美食大陸オーストラリア、美食とワインをめぐる旅へ|タスマニア州 ホバート|特集
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2015年10月21日

美食大陸オーストラリア、美食とワインをめぐる旅へ|タスマニア州 ホバート|特集

特集|美食大陸オーストラリア、美食とワインをめぐる旅へ

3. タスマニア州 ホバート

正真正銘、世界で一番クリーンな島

「美食大陸 オーストラリア」キャンペーンの一環で招かれた世界16カ国からの80名のインフルエンサーたちは、各自が興味のある取材先を個別にまわることになっていた。つまり、80もの異なるスケジュールの行程が組まれ、それぞれの取材先へのアポイントメント、トランスファー、アコモデーション、場合によっては通訳の手配などを完璧にセットアップするというイベントとしても非常に複雑でハードな内容だった。それをオーストラリア政府観光局、各州の観光局が共に協力しあい、私個人の取材でいえば、本当に完璧にすばらしい手配と内容だったことに大いに感心した。

今回のこのプロモーションでは80名のインフルエンサーが滞在中、およそ900のつぶやき、動画、インスタグラムなどをSNSとハッシュタグを使って発信。結果、29万の「いいね!」と6500にのぼるユーザーからのコメントを獲得。これにより、オーストラリア政府観光局はアジア地区の「PRアワード2015」でBest Use of Influencersの銀賞を受賞している。

いい意味でゆるやかでオープンなオージー気質は、ときにスケジュール通りにいかない状況を生み出すことがあるのは、シドニーで暮らしていた経験から想定していた。しかし、今回のイベントを通じて感じたのは、これほどのワールドワイドなプロモーションを完璧に仕切るパフォーマンスの高さをオーストラリアがもちはじめたこと。それは言い方を変えれば、ホスピタリティ力の高さをもっているということにほかならない。

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シドニーのカフェやレストランでは、スタッフもスマイル&ハッピー

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ヘイマン島ではグレートバリアリーフ最新のスーパーラグジュアリー・リゾートに滞在

実際、取材先で訪れたリゾートやホテル、さらにワイナリー、レストランでのサービスの質は細やかで、それでいてオージー本来のフレンドリーさは失わず、なんとも心地いい時間をともに過ごさせてもらった。もちろん招待されたジャーナリストという立場があってのもてなしということもあるかもしれない。しかし、分け隔てなく接するのがオーストラリアのフェア精神。特定の人間を特別扱いすることはオージーが一番好まないことであり、また苦手なことなのだ。

ということで、各自バラバラだった80名のインフルエンサーが一堂に集合するのが、このイベントのハイライト、「Invite the World to Dinner」。場所はオーストラリアの州で唯一、大陸から隔離された島であるタスマニア州。

その稀有な環境から優れた農産物、食材を生み出している。さらに州のおよそ3分の1は世界自然遺産も含め、肥沃な大自然に囲まれているという奇跡のような場所。その天然の美しさゆえ、「世界でもっともピュアな場所」と呼ばれ、実際それは科学的にも証明されている。正真正銘の世界で一番クリーンな島なのだ。

20代のころから数えると、私はタスマニアへ10回ほど訪問しているだろうか。州都ホバートは港周辺を中心に開拓時代の面影を残す街並みが美しい町だ。港には人気のシーフードレストランMuresや、かつてのジャムファクトリー跡を利用したデザイン系ホテル、The Henry Jones Art Hotelなどがたたずみ、その風景はいつ行っても変わらずおだやかで美しい。

毎週土曜には、農産物からホームメイドのスイーツ、アート&クラフトなど300ほどのさまざまな店が並ぶSalamanca Marketでも有名だ。なかにはタスマニアでしか採取されないレザーウッドハニーや、特産品のリンゴ、フレッシュピーナッツバターなどフレッシュで良質な食材のみを使ったドッグ用クッキーの専門店、The Dog House Bakeryといったユニークなショップもあり、愛犬へのお土産にいいだろう。

