進化した新型7シリーズに迫る 前篇|BMW
BMW 7 Series|BMW 7シリーズ
最先端技術のショーケース
進化した新型7シリーズに迫る 前篇
現地時間6月10日に開催されたワールドプレミア直後、BMWのフラッグシップサルーン「7シリーズ」のフルモデルチェンジにかんする第一報をお届けしたが、ここでは6年ぶりにおこなわれたフルモデルチェンジによって、モデル型式F01/F02からG11/G12へと進化した新型「7シリーズ」のすべてをより詳細にお届けする。1977年に初代モデルが登場していらい、40年近くBMWのフラッグシップモデルとして君臨してきた7シリーズに、BMWは果たしてどんな最先端テクノロジーを与えたのか。
Text by SAKURAI Kenichi
型式がFからGに進化
今回のフルモデルチェンジでは、モデル型式がF01/F02からG11/G12へと進化した点が、まずは見逃せないポイントだ。これまでBMWは長くEから始まるモデル型式を使用し、初代「7シリーズ」ではE23、2代目はE32、3代目はE38、そして2001年に日本でも発売を開始した4世代目はE65(ロングホイールベースはE66)と呼ばれてきた。5代目にあたる現行モデルはアルファベットをEからFにひとつ進め、F01(ロングホイールベースはF02)を名のり、2009年にデビューしている。
たいしてこの6月にデビューした新型7シリーズは、さらにアルファベットをひとつ進めたG11(ロングホイールベースはG12)の型式を得ている。公式に理由は発表されていないものの、このアルファベットの進化もまた、最新の安全技術や軽量化技術、そして低燃費性能をあわせもったもっとも先進多岐なフラッグシップモデルの誕生を意味すると考えるのは自然なことだろう。これをあたらしい世代の到来、フラッグシップモデルの再定義といわずしてなんといえばいいのか。
注目のボディサイズはすでにその第一報で紹介しているとおり、全長5,098×全幅1,902×全高1,478mm。ロングホイールベースバージョンは、このノーマルホイールベースモデルよりもさらに140mmが伸ばされ、全長は5,238mm、全高は1,479mmとなっている。全幅は両モデルとも同一数値である。ホイールベースは3,070mmとロングホイールベースが3,210mmになる。
このサイズ、じつは旧型モデルとほとんど変わらず、欧州値比で全長は19mm(ロングホイールベースモデルも同一の19mm)だけ拡大されたにすぎない。全幅は新旧ともに同一で、全高は新型が4mm(ロングホイールベース版は2mm)低くなっただけ。3,070mmと3,210mmのホイールベースは新旧共通値になっている。いたずらにボディを拡大しなかったのは、車重の増加を抑えるためと、現状サイズでもじゅうぶんな居住空間を確保できているからにほかならない。
クルマが大きくなっても、都市の道幅はそう簡単には広くなはならない。こうした事情はライバルとなるメルセデス・ベンツ「Sクラス」もおなじで、結果として全長5,116(ロングホイールベースモデルは5,246)×全幅1,899×全高1,496mmというSクラスと、新型7シリーズはほぼおなじサイズを得ることになった。ショーファードリブンのクルマならいざ知らず、オーナードリブンの実質的な頂点に位置するライバル同士は、このサイズがオーナーカーの最大数値と考えているのかもしれない。
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正常進化のエクステリアデザイン
エクステリアデザインは、誰もがすぐにBMWブランドだと理解し、さらにフラッグシップモデルであると判断できる強い印象をもたらす意匠を採用。すなわちフロントマスク中央には、いささかシャープになったとはいえその歴史を綿々と伝える、大型のキドニーグリルが鎮座している。
ヘッドライトは「3シリーズ」や「4シリーズ」、「X3」や「X5」「X6」などで採用された、LEDのポジションランプがキドニーグリルから左右の丸目4灯部分にまでつづく、あたらしい切れ長のデザインを7シリーズでも踏襲。新世代の顔を印象づけている。
