エコカー揃い踏み、3モデルの選び方を考える
CAR / LONG TERM REPORT
2015年4月15日

エコカー揃い踏み、3モデルの選び方を考える

Mercedes-Benz E 350 BlueTEC AVANGARDE|
メルセデス・ベンツ E 350 ブルーテック アバンギャルド
TOYOTA PRIUS G Touring|トヨタ・プリウス G ツーリング
NISSAN LEAF X|日産 リーフ X

エコカー揃い踏み、3モデルの選び方を考える

現在、OPENERS編集部にある長期リポート車はじつは、すべてエコカーと呼ばれるもの。しかし、ひと括りにエコカーと言っても得意な領域や使い勝手はまったくちがう。そこで、はじめて3台を集め、それぞれの特徴を考察した。

Text by MATSUO Dai
Photos by ARAKAWA Masayuki

街なかでしか乗らないならリーフで十分

まず、最新の長期リポート車である日産リーフ。電気だけで走ることができる注目モデルだが、これまでのリポートでも記したとおり、電気を満充電にして120km程度の走行といったところだろう。そのさいに消費する電力は24kwhなので月に1,000km走行するのなら200kwhの電力を消費することになる。

コストはどのくらいかかるのだろうか? 東京電力の電気料金は細かく分けられているので、たとえば一般的な家庭より多くの電力を消費する場合のプランである従量電灯Cで契約した場合、家庭全体で使用する電力が最初の120kWhまでは1kWhにつき17円87銭、120kWhをこえ300kWhまでが1kWhにつき22円86銭、これを超過すると1kWhにつき24円13銭となっている。それをそのまま200kwhの電力消費にあてはめると120×17.87+80×22.86となり、リーフを1カ月1,000km走行した場合の電気料金は3,973円20銭となる。レギュラーガソリンの平均価格が145円とした場合は同等の金額で27.4ℓを給油することができる程度だ。さらにオール電化プランをはじめ、最適なプランを選べば、じつは家計のめんでもリーフは優れているという試算が可能である。

エコカー揃い踏み、3モデルの選び方を考える

E350の3.5リッターディーゼルエンジンはカバーによってその中はほとんど見えない

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もはやおなじみのプリウスのハイブリッドユニット

エコカー揃い踏み、3モデルの選び方を考える

3気筒エンジンと見まちがえるようなモーターのデザインは日産リーフ

ところが、実際にはそうもいかない。それは長距離走行にたいするサポート体制の不備だ。リーフの長期リポート第2回で紹介したように、東京、神奈川の一般道および東名高速を除けば、まだまだ充電スポットが不足している。せっかくリーフを手に入れても、長距離走行が中心となる場合は目的地までたどり着けないという状況が今後も予想される。

長距離走行にはメルセデスか

翻って、長距離走行に圧倒的なアドバンテージをもつのが、メルセデス・ベンツのE350ブルーテックだ。燃料タンク容量が80リッターもあり、高速道路を中心とした走行なら15km/ℓ程度(JC08モード燃費は12.4km/l)走ることができるので、いちどの給油で走れる距離は1,200km程度となる。これはリーフの実に約10倍の航続可能距離である。それにメルセデスならではの上質な乗り味が備わっているから、ロングドライブをしても疲れないというアドバンテージもある。また、街乗りのシーンにおいてもよほどの悪条件が重ならなければ、10km/ℓを下まわることはない。そのうえ、540Nmという強大なトルクが、わずか1600rpmから得られるので、ストップアンドゴーの多い都心でもまったくストレスを感じることなく走らせることができる。

エコカー揃い踏み、3モデルの選び方を考える
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フロントシートは三台とも十分な居住性を持つ。メルセデスのみ他の2台とくらべかなりヒップポイントが低い

ただ、ネックとなるのがその価格だ。872万円というプライスタグがつけられている以上、誰にでもおススメできるというわけにもいかない。また、今年中にはE300ブルーテックハイブリッドの上陸もうわさされている。こちらは、250CDIに搭載される2.2lディーゼルとモーターによるディーゼルハイブリッド。最高出力150Kw、最大トルク500Nmを発生するエンジンにモーター組み合わせ、燃費は23.8km/ℓを実現するとしている。なお、軽油の平均価格を127円としてみた場合、1カ月1,000km走行する場合、4万2000円となる。

Mercedes-Benz E 350 BlueTEC AVANGARDE|
メルセデス・ベンツ E 350 ブルーテック アバンギャルド
TOYOTA PRIUS G Touring|トヨタ・プリウス G ツーリング
NISSAN LEAF X|日産 リーフ X

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現実的なプリウスという選択

その両者の利点を兼ね備えているのは、やはり世界的なエコカーであるプリウスだろう。燃費は走り方によっては30km/ℓ台も無理な数字ではないし、どれだけ悪条件での走行でも15km/ℓは確実に上まわる。スタート時にはリーフほどのスムーズさはないものの、モーターのアシストを受けたトルキーな走りが得られるし、リーフと比較しても圧倒的に航続距離も長い。満タンで45リッターの給油が可能であるため、15km/ℓとしても700km近く、25km/ℓならば1,125kmもの距離を継続して走行することが可能だと計算できる。

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エコカー揃い踏み、3モデルの選び方を考える

車格が数ランク上のEクラスをほかの2台と直接比較することは難しいが、リーフとプリウスはほぼ直接的なライバル関係にある。この両者のアプローチはまったく異なるといっていい。CO2排出量が0で、ガソリンを使用する場合に比べ圧倒的に安い電力コストが魅力、さらにLEAF to Homeという家庭への給電の実現がもうすぐはじまる未来のクルマ、リーフ。通常のガソリンエンジン車にくらべ燃費がよく、航続距離も十分に長い、現状もっとも強力なエコカーといわれるプリウス。3台のうちどのモデルを選ぶかは、結局、自らのライフスタイルをじっくり考えた上でということになるだろう。

エコカー揃い踏み、3モデルの選び方を考える 11

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spec

Mercedes-Benz E350 BlueTEC AVANGARDE|メルセデス・ベンツE350 ブルーテックアバンギャルド
ボディ|全長4,870×全幅1,855×全高1,455mm
ホイールベース|2,875mm
エンジン|2,986cc DOHC V型6気筒
最高出力|155kW[211ps]/3,400rpm
最大トルク|540Nm[55.1kgm]/1,600-2,400rpm
トランスミッション|電子制御7段AT
価格|872万円

TOYOTA PRIUS G Touring|トヨタ・プリウス G ツーリング
ボディ|全長4,460×全幅1,745×全高1,490mm
ホイールベース|2,700mm
エンジン|1.8l直列4気筒+電気モーター
最高出力|エンジン:73kW[99ps]/5200rpm モーター:60kW[82ps]
最大トルク|エンジン:142Nm[14.5kgm]/4000rpm モーター:207Nm[21.1kgm]
トランスミッション|電気式無段変速機
価格|270万円

NISSAN LEAF X|日産 リーフ X
ボディ|全長4,445×全幅1,770×全高1,545mm
ホイールベース|2,700mm
駆動用バッテリー|リチウムイオン電池
総電圧|360V
総電力量|24kwh
最高出力|80kW[109ps]/2,730-9,800rpm
最大トルク|280Nm[28.6kgm]/0-2,730rpm
価格|376万4,250円

           
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