ホバート以外では、世界遺産に登録されたクレイドル・マウンテン、名前のとおりワイングラスのようなカーブが美しいワイングラスベイのある東海岸フレシネなど、大自然の見どころも感動的。タスマニアがすばらしいのは、そういった秘境とでも呼べる場所にも秀逸なリゾートがあるという点。クレイドル・マウンテンには、山岳ロッジスタイルの格式あるCradle Mountain Hotelが、そしてフレシネはインターナショナルに高く評価される“ウルトラモダン”ラグジュアリーなリゾートSaffireがある。

また、食の快楽を追求するエピキュリアンたちには、ぜひAgrarian Kitchenへ行ってほしい。シドニーの名店Tetsuya’sでシェフを務めた経験をもつ、ロドニー・ダンが手がける自家農場を拠点にするクッキングスクールだ。ベジタブルガーデン、ニワトリやアヒル、豚などを飼育する牧場をもち、収穫したばかりの野菜、フルーツ、卵などの食材を使い、手軽なものから本格的な調理までを学ぶことができる。

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ハイライトのディナーの前菜は海上のポンツーンで。豪快なロックロブスターのグリル

数年前、ここでダンに料理を習ったことがある。水道の水を流しっぱなしで掘り起こしたばかりのジャガイモの泥を落としていた私を見て、ダンはなにも言わずに優しく蛇口に手をかけて水量を調整した。すべて止めるのでなく、ほんの少しだけ水が流れる程度に。そこにダンの自然環境への配慮と、都会から来た私への心配りを感じたことをいまでも忘れられずにいる。

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期間中は州をあげて歓迎ムードを演出。路上に大胆にもこんな仕かけが

自然と寄り添い、その恵みを食べて生きる。タスマニアとはそういう場所なのだと思わずにはいられない。今回、「美食大陸 オーストラリア」のハイライトがタスマニアでおこなわれたことも、単純に美食を味わうだけでなく、食材を育む環境への感謝、優れた素材を作り上げる生産者へのリスペクトが背景にあるのかもしれない。

Mures(ミュアーズ)
http://mures.com.au

The Henry Jones Art Hotel(ヘンリー ジョーンズ アート ホテル)
http://www.thehenryjones.com

Salamanca Market(サラマンカ・マーケット)
http://www.salamanca.com.au/guide/

The Dog House Bakery(ドッグ・ハウス・ベーカリー)
http://www.doghousebakery.com.au

Cradle Mountain Hotel(クレイドル マウンテン ホテル)
http://www.cradlemountainhotel.com.au

Saffire(サファイア)
http://www.saffire-freycinet.com.au

Agrarian Kitchen(アグラリアン・キッチン)
http://www.theagrariankitchen.com

Tetsuya’s(テツヤズ)
http://tetsuyas.com

特集|美食大陸オーストラリア、美食とワインをめぐる旅へ

3. タスマニア州 ホバート

粋なオージースタイルの演出に思わずニヤリ

80名のインフルエンサーが集合するのは1日のみ。前日にホバート入りした私たちは、翌日の11時に「Restaurant Australia Marketplace」と名づけられたイベントに参加するため、ホバートの港に設けられた会場へと向かった。

広大な会場にはすでにブースが設けられ、そこにはオーストラリア全域から厳選されたワイン、チーズ、シーフード、コーヒー、肉類などあらゆる食材と生産者、ワインメーカーたちが待ち受け、世界中から訪れたインフルエンサーたちを出迎えた。80名のなかには、アリス・ウォーターズ氏、エリック・リペール氏、エイドリアン・アンソニー・ギル氏、サンジーブ・カプール氏、シャーソン・リアン氏、アンドレ・チャン氏など著名なシェフ、レストランオーナー、グルメ評論家、フードブロガーなどのほか、TV司会者、俳優など本物のセレブリティたちの姿も。