このヘッドライトは、標準でフルLEDを装備、オプションとしてBMWセレクティブ機能をそなえたBMWレーザーライトも選択可能になっている。「i8」ですでにお馴染みのこのBMWレーザーライトは、カーブの角度への対応や対向車への自動防眩機能を備え、フルLEDライトの約2倍となる600メートルの照射距離をもつ最新鋭のヘッドライトシステム。消灯後にブルーのイルミネーションが残り、遅れて消えるのもユニークな特徴だ。
いっぽうリアセクションは、トランクリッドの中央に、シルバー加飾のモールが水平に入るデザインが特徴的で、これは先々代にあたるE65型から踏襲された意匠といえ、厚みのあるボディを低くワイドに見せる効果をもたらしてくれる。ヘッドライトやテールライトはすべてLED式を採用しているのも特徴のひとつで、リアコンビネーションライト全体では、表面のレンズが赤一色に統一。唯一角度によってホワイトに見えるレンズをもつバックライトが、L字型をモチーフとしたデザインの上部から下部へと移動している。
サイドウィンドウを一周するシルバーのモールや、そのモールが強調するBMW車にはお馴染みのアイコンといえるリアウィンドウ後端に用意された「ホフマイスター キンク」(当時のエクステリアデザイン責任者であったヴィルヘルム・ホフマイスターに由来。“キンク”はねじれた、の意)のデザインも健在だ。
フロントのオーバーハングが極端に短い、フロントミドシップのエンジン搭載位置やそこから後輪駆動のシルエットをイメージさせる新型7シリーズのボディデザインには、もはや安定感すら覚える。奇をてらうことなく各部を洗練させ、正常進化したと紹介することができるのが、このエクステリアデザインである。
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軽量化にはi8やi3の技術が生かされている
そうしたボディには、じつはi8、i3といったモデルを擁するBMWのサブブランド「iシリーズ」のテクノロジーがフィードバックされている。新型7シリーズではアルミやスチールにくわえて、iシリーズ由来のカーボンファイバーを多用することで大幅な軽量化を図った。こうしたことなる種類の素材を効果的に各パートで使用し、ボディを構成する技術をBMWでは「エフィシェント ライトウェイト テクノロジー」と呼び、7シリーズはその技術を使用したはじめての市販車になっている。
たとえば、Bピラーは超高張力鋼板とカーボンファイバーのハイブリッド構成で、ドアやトランクリッドにもアルミを使用している。ブレーキやホイールも合わせて約15パーセントの軽量化に成功し、バネ下重量の軽減に貢献。結果として先代とくらべ、最大で130kgものダイエットを達成した。
参考までにもっとも軽い「740i」では車重が2トンを大きく切る1,725kg(日本仕様の先代モデルは1,950kg)となっている。もちろん、BMWのこだわりである、静止重量配分の50:50はこの新型モデルでも受け継がれている。
その軽量化を受けたサスペンションは、フロントがダブルトラック コントロールアーム、リアには5リンク式を採用。これまでとはことなる(従来はフロントがダブルウィッシュボーン、リアがインテグラルアーム式)サスペンションになっている。さらに20mmの可変範囲をもつセルフレベリング式のダイナミックダンパーを備えたエアサスペンションを標準装備したほか、コーナリング時のロールを抑制する電子制御式アンチロールバーをもつエクスクルーシブ ドライブ プロがはじめて設定された。
さらにこの新型のサスペンションは、ステレオカメラとも連動。路面状況をステレオカメラが確認し、前方に段差や路面のアンジュレーションを感知すると、即座にダイナミックダンパーがサスペンションの堅さを調整し、フラットで快適な乗り心地を終始キープするようにプログラミングされている。新型7シリーズのサスペンションは、BMWに期待されるスポーティなハンドリングとコンフォートライドを両立させると、説明している。