は、料理人としても大切なことだと思っています。こういう一流のお酒に出合うと感性が磨かれますね。フランス料理は、まさにフランスが誇る文化ですが、同様にこのルイ13世もフランスが誇る文化だと思います。
ダヴィッド・ブラン|Davide Bellin
1974年フランス西部 ヴェンヌ県・ポワティエの農家に生まれる。ポワティエという土地の広大な自然と新鮮な食材、母親のおいしい手料理に囲まれて育ち、ごく自然な流れで料理の道に進むことになったという。パリの「レストラン・アラン・デュカス」、モナコ「ルイ・キャーンズ」と2つの3ッ星レス トランで副料理長を務め、2004年銀座「ベージュ アラン・デュカス 東京」でオープンから総料理長に就任。 2010年より青山のビストロ「ブノワ」で料理長も務め、15年来グローバルにグループ・アラン・デュカスで重要なポストを歴任し、デュカス氏の教えでもあった食材を慈しむ心を大切にしている。2011年より、グランド ハイアット 東京 料飲部 副総料理長 西洋料理担当 兼「フレンチ キッチン」料理長に就任。旬の食材に向き合い、素材そのものの味をあまり手を加えずに引き出すシンプルな料理を志している。