日本からはワイン好きで知られる俳優の辰巳琢郎氏、いま話題の「世界のベストレストラン50」の評議委員長であるコラムニスト中村孝則氏、グルメ誌『エル・ア・ターブル』の小脇弥香編集長、食やワインに精通するトラベル&ワインライター浮田泰幸氏、そして私の5名が参加した。

80名のインフルエンサーたちが、オーストラリア滞在中にSNSなどで発信する美食とワイン、観光情報は世界4億人にリーチするというからすごい。

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左から今回のディナーを手がけるニール・ペリー氏、シンガポールの名店「アンドレ」のアンドレ・チャン氏、コラムニスト中村孝則氏、そしてご存知、辰巳琢郎氏と贅沢な顔ぶれ

それぞれ顔を合わせるのもこの日がはじめて。なかには懇意にするシェフ、ジャーナリストたちも混じり、一気に会場は華やぎを増した。

ステージには、その夜のディナーの料理を手がけるオーストラリアを代表するシェフ、Rockpoolのニール・ペリー氏、Quayのピーター・ギルモア氏、Atticaのベン・シューリー氏が登場。レストラン・オーストラリアのコンセプトとそれまでの経緯、オーストラリアの美食、食材について熱く語った。カジュアルなスタイルで常にユーモアと笑いを絶やさず誰とでも気軽に会話をはじめ、記念撮影に応じるカリスマシェフたちの姿は大らかに人生を楽しむことに長けたオーストラリア人そのもの。彼らを取り巻く参加者たちからは、尊敬と憧れの眼差しが向けられていた。

この日、提供されたのは各州の食材を使ったフィンガーフード、そしてプレミアムワインの数々。たとえば、ニューサウスウェールズ州からはマンダジェリー・クリーク産のシカ肉に季節のフルーツとチーズ。ノーザンテリトリーからはバラマンディに豪州原産のワトルシードを添えたもので、これは辰巳琢郎氏が絶賛。

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プロモーションの説明と今晩のディナーの紹介のため、3人のシェフが登壇。MCも興奮気味

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マーケットプレイス内では、豪州産の食材を使ったフィンガーフードをテイスティング

クイーンズランド州からは甲殻類の一種モートンベイバグ、南オーストラリア州はエイジングしたサーロインカルパッチョ、地元タスマニア州からはブルーニー島産のチーズとタスマニアが誇るプレミアムスパークリングワインとのマリアージュ。ビクトリア州からはライジングスターシェフとの評判が名高いスコット・ピケットによるとろけるデザートが。

ACT(オーストラリア首都特別地域)はワイルドにカンガルーのプロシュートとスモークしたチキンの胸肉のペアリング。西オーストラリア州はオーストラリア大陸の1/3を占める広大な州だけに、州南西部エリアから厳選した食材に西オーストラリア州が誇る極上のプレミアムワインをあわせてきた。

そのワインのセレクションも瞠目(どうもく)するものばかり。以下にリストアップするが、2005年のグランジも含め錚々たるワインが並び、フィンガーフードとあわせて自由にテイスティングできるという贅沢さ。さすがのインフルエンサーも色めき立っていた。

Jacob’s Creek 2005, Steingarten Riesling, Barossa, SA
Audrey Wilkinson 2011, ‘The Ridge’ Semillon, Hunter Valley, NSW
Fowles Wine 2013, Ladies Who Shoot their Lunch Riesling,
Strathbogie Ranges, VIC
Moorilla Estate 2012, Cloth Label White, Tasmania, TAS
Leeuwin Estate 2010, Art Series Chardonnay, Margaret River, WA
Montalto 2013, Pinot Noir, Mornington Peninsula, VIC
The Lane 2010, Reunion Shiraz, Adelaide Hills, VIC
Penfolds 2005, Grange, Barossa Valley, SA
d’Arenberg 2005, The Ironstone Pressings GSM, McLaren Vale, SA
Voyager Estate 2009, Cabernet Sauvignon Merlot,Margaret River, WA
De Bortoli 2010, Noble One Botrytis Semillon, Yarra Valley, VIC
Seppeltsfield 1985, Para Liquer Tawny, Barossa, SA
Josef Chromy 2008, Vintage Sparkling, Tasmania, TAS

