アウディS3スポーツバックの実力を体感する|Audi
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2014年12月29日

アウディS3スポーツバックの実力を体感する|Audi

Audi S3 Sportback|アウディS3 スポーツバック

アウディS3スポーツバックの実力を体感する

昨年9月に上陸した、アウディの最新コンパクトハッチ「A3シリーズ」のなかで、その頂点にあるのが「S3 スポーツバック」だ。すでに「A3 1.8TFSIクワトロ」や、近縁にあたる「ゴルフGTI」に試乗している大谷達也氏は、それらがちょっとパワフルになったものという感覚で乗り込み、そして高速道路と山道を走りまわった果てに、その認識を改めさせられたという。試乗してわかる、アウディの最新プレミアムコンパクトの実力とは。

Text by OTANI TatsuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki

A3とは桁ちがいの差を見せつける

アウディ「A3セダン」の試乗会に参加してから1ヵ月と経っていなかったので、A3 1.8 TFSI quattroの速さはまだ身体のいたるところに染みついたままだった。

アウディのほかの最新パワーユニットと同様、最高出力180psの1.8リッター エンジンはアイドリングを少し越えた回転域からあふれ出るようなトルクを生み出し、それがトルコンを介さないデュアルクラッチ式のSトロニックを通じて駆動輪に伝えられるものだから、右足に力を込めたと思った瞬間にはもうクルマは動き出しているし、その後は一瞬の躊躇もわずかな迷いも見せることなく決然とダッシュしていく。

その俊敏さは、A3 1.8 TFSIだけでなく、気筒休止機構を備えたA3 1.4 TFSI cylinder on demandでも同じように味わうことができる。つまり、低速域から素早く立ち上がるエンジンのトルク特性、そして一切のスリップを許さずダイレクトにパワーを伝えるギアボックスが、実際のパフォーマンス以上にレスポンスのいい加速感を与えてくれるのだ。

これに対し、A3シリーズのフラッグシップモデルである「S3スポーツバック」は280ps/5,100-6,500rpmの最高出力と380Nm/1,800-5,100rpmの最大トルクを発揮する2.0リッターエンジンを搭載。

なるほど、最高出力の差は100psにも達するが、いくらスポーティモデルとはいえ所詮はCセグメントカーである。A3 1.8 TFSIよりちょっと速いくらいだろうと高を括っていたら、とんでもない。

その圧倒的なパフォーマンスは、もはやS3というよりは、そのもうひとクラス上に相当する“RS3”と呼んだほうがしっくりとするくらい、A3 1.8 TFSIとは桁ちがいの速さをしめしたのである(ちなみに現行A3シリーズのRSモデルは未発表)。

まずは、A3 1.8 TFSIでも太いと感じた低中速域のエンジントルクがざっと5割増しになったかと思われるほど“図太く”なっている。実際には、A3 1.8 TFSIの最大トルクは280Nmなのでその差はちょうど100Nm。比率でいえば36パーセント増しなのだけれど、あたかも奔流のごとくわき上がるエンジントルクのおかげで、1,510kgの車重がふっと1,000kgくらいまで絞り込まれたかと思われるほど小気味のいい加速をしめす。

Audi S3 Sportback|アウディS3 スポーツバック

アウディS3スポーツバックの実力を体感する (2)

息の長い力強さと高いスタビリティ

これより前に私は最新の「ゴルフGTI」を味見していたが、記憶に残っているそのダッシュ力をS3は確実に凌ぐ。改めて調べてみたところ、ゴルフGTIの最高出力は220ps。なるほど、S3のほうが一枚上手なわけである。

しかも、S3の生み出す280psのパワーは、アウディが30年以上の歳月をかけて熟成してきたフルタイム4WD“クワトロ”を通じて路面に伝えられる。おかげで、多少ラフにスロットルペダルを扱おうと、路面が濡れていようと、タイヤは一切スキッドすることがない。これも前述した小気味いい加速感にまちがいなく貢献しているはずだ。

おまけに、S3の力強さは発進直後の短い時間だけではなく、その後も息長くつづいていく。つまり、混雑した市街地やタイトなワインディングロードだけに限らず、交通量の高速道路でも存分にそのパフォーマンスを楽しめるのだ。これも、私がS3をRS3と呼びたくなった理由のひとつでもある。

これだけ俊足の持ち主になると、箱根の山道を走らせていても怖さが先に立ってしまうものだが、S3にはなぜかそれが微塵もない。さらーっと飛ばしている範囲でも、スピードメーターの針は恐ろしい速度域をしめしていたりするのだけれど、それでもS3のボディはぴたりと安定しているのだ。そもそも、メーターを見なければ自分がどれほどのスピードを出しているのか把握できないということ自体、S3のスタビリティの高さを物語っている。

Audi S3 Sportback|アウディS3 スポーツバック

アウディS3スポーツバックの実力を体感する (3)

アウディの本領を宿す

しかも、ただボディが落ち着いているだけでなく、S3はハンドリングが実に軽快。この点も、S3とよく似た成り立ちのゴルフGTIとは好対照を成すポイントといえる。もちろん、ゴルフGTIだってかなり機敏に走れる。ただし、ステアリングを握っていると、S3のほうがハンドリングのレスポンスが良好で、S字の切り返しでもヒラリヒラリと向きを変えていくように感じられるのだ。

実際には、前輪駆動のゴルフGTIは車重が1,390kgと120kgほど軽いので、S3より俊敏な動きを見せてもおかしくないのに、おそらくはサスペンションのセッティングが巧妙なためだろう。S3のほうがはるかに軽快に思われるのだ。

それは乗り心地にかんしてもおなじことがいえる。ダンピングが効いてどっしりした印象を与えるゴルフGTIに対し、S3は軽くさらーっとした乗り心地に終始する。にもかかわらずサスペンションはスムーズに上下するから、ボディが不当に揺さぶられることもない。

これはS3に限らず、ほかのA3シリーズにも共通していえることだが、軽快感がありながらボディをフラットにたもちつづけるA3/S3の足回りはとても完成度が高いと思う。

エクステリアやインテリアに派手なところはほとんどないが、ひと目見ただけで丁寧につくりこまれていることがわかる点はほかのアウディとまったくおなじ。もちろん、ゴルフだって質感の高さに不満は抱かないが、S3には、それを越えて「このクルマにずっと乗りつづけたい」という積極的な気持ちを沸き起こす不思議な力が宿っている。

じつは、このえもいわれぬ魅力こそ、プレミアムブランドたるアウディの本領ともいうべきものなのだろう。

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Audi S3 Sportback|アウディ S3 スポーツバック
ボディサイズ|全長 4,335 × 全幅 1,785 × 全高 1,440 mm
ホイールベース|2,630 mm
トレッド 前/後|1,525 / 1,495 mm
最低地上高|120 mm
重量|1,510 kg
エンジン|1,984cc 直列4気筒 DOHC ターボ
圧縮比|9.6 : 1
ボア×ストローク|82.5 × 92.8 mm
最高出力| 206 kW(280 ps)/ 5,100-6,500 rpm
最大トルク|380 Nm(38.8 kgm)/ 1,800-5,100 rpm
トランスミッション|6段オートマチック(Sトロニック)
駆動方式|4WD
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|4リンク
タイヤ|225/45R17
ブレーキ|ベンチレーテッドディスク
燃費(JC08モード)|14.4 km/ℓ
CO2排出量|161 g/km
最小回転半径|5.1 メートル
トランク容量(VDA値)|340リットル
燃料タンク容量|55 リットル
価格|560万円

アウディコミュニケーションセンター
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