ジュネーブモーターショーの現場から:アウディ篇|Audi
Audi|アウディ
Geneva International Motor Show 2015
ジュネーブモーターショーの現場から:アウディ篇
フルモデルチェンジとなった新型「R8」を中心に、「R8 e-tron」「Q7 e-tron クワトロ」、そして「プロローグ アヴァント」と、今後の展開を期待させる内容で幕を開けたアウディのジュネーブモーターショー。現地取材をおこなった大谷達也氏が、ショー会場からレポートする。
Text by OTANI Tatsuya
新型R8で幕を開けたアウディ
アウディのメインステージを飾ったのは3台の新型「R8」だった。2007年のデビューから8年が経過してようやく2世代目に生まれ変わったR8は、ボディやパワートレーンなどをおなじグループのランボルギーニ「ウラカン」と共用しているものの、いかにもアウディらしいスタイリングや幅広いモデル展開でランボルギーニとの差別化を図っている。
まず印象に残るのがそのエッジの利いたエクステリアデザインだ。ウラカンにもシャープな部分はもちろんあるが、どちらかといえばまろやかな曲線が多用されている。それに比べるとあたらしいR8はフロントセクションを軸に鋭利な直線で囲まれた四角形が中心。これだけのことでずいぶんと印象が異なる。
ウラカンがボディの前端からリアエンドまでを一本の曲線で描ききったワンフォルムを採用しているのに対し、R8は水平基調のショルダーラインの上に居住空間となるグリーンハウスを乗せるという伝統的な手法を採っていることも両者のちがい。
そのうえで、R8はルーフラインをリアエンドに向けて一直線に下降させるとともに、ボディサイドに彫り込んだエアインテーク部を後ろにいくに従って天地方向のスパンが狭まる形状とすることで、車両のはるか後方に消失点(立体感を表現するため、いくつかの線を最終的に一点に収束させる手法)を設け、前方に向かって力強く疾走するイメージを打ち出している。
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プロダクションカーとしてのR8 e-tron
エンジンはR8、ウラカンともに直噴とポート噴射を組み合わせたデュアルインジェクション式。最高出力はR8のハイパワーバージョンであるR8 V10 Plusとウラカンはともに610psで共通となるものの、R8にはこれとは別にスタンダード仕様として540ps版も用意される。
いっぽう、どちらも4WDとなる駆動系の共通点は多く、前後車軸にトルクを配分する機構には電制御式油圧多板クラッチを用い、ギアボックスは7段デュアルクラッチ式とされている。
モデルラインナップでいえば、いずれもGT3仕様のレース専用車が用意されるのは共通ながら、R8にはEVの「R8 e-tron」が設定される点が最大のちがいかもしれない。340kw(約462ps)のモーターと容量92 kWhのバッテリーを搭載することで、450kmの航続距離と0-100km/h加速を3.9秒でこなすR8 e-tronは、おなじ名称を用いてきたこれまでのモデルがプロトタイプだったのに対し、一般に販売されるプロダクションカーとなる点が注目される。
OPENERSでは既報のとおり、以前のR8 e-tronはデュラハイマーが技術のトップを務めていた時代に「航続距離が不足している」ことを理由に商品化計画がキャンセルされた経緯がある。しかし、現任のハッケンベルクは「バッテリーの進化とバッテリー搭載方法を工夫」することで航続距離をおよそ2倍へと拡大。これによって十分な実用性を確保できたため、商品化に踏み切れたと語った。
なお、駆動方式がRWDとなるのは前作とおなじながら、ボディの基本的な構造はガソリンエンジンモデルと共通としている点は前作と大きく異なる。
GT3仕様のR8 LMSは2016年の実戦デビューに向けて現在、開発が進められている最中である。
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次なるアウディ デザインの挑戦
R8以外では、先ごろヨーロッパで発表した2代目Q7のディーゼル プラグイン ハイブリッド版「Q7 e-tron クワトロ」と「RS 3」が世界初公開となった。Q7 e-tron クワトロは、258psを発揮するV6 3.0ℓのターボディーゼルエンジン、最高出力94kw(約128ps)のモーター、容量17.3kWhのバッテリーを組み合わせたもので、システム出力は373ps、最大トルクは700Nmを生み出すモンスター。
それでいながらCO2排出量は50g/km以下、100kmの走行に必要な燃料は1.7リッターという驚異的な環境性能と省燃費性能を実現している。EV時の航続距離が56kmというのもプラグインハイブリッドモデルとしては長い。こちらもコンセプトカーではなく、2016年の春にはドイツでの販売がはじまるようだ。
RS 3は「A3 スポーツバック」のボディに367psの直列5気筒 2.5リッターガソリンターボエンジンを押し込んだスポーツモデル。成り立ちとしてはRS Q3に近いが、あちらは310psが最高出力なので、パフォーマンスにはかなりの差がありそうだ。最高出力285psの直列4気筒2.0リッターガソリンターボエンジンを積む「S3」とのちがいも気になるところ。いずれにせよ、アウディのスポーツモデル攻勢は留まるところを知らないかのようだ。
最後に紹介したいのがデザインスタディの「プロローグ アヴァント」。新チーフデザイナーのマーク・リヒテ氏が次期型「A6」「A7」「A8」のエッセンスを1台にまとめ上げたデザインスタディのプロローグはLAショーで発表済みだが、プロローグ アヴァントはそのワゴン版。
基本的なデザインコンセプトはプロローグと共通ながら、大きく前傾したBピラー、やはり傾斜角の強いテールゲートなどによりスポーティなイメージを強調するいっぽう、ルーフを水平に長く伸ばすことでラゲッジルームのスペースを確保したという。
これはおそらく次期型「A6 アヴァント」を念頭に置いたものだろう。なお、リヒテ作のアウディで最初に世に出るのは次期型A8で、彼によるとデビュー時期は“2年以内”だそうだ。