ザ・ビートル カブリオレに試乗|Volkswagen
CAR / IMPRESSION
2014年12月5日

ザ・ビートル カブリオレに試乗|Volkswagen

Volkswagen The Beetle Cabriolet|フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ

ザ・ビートル カブリオレに試乗

現在のフォルクスワーゲンのモデルラインナップのなかで、もっとも異彩をはなつモデルといえば、「ザ・ビートル」をおいてほかにあるまい。自動車界アイコンであり、フォルクスワーゲンの原点「ビートル」の子孫はいま、青空の下、自由を謳歌している。日本上陸を果たした「ザ・ビートル カブリオレ」に早速乗った塩見智氏のインプレッション!

Text by SHIOMI Satoshi
Photographs by ARAKAWA Masayuki

ザ・ビートルは3代目

1990年代の終わりから約10年間、自動車業界はリバイバルデザインのブームを迎えた。

BMW「ミニ」、フォード「マスタング」、シボレー「カマロ」、フィアット「500」、トヨタ「FJクルーザー」など、過去の栄光をもう一度! と目論むデザインが次々に登場した。過去のヒット車をデザインモチーフにして新車を開発するコンセプトにたいし、「芸がない」と否定的な声もあったが、ほとんどのモデルが、数十年前のオリジナルを知らない世代も含む多くの人々に受け入れられ、長寿モデルとなっていることを考えると、音楽と一緒で、たまにはアリなんだろう。

そのリバイバルブームの走りが、98年、第4世代のフォルクスワーゲン(VW)「ゴルフ」をベースにつくられたVW「ニュービートル」だ。

ハードトップも、後に追加されたカブリオレも、ベースがゴルフだけによくできたクルマだったが、左右のみならず前後もほぼ対称なシルエットや、3つの円を少しずつずらして重ねたようなプロファイルは、ファニーかつファンシーで、男性が乗るには少々気恥ずかしさが伴った。

また、かつての日産Be-1、パオ、フィガロのようなパイクカー、すなわち企画モノや一発芸の匂いも漂った。

Volkswagen New Beetle|フォルクスワーゲン ニュービートル

Volkswagen New Beetle|フォルクスワーゲン ニュービートル

Volkswagen The Beetle|フォルクスワーゲン ザ・ビートル

Volkswagen The Beetle|フォルクスワーゲン ザ・ビートル

しかし、VWはニュービートルを一発芸に終わらせるつもりはなかったようで、昨年、モデルチェンジした。

車名を「ビートル」ではなく「ニュービートル」としていただけに、新型の車名がどうなるのか気になったが、「ザ・ビートル」に落ち着いた。

先日、ジュネーブショーでフェラーリがニューモデル「ラ フェラーリ」を発表したが、あれもおなじ手法で、意味づけるとすれば「ビートル決定版」あたりだろうから、自信作なのだろう。

Volkswagen The Beetle Cabriolet|フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ

ザ・ビートル カブリオレに試乗(2)

ダウンサイジングしてトルク向上

そのザ・ビートルにカブリオレが追加され、この度、日本にも導入された。

ハードトップ同様、1.2リッター直4ターボのTSIエンジンをフロントに横置きし、7段デュアルクラッチトランスミッションのDSGを介し、前輪を駆動する。最高出力105ps/5,000rpm、最大トルク17.8kgm/1,500-4,100rpmを発揮する。

ニュービートルは2リッター直4の自然吸気エンジンは同116ps/5,400rpm、同17.5kgm/3,200rpmだったので、最高出力は若干下がったが、最大トルクは少し向上したほか、最大トルクを発揮する回転域が広がった。車重は10kg減っているほか、トランスミッションも進化を遂げているため、スペック上の走行性能は確実に向上したことになる。

Volkswagen The Beetle Cabriolet|フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ

気持ちよさ倍増

実際に運転してみたところ、ターボエンジンの幅広いトルクバンドのおかげで、エンジン回転数がどこにあってもアクセルペダルを踏めば十分なトルクが得られ、運転がしやすい。ニュービートル カブリオレに試乗してからずいぶんたっていて記憶が曖昧なため、はっきり力強くなったとは断言できないが、新型を絶対的に評価する限り、十分なパワーを発するエンジンとスムーズなトランスミッションの組み合わせによって、気持ちよくドライブできた。

ハードトップに比べ、ボディ補強のため100kgの重量増となっており、ファイナルを含めギアリングも見直されてはいないのだが、少なくとも体感上はカブリオレのほうが動きがもっさりとしているようなことはなかった。

Volkswagen The Beetle Cabriolet|フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ

Volkswagen The Beetle Cabriolet|フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ

そして、気持ちよさはトップを下ろせば倍増する。

ザ・ビートルはニュービートルにくらべ、オリジナルビートルとのデザイン上の共通性が高く、フロントウィンドウの角度が切り立っている。このため、運転席で感じる開放感が非常に高い。そのわりに巻き込む風の量はよく抑えこまれていて、サイドウィンドウを上げておけば、高速道路をオープンのまま走っても、髪の毛がめちゃくちゃになるようなことはなかった。ま、元々髪型の気にならないくるくるパーマではあるのだが。

Volkswagen The Beetle Cabriolet|フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ

ザ・ビートル カブリオレに試乗(3)

このクルマはビートルなのだ

もうオープンカーだからといって、ボディ剛性が確保されているかどうかを心配する時代ではない。

ザ・ビートルもカブリオレになったからといって、スカットルが揺れたり、ボディのあちこちからミシミシと音がするようなことはない。ソフトトップのため、トップを上げて走っている間の風切り音、ロードノイズはそれなりに入ってくる。

が、ハードトップでも窓を開ければ入ってくる程度の音で、決して不快なほどではない。遮音や耐候性は流行りのリトラクタブルハードトップのほうが有利なのだろうが、このクルマはビートルだ。レトロなルックスも演出のひとつなのだ。オープンに9.5秒、クローズに11秒しかかからないのはソフトトップならでは。しかも、多くのソフトトップの競合モデルよりも速い。

Volkswagen The Beetle Cabriolet|フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ

Volkswagen The Beetle Cabriolet|フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ

これも初代を彷彿とさせる演出のひとつなのだが、折りたたんだルーフはトランクへ格納されることはなく、ほとんどがリアシートのヘッドレスト後方に積み重なったままだ。

このため、トップを下ろして走行する場合、ルームミラー越しに後方を見ても、トップを上げた際に見えていた視界の下半分は隠れてしまう。標準的な車高のクルマならミラー越しに捉えることができるが、背の低いクルマの場合は隠れることもあるだろう。

もちろん、ドアミラーで確認すればよいのだが、慣れは必要かもしれない。折りたたんだトップに被せるカバーをしていてもロールオーバープロテクションがきちんと機能するあたりに、VWのまじめなクルマづくりが見て取れる。

Volkswagen The Beetle Cabriolet|フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ

ザ・ビートル カブリオレに試乗(4)

グレードは1つ

装備はハードトップの上級グレードであるレザーパッケージに準じた内容。カブリオレには、見た目上も実用上もレザーシートがふさわしい。突然の雨で濡れてもさっと拭き取れるし、ホコリもたまりにくい。また、シートヒーターもカブリオレにはうれしい装備だ。

Volkswagen The Beetle Cabriolet|フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ

Volkswagen The Beetle Cabriolet|フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ

日本仕様のカーナビの充実を諦めるインポーターもあるが、VWはオンラインで最新の渋滞情報を反映させられるなど、日本車に付く最新モデルに匹敵する機能を盛り込んだカーナビを用意する。ザ・ビートル カブリオレには標準装備。

その分、価格はハードトップ版のレザーパッケージ仕様(303万円)+72万円の375万円に達する。一見、強気な値付けにおもえるが、実は「ゴルフ カブリオレ」(423万円)よりも48万円安く、プジョー「308CC」よりも35万~45万円安い。

好きなように楽しめる

ビートルは、その成り立ちこそ、戦時中のドイツの体制が国民車として開発を指示したクルマだが、戦後、重厚長大なクルマをよしをしてきたアメリカ市場で、「Think small」というキャッチコピーにより、その小ささ、身軽さを訴えて人気を博した、まるでヒッピームーブメントの象徴のようなクルマだ。

復活してからのビートルは、“何かの象徴”だとか“国民車”などというある種堅苦しい役割から解放され、気に入った人が好きなように楽しめるクルマとなった。

ザ・ビートル カブリオレは、とても魅力的なその最新版だとおもう。

燃費もよさそうだし。

Volkswagen The Beetle Cabriolet|フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ

spec

Volkswagen the Beetle Cabriolet|フォルクスワーゲン ザ・ビートル カブリオレ
ボディサイズ|全長4,270×全幅1,815×全高1,485mm
ホイールベース|2,535 mm
トレッド 前/後|1,580 / 1,545 mm
最低地上高|130 mm
最小回転半径|5 メートル
トランク容量(VDA値)|225 リットル
重量|1,380 kg
エンジン|1,197cc 直列4気筒 SOHC インタークーラーターボ
圧縮比|10.0 : 1
ボア×ストローク|71×75.6 mm
最高出力| 77kW(105ps)/ 5,000 rpm
最大トルク|175Nm(17.8kgm)/ 1,500-4,100 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(7DSG)
ギア比|1速 3.764
2速 2.272
3速 1.531
4速 1.121
5速 1.176
6速 0.951
7速 0.795
減速比|2.045
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|4リンク
タイヤ|215/60R16
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
0-100km/h加速|11.7 秒
燃費(JC08モード)|17.6 km/ℓ
燃料タンク容量|55 ℓ
価格|375万円

           
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