そして夕方、いよいよInvite The World to Dinnerがはじまった。とはいえ、「一生に一度の忘れられないディナー」と謳うからには、主催者もさまざまな趣向を用意。すぐに食事がはじまるわけにはいかない。

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うなりをあげてディナー会場へと向かう

80名のゲストたちがまず向かったのはレッドカーペットが敷かれた港のジェッティ。なんとそこには『007』にでも登場するようなスピードボートが。華やかなドレスを身にまとったゲストたちが続々とボートへ。定員に達すると同時にうなりを上げて海へと飛び出していく。これにはゲストたちも子どものように大はしゃぎ。ドラマチックなディナーのスタートになった。

途中、スピードボートが立ち寄った海上に浮かぶオープンエアのポンツーンには焚き火がたかれ、アボリジニによるディジュリドゥの演奏のなか、タスマニアが誇るスパークリングワイン「House of Arras 2004 vintage Blanc de Blanc」によるウェルカムドリンクが供された。実はディナーはすでにここからはじまっていた。

Earth(大地)、Fire(火)、Water(水)という、オーストラリアの食材を育む要素をコンセプトにしたベン・シューリー氏、ピーター・ギルモア氏、ニール・ペリー氏、各シェフによるプロローグは、実にワイルドかつセンセーショナルだった。

まずは泡にもっともふさわしいフレッシュオイスター。タスマニア州ブルーニー島で手捕りされた天然のアンガシオイスター(ヒラガキ)、おなじくタスマニア州のフレシネ・マリン・ファームのパシフィックオイスター(マガキ)、さらに西オーストラリア州アルバニーのシドニー・ロックオイスター。瑞々しくミルキーなオイスターと、ベストオブベストと評価されたビンテージのスパークリング。これでゲストの心はわしづかみだ。

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天然のヒラガキは自然が残るブルーニ―島産

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華やかなブラン・ド・ブランで乾杯

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招待客のなかにはシェフたちも多く、彼らも手伝う姿が

つづいて焚き火の周囲で調理がはじまった。まずはベン・シューリー氏によるキスの包み焼き。あわせるのはグリルされたベビーコーン。仕上げはフォレストアニスで香りづけ。ピーター・ギルモア氏は西オーストラリア州産マロン(甲殻類)のチャコールとローストしたワラビーテイルのブロス。ニール・ペリー氏はタスマニア産アワビのチャコールグリルをアワビのキモ、酒、みりんで味付け。さらにウッドローストしたタスマニア産ロブスターは昆布バターで味つけと、日本料理のテクニックを披露。これらには以下のワインが供された。

Dal Zotto l’immigrante 2013 Prosecco, King Valley, VIC
Stefano Lubiana 2005 Vintage Brut, TAS
Ashton Hills 2010 Salmon Brut, Adelaide Hills, SA
Grosset Polish Hill 2014 Riesling, Clare Valley, SA
Tyrrell’s Vat 1 2005 Semillon, Hunter Valley, NSW
Cullen Kevin John 2012 Chardonnay, Margaret River, WA

極上のワインにフィンガーフードと呼ぶには贅沢すぎる料理の数々。でも、グラスを片手に立ったまま誰かれとなく会話をし、時間を共有する楽しみはオーストラリアのライフスタイルそのもの。週末にビーチや自宅の裏庭でBBQをしてビールを飲むのと一緒のこと。いつものようなオージースタイルの演出に思わずニヤリとしてしまうのだった。

