進化した新型7シリーズに迫る 後篇|BMW
BMW 7 Series|BMW 7シリーズ
まるで最先端技術のショーケース
進化した新型7シリーズに迫る 後篇
フルモデルチェンジをはたしたBMWのフラッグシップ「7シリーズ」。前篇ではデザインやボディデザインに着目したが、後篇ではパワートレーンと注目のハイテク装備にフォーカス。40年近くBMWのフラッグシップモデルとして君臨してきた7シリーズに、BMWは果たしてどんな最先端テクノロジーを与えたのか。
Text by SAKURAI Kenichi
4気筒+モーターのプラグインハイブリッドを設定
注目のエンジンはリファインされたV型8気筒ツインターボと新世代の直列6気筒ターボを搭載。他メーカーは効率とサイズを理由にダウンサイジング化するなかでも、BMWはブランドアイデンティティともいえる直列6気筒にまだまだこだわりをもっていることがわかる。
7シリーズのエントリーグレートたる「740i」「740iL」では、最高出力240kW(326ps)/5500-6500rpm、最大トルク450Nm(45.8kgm)/1,380-5,000rpmを発生する3リッター直列6気筒ツインパワーターボエンジンを、先代モデルで日本には未導入だった4輪駆動の「750i xDrive」「750iL xDrive」には、最高出力330kW(450ps)/5,500-6,000rpm、最大トルク650Nm(66.2kgm)/1,800-4,500rpmを発揮する4.4リッターV8ツインパワーターボエンジンを搭載。組み合わされるトランスミッションは従来とおなじく8段ステップトロニック。
こちらはギアレシオの変更と、ナビゲーションデータと連携したシフトプログラムにより燃費向上に貢献しているという。
今後追加されるかもしれないが、ローンチ当初は、この2種類のガソリンエンジンと「730d」「730Ld」「730d xDrive」「730Ld xDrive」に搭載される最高出力195kW(265ps)/4000rpm、最大トルク620Nm(63.2kgm)/2000-2500rpmを発生する3リッター直列6気筒ツインパワーターボ ディーゼルエンジンを合わせた計3種類の従来型エンジンをラインナップ。ディーゼルエンジンもガソリンエンジンと同様に、8段ステップトロニックを組み合わせた。
ラインナップをこのエンジンで整理すると、標準ホイールベースが740i、750i xDrive、730d、730d xDriveの4モデル、ロングホイールベースが740iL、750iL xDrive、730Ld、730Ld xDriveの4モデルという構成になる。
さらに注目は、従来のハイブリッドモデル「アクティブハイブリッド7」にかわって登場するプラグインハイブリッドモデル「740e」「740Le xDrive」の設定である。
このプラグインハイブリッドモデルは、最高出力190kW(258ps)、最大トルク400Nm(40.7kgm)を発揮する2リッター直列4気筒ツインパワーターボエンジンに、最高出力70kW(95ps)、最大トルク250Nm(25.4kgm)のモーターをくわえ、システム最高出力240kW(326ps)を発揮。0-100km/h加速は740eが5.7秒、740Le xDriveが5.5秒となり、これは直列6気筒ターボエンジン搭載の740iがマークする5.5秒、740iLの5.6秒とほぼ同等のパフォーマンスである。
モーターのみでも最高120km/hまで加速可能で、外部電源によるフル充電時の最長航続距離は40kmに達する。これは、日常の短距離市街地であれば、ほぼゼロエミッションで走ることが可能になる数値である。2リッターの直列4気筒エンジンながら、3リッターの直列6気筒ターボエンジンを搭載車と同等なパフォーマンスをもち、燃費は2.1ℓ/100km(リッターあたりおよそ47.6km)、二酸化炭素排出量は49g/kmという高い環境適合性も魅力である。ちなみにこの740e、740Le xDriveは、ガソリンとディーゼルエンジン搭載車よりも若干遅れて市場投入される予定だ。
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BMWのフラッグシップにふさわしい内装
インテリアに目を移すと、そこには見慣れたBMW然としたインパネが広がる。こちらもエクステリア同様に奇をてらったデザインではなく、これまでの7シリーズで採用したデザインの進化版といった印象で、ドライバーの方向を向くセンターコンソールなどがいかにもBMW流だ。本物の革とウッドを使用した質感の高さもまた、フラッグシップにふさわしいクオリティと紹介できるだろう。
