フランクフルト現地リポート|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz|メルセデス・ベンツ
フランクフルト現地リポート
もっともよい時代はこれからはじまる
8年ぶりのフルモデルチェンジとなった「Sクラス」を筆頭に、ラグジュアリーカーを次々と送り込むメルセデス・ベンツ。今年のフランクフルトショーでは、「CLクラス」の後継モデルとなる「コンセプトSクラス・クーペ」を発表し、その勢いをさらに加速させる。そのいっぽうで、ハイブリッドモデルの拡充、自動運転システムの開発と、多角的に開発を推し進める同社。今後のメルセデス・ベンツについて、大谷達也氏が現地からリポートをお届けする。
Text by OTANI Tatsuya
ラグジュアリーカーで攻める
現在、メルセデス・ベンツはラグジュアリー・オフェンシブ(offensive=攻勢)を展開中なのだという。つまり、ラグジュアリーカーを次々と送り込んでライバルメーカーに攻勢をしかける、という戦略である。その中心となるのが、日本でも先ごろ発表された新型「Sクラス」であることは間違いないが、フランクフルトショーでは早速そのバリエーションにあたるコンセプトカーが発表された。
「コンセプトSクラス・クーペ」は、その名のとおり新型Sクラスを2ドアクーペに仕立て直したもので、「CLクラス」の後継モデルと考えられる。その最大のトピックは、伸びやかで美しいスタイリングにある。Bピラーを持たないウィンドウグラフィックは、空力的に洗練された翼断面のように滑らかな曲線で構成されている。
このためキャビン全体がきわめてコンパクトに見えるが、ルーフそのものは後席乗員の頭上まで水平に近い角度で伸びているので、クーペボディでもヘッドクリアランスが極端に不足することはなさそうだ。
また、フロントグリルを上部が前寄りで、下部を後方に引っ込めた “逆スラント形状”としてボンネットを延長し、クルマを横から眺めたときの視覚的なバランスをとっている。チーフデザイナーのゴードン・ワグナーによる作品らしい、均整のとれたデザインだ。
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もっともよい時代はこれからはじまる (2)
3モデル目の“Sクラス・ハイブリッド”
これ以外にメルセデスは3つのSクラスを公開した。ひとつは「S 500 インテリジェント ドライブ」。これは新型Sクラスに搭載されたディストロニック・プラス(ステアリングアシスト付き)をさらに進化させたもので、市街地や郊外の道を自動運転によって走行することを可能にしたコンセプトカーである。
その能力を実証するため、いまから125年前にカール・ベンツの妻であるベルタ・ベンツが自動車による長距離旅行が可能なことを示す目的で走ったのとおなじ、およそ100kmの道のりを自動運転で走行する実験がおこわれたが、結果的には万一のために乗り込んでいた“ドライバー”がなにひとつ介入することなくゴールにたどり着いたという。
「S 500 プラグイン ハイブリッド」は、ヨーロッパで発表済みの「S 400 ハイブリッド」「S 300 ブルーテック ハイブリッド」につづく3モデル目の“Sクラス・ハイブリッド”。パワープラントは最高出力333psのV6 3.0リッターガソリンエンジンと80kwを生み出す電気モーターの組み合わせで、バッテリーをフル充電すれば30kmのEV走行が可能で、EU方式のモード燃費は3.0ℓ/100km、つまり33.3km/ℓと発表されている。
最後に発表されたのは、Sクラスとしては現時点でもっともパワフルな「S 63 AMG」。V8 5.5リッターツインターボエンジンは585psと900Nmを発揮。モード燃費は10.1~10.3ℓ/100kmで、10km/ℓの大台に限りなく近づいている。CO2排出量は237~242g。
Sクラスの話題がつづいたが、彼らのプレスコンファレンスでいちばん最初に紹介されたのはコンパクトSUVの「GLA」だった。そのベースとなったのは最新の「Aクラス」だが、ボディサイドに2本のキャラクターラインが入る点は、おなじくAクラスベースの4ドアクーペ「CLA」に準じる。
メルセデス・ベンツはプレミアムカーに対する旺盛な需要に支えられ、今年度は140万台の販売目標を達成する見通しだという。「ダイムラーにとってもっともよい時代はこれからはじまる」 。プレスコンファレンスの最後にそう語ったツェッチェ会長の言葉はとりわけ印象的だった。