Rockpool(ロックプール)
http://www.rockpool.com

Quay(キー)
http://www.quay.com.au

Attica(アッティカ)
http://www.attica.com.au

特集|美食大陸オーストラリア、美食とワインをめぐる旅へ

3. タスマニア州 ホバート

一生に一度の夢のディナーが幕を開ける

贅沢すぎるアペタイザーによるイベント開幕後、再びゲストの私たちはボートに乗り込み、いよいよディナーの会場となるアートミュージアムMONAに到着した。ここはタスマニア出身のデビッド・ウォルシュ氏のコレクションを所蔵・展示。私が知る限り、個人所有のミュージアムとしては世界屈指の規模だ。

MONAとはMuseum of Old and New Artの頭文字をとっているが、まさしくその名前のとおり。

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岩盤を掘削して地下を作っているMONAを貸切りに

ここには古代エジプトのミイラから現代アートの旗手ダミアン・ハーストの作品まで過去と未来を行き来するユニークかつ貴重な美術品が並べられている。そのスーパーユニークなミュージアムを舞台に、一夜限りのワールドディナーが繰り広げられるのだから興奮する。夕暮れになり、ボートがミュージアムに到着するとゲストたちもにわかにテンションが上がっていった。

「ワオ!」

ディナー会場に入った瞬間、ゲストそれぞれが感嘆の声をあげた。オーストラリアを代表するアーティストのひとりシドニー・ノーランの大作「Snake」を背景にズラリと並べられたロングテーブルとシート、そしてカトラリーとワイングラスの量は圧巻だった。そこへ続々となだれ込むゲストたち。80名のインフルエンサーのほかに関係者たちおよそ200名が今宵、一生に一度の夢のディナーを味わう恩恵を受ける。

日本人チームも所定の席へ案内された。私の右隣は辰巳琢郎氏。左隣はいま、シドニーでもっとも話題を集めるレストランSepiaのマダムであるヴィッキー、向かいにはシェフのマーティン。Tetsuya’sにいた彼らを日本人チームの横にアサインするなど、全テーブルの席は主催者によりみごとに振り分けられていた。

ここからの料理のコンセプトは“Art & Produce”。まずはベン・シューリー氏による塩漬けした南オーストラリア産レッドカンガルー。あわせるのはブーニャブーニャと呼ばれる豪州原産の果実。オーストラリアではカンガルーは食用であり、赤身の肉はヘルシーだと注目されている。それまで食べたカンガルーはやや硬いものばかりだったがこの夜のベンの料理は柔らかくジューシー。ワインは「Castagna Allegro 2013 Rose, Beechworth, VIC」を食前酒に、「Bobar 2014 Syrah, Yarra Valley, VIC」とビクトリア州ものが登場。

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ロックプールのニール・ペリー氏とキーのピーター・ギルモア氏。ともにシドニーを代表するレストランを支えるカリスマ

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ピーター・ギルモア氏の「豚アゴ肉のスモーク&コンフィ」は感動のひと皿

次に登場したのはピーター・ギルモア氏。スモーク&コンフィされた豚アゴ肉、黒アワビ、シイタケ、海藻類を麹、発酵させた麦、つまり味噌で味つけしたフュージョンスタイル。かなり異色な一品かと思いつつ口に運ぶと、これが驚くほど滋味にあふれ素材のバランスも申し分なし。さすがピーター・ギルモアとうならされる見事さ。こちらには「Lake’s Folly 2011 Chardonnay, Hunter Valley, NSW」と「Moorilla Muse 2010 Pinot Noir, TAS」の白と赤をマッチング。ちなみにムーリラはMONAのオーナー、デビッド・ウォルシュ氏が所有するワイナリーでもある。

それにしても壮観だ。200名を超えるゲストたちとそれをサーブするスタッフたちの会話やカトラリー、グラス類の奏でる音がミュージアムの空間を満たし、えも言われぬ高揚感をかき立てる。しかも料理を同時にテーブルに出すタイミング、あわせてワインを注ぐ手早さ。オーストラリアのフードカルチャーと、ホスピタリティビジネスの成熟をしみじみと感じる。