注目は、いっそう豪華になったロングホイールベース版のリアシートだ。エクスクルーシブ ラウンジパッケージと呼ばれる快適性とラグジュアリーさを追求したショーファードリブン向けオプションパッケージでは、全席アクティブ シートベンチレーションのほか助手席を前方に90mmスライドさせることができ、リアシート向けに4ゾーン オートエアコン、後席マッサージ機能付電動調整コンフォートシート、エグゼクティブ リア コンソール、リアシート エンターテインメント エクスペリエンスなどが用意されている。
エクスクルーシブ ラウンジパッケージのリアシートは、助手席後方にオットマンを備え、ほぼフラットに近い角度までシートを倒せるほか、マッサージ機能にはバイタリティ プログラムと呼ばれるリフレッシュ用のエクササイズ機能も用意されている。また、センターアームレストには、折りたたみ式のテーブルのほか、取り外し可能な7インチのタブレットコンピューターが備わり、このデバイスを用いて後席のゲストがシートポジションやエアコン、オーディオなどを操作可能となっている。
さらに快適性を向上させる装備として、暗くなるとLEDモジュールを用い、星空をモチーフとしたさまざまなカラーリングのイルミネーションに変化させるスカイラウンジ パノラマ ガラスルーフや、インテリアのアンビエントライト、空気をイオン化し8つのアロマの香りを楽しめるディフューザーをセットにしたアンビエント エア パッケージ、新型7シリーズのインテリアに合わせて調整されたバウアー&ウィルキンソン社のダイヤモンド サラウンド サウンドシステムなども用意されている。
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カスタマーの期待と想像を超えるために
BMWが先鞭を付け独自に進化させてきたインフォテイメントシステムiDriveは、従来からのiDriveコントローラーにくわえ、ディスプレイへのタッチにも対応しタブレットコンピューター風に操作することが可能となったほか、クルマへの搭載は世界初となる3Dモーションセンサーを使用したジェスチャーコントロール機能も採用した。
これによって直接画面やiDriveコントローラーに触れなくても、オーディオのボリューム調節やエアコン、電話の操作などがおこなえ、さらに特定のジェスチャーを任意の操作に結び付けるカスタマイズも自由に設定できる。センターコンソール内部にはスマートフォンホルダーが備わり、ここにスマートフォンをセットするだけでワイヤレス充電もおこなえる。
世界初採用装備のなかでももっともユニークなのは、自動駐車システムだろう。これは、液晶ディスプレイを備えたキーを使って外部から車両を動かせる機能だ。ドライバー(でなくとも誰でも)は、このキーをコントローラーとして使用し、誰も乗っていない車両の前進および後退、ステアリング操作をおこない、リモートコントロールでの駐車が可能になっている。
いわばこれは、駐車時における自動運転機能であり、アクセル開度やブレーキなどは7シリーズがすべて自動で判断し、完璧な駐車をやってのけるのだ。実際の動きや、コントロールにどれほどの制限があるのかなど安全性はやはり実際に自らの目で確かめたいところだが、例えば左右にドアを開ける余裕のない狭いガレージや、自宅ガレージの前で人や荷物を下ろした後、キーコントロールで所定位置に駐車がおこなえるのはじつに、未来的である。
エイドリアン・ヴァン・ホーイドンク副社長兼BMWグループのチーフデザイナーは、新型7シリーズの登場にあたり「新型7シリーズの開発における主な目的は、モダンで豪華なフラッグシップモデルのあらたなる指針を、ラグジュアリーカーのカスタマーに提示することでした。彼らの期待と想像を超えることを重要視したのはいうまでもありません。BMWは、現在考え得るもっとも高度で最先端の技術をもちい、モダンでラグジュアリーなデザインをもつ新型7シリーズを生み出しました。細部にも徹底的にこだわり抜き、クオリティを極めています。BMW 7シリーズの最新モデルは、世界でもっとも快適で、もっとも豪華なこのセグメントでトップとなるにふさわしい1台です」と抱負を語っている。
洗練されたデザインや装備、進化したプラグインハイブリッドモデル、そして未来感あふれる自動駐車システムなど、最新にして最高のテクノロジーに彩られた新型「7シリーズ」への期待は、BMWファンならずとも高まるはずだ。さらにブランドごとの棲みわけが顕著だったラグジュアリーモデル市場も、新型7シリーズの登場によってよりいっそう活発化しそうな予感がする。久しぶりに日本上陸の追加情報が待ち遠しいモデルが登場したといえそうだ。