そしてゲストはその余韻のなかで最高の時間を味わっている。私も辰巳氏やSepiaのマーティやヴィッキーたちと料理について、ワインについて興味のままに話しを交わした。「日本ではどうなの?」「オーストラリアはいま、こんな感じだよ」。共通の話題、知らなかった最新情報などを楽しむ。それにしても辰巳氏のワインへの情熱と知識には脱帽。ワインを注ぐスタッフに質問を投げかけ、エチケットの写真を撮るなど楽しんでいる様子が印象的だった。

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メニュー代わりに渡されたのはグラフィカルなブックレット。これもまた秀逸

ニール・ペリー氏の料理はオーソドックスにサーロインのグリル。しかし、肉質がすごい。血統書&DNA確認済み、正真正銘の日本の和牛から生まれたデビット・ブラックモア氏生産、フルブラッドのワギュウビーフ。穀物と世界で一番空気と水が清浄なタスマニア島北端ケープ・グリムの牧草で300日飼育したものだという。それに煮込んだほほ肉、オックステール、紅茶でスモークしたオイスターとレッドカレーをのせているところにニール・ペリーらしい斬新さを感じる。

あわせたワインは「Woodlands 2012 Cabernet Franc, Merlot, Malbec, Margaret River, WA」と「Henschke Mount Edelstone 2012 Shiraz, Eden Valley, SA.」。

食事とゲストの酔いが最高潮に達したころ、シェフたちが割れるような拍手のなか登場。今回のイベントへの感謝のほか、3人ともオーストラリアという稀有な環境で生まれた食材と生産者への敬意を真摯に語る姿に、レストラン・オーストラリアのすべてが込められていると言える。ここにスペシャルゲストとして世界ベストワンを獲得した英国The Fat Duckのシェフ、ヘストン・ブルーメンタール氏が登場。彼は今年、The Fat Duckを改装のため一時閉店、その間メルボルンのカジノホテル「クラウン」内へ移転することで話題になっているところ。さらにあたらしいオーストラリアのガストロノミーを牽引することだろう。

ディナーコースが終了しデザート、というところでアナウンス。「デザートのサービスは別の場所でおこないますのでみなさんそちらへ」という。ダンサーによるパフォーマンスもはじまり、イベントはフィナーレへと向かう。

バーが設けられた空間には、ベン・シューリー氏自らコーンにスクープを盛るアイスクリームパーラーも登場。さらにデザートワインに最近、徐々に増えているオーストラリア産のスコッチ、ジン、ウォッカなどのスピリッツやクラフトビールなども勢揃い。ここまでくるとさすがにお腹もいっぱいで酔いもまわり、記憶もおぼつかなくなってきた。「この後は明日の飛行機に乗り遅れない限り、好きなだけ楽しんでください」。観光局の誰かが耳元でささやいた。

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エンターテインメントもはじまりディナーは佳境へ

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アイスクリームを盛るのにも真剣な表情のベン。彼らしい真面目さが微笑ましい

さあ、あとどれくらいエナジーが残っているか。周辺はゲスト、シェフ入り混じっての大盛況で最高に盛り上がっている。人前に出てこないと言われるMONAのオーナー、デビッドもいる。確かにこんな夜はもうないだろう。まぎれもなくこの夜は一生に一度の「世界で最高」の瞬間だった。オーストラリアの食探訪の旅はまもなく終わるけれど、Invite the World to Dinnerはいつまでも終わりを見せないほどに深く、長くつづいていった。

MONA(モナ)
http://www.mona.net.au

Sepia(セピア)
http://www.sepiarestaurant.com.au

The Fat Duck(ファット・ダック)
http://www.thefatduck.co.uk

           
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