フォルクスワーゲン クロストゥーランに試乗|Volkswagen
CAR / IMPRESSION
2014年12月5日

フォルクスワーゲン クロストゥーランに試乗|Volkswagen

Volkswagen Cross Touran|フォルクスワーゲン クロストゥーラン

クロスを冠したトゥーランに乗る

フォルクスワーゲン「ゴルフ5」をベースとしてつくられたコンパクトミニバン「ゴルフトゥーラン」。さらにこのゴルフトゥーランをベースに、車高を上げるとともに専用の内外装を装着することで、よりアグレッシブな雰囲気を獲得したスペシャリティモデルは、あらたに「クロストゥーラン」という名を与えられて登場した。ベースとなっているゴルフトゥーランよりも、ぐっとスポーティテイストをました、このクロストゥーランを、「ティグアン」につづいて小川フミオ氏が駆る。

Text by OGAWA Fumio
Photographs by ARAKAWA Masayuki

ニッチを狙う

フォルクスワーゲン グループ ジャパンが、2012年11月20日に発売した
「クロストゥーラン」。「ゴルフトゥーラン」に、専用の外装を与えたスペシャルティモデルだ。ノーマル版よりやや車高が高くなり、オーバーフェンダーなど専用の内外装を持つ「クロスポロ」と同種のコンセプトを採用することで、ニッチ(すきま)市場を狙ったスポーティ指向が特徴となっている。

エンジンはターボチャージャーとスーパーチャージャーともに採用の、いわゆるツインチャージドで、1.4リッターの排気量から、140psの最高出力と、220Nmの最大トルクを発生する。駆動方式は前輪駆動と、スタンダードの「ゴルフトゥーラン」と同様。サスペンションはクロストゥーラン専用となり、ノーマルにたいして全高はプラス10mm。さらに、17インチアルミホールが標準で装備される。

Volkswagen Cross Touran|フォルクスワーゲン クロストゥーラン

Volkswagen Cross Touran|フォルクスワーゲン クロストゥーラン

外装における標準装備は下記となる。

バイキセノンヘッドランプ
フロントフォグランプ
専用フロント&リヤバンパー
ホイールハウスエクステンション
ブラックサイドモールディング
サイドスカート

内装では下記が標準装備。

専用デザインのファブリックシート

純正ナビゲーションシステム“712SDCW”
リヤビューカメラ(リアアシスト)
マルチファンクション革巻きステアリングホイール
パドルシフト
2ゾーンフルオートエアコンディショナー

トゥーランは7の独立したシートを備え、コンパクトなサイズながら機能性にすぐれていることで人気だが、そこにスポーティなイメージを付与したのがクロストゥーランだ。走らせると、きびきびとして、トゥーランを単なるミニバンとして、“乗らず嫌い”だったユーザーにもアピール度が高い仕上がりだ。

Volkswagen Cross Touran|フォルクスワーゲン クロストゥーラン

クロスを冠したトゥーランに乗る(2)

おもしろいほど力強く走る

スタンダードモデルの「ゴルフトゥーラン」は、4,405mmの全長にたいして1,670mmの全高という、かつて流行った言葉でいうと「トールボーイスタイル」を採る。合理的で機能主義的なデザインを得意とするフォルクスワーゲンだけあって、大家族や、マリンスポーツ、あるいはスノースポーツなどを趣味とするひとには、使い勝手のいいクルマであった。しかしおもしろみのないデザインである。

いっぽう走りは外観よりはるかに楽しい。低回転域から機械的に作動してトルクを付与するスーパーチャージャーと、3,000rpm近辺の回転域から作動するターボチャージャーとを効率的に組みあわせたエンジニアリングの恩恵で、きびきびと走れるのだ。それでもこれまでは、走りのためにゴルフトゥーランを買おうというひとはいなかった(はず)。

クロストゥーランのよさは、そもそもトゥーランのもつ、クルマとしてのポテンシャルに気づく機会をつくってくれたところにある。つまり、クルマとしての出来のよさを表現するデザインなのだ。

Volkswagen Cross Touran|フォルクスワーゲン クロストゥーラン

Volkswagen Cross Touran|フォルクスワーゲン クロストゥーラン

堅牢なシャシーに組みあわされた。ニュートラルな特性をもつステアリングと、しなやかでかつロードホールディング性にすぐれたサスペンションシステム。それによくまわるエンジン。これらを体験すると、ゴルフトゥーランがたんなるピープルムーバー(大人数を運ぶためにつくられたバンなどをこう呼ぶ)でないことを知らしめてくれる。

クロストゥーランにかぎらす、ゴルフトゥーランに乗る機会があったら、ギアセレクターで「Sモード」を選択してみることをお勧めする。

上のほうまでエンジン回転をつかう設定なので、おもしろいほど力強く走る。この1.4リッターエンジンは回転マナーがよく、つまりアクセルペダルを踏みこむと、上までスムーズに吹け上がる。それが気持ちよい。

クロストゥーランも、ベースモデルの美点を備えている。車重はベースモデルと同等の1,580kgなので、あまり軽量とはいえないが、デメリットはほとんどない。坂道ののぼりでこそ、加速の俊敏性にやや疑問が残るが、スポーツカーではないので、低中回転域で太いトルクがあれば、充分に楽しめる。

Volkswagen Cross Touran|フォルクスワーゲン クロストゥーラン

クロスを冠したトゥーランに乗る(3)

どの席にいても、リラックスしていられる

クロストゥーランは内装も魅力的だ。中央部分にフォルクスワーゲン スポーツモデルの伝統ともいえるチェック模様のファブリックが張られたシートに好感がもてる。

見た目もさることながら、つくりがよく、座り心地も上質だ。サイドサポートも大きく(実際にここまでスポーティなデザインである必要があるかはともかく)ドライバーをはじめ、どの席にいても、リラックスしていられる。

これは私見かもしれないが、自動車で「リラックス」というときは、シートの場合、座り心地がよく、サポート性が高く、乗員が安心して座っていられることを評価した言葉だ。スポーツカーもしかり、クロストゥーランもしかり、である。

Volkswagen Cross Touran|フォルクスワーゲン クロストゥーラン

Volkswagen Cross Touran|フォルクスワーゲン クロストゥーラン

コントロール類は基本的にベースモデルとおなじで、エモーショナルな要素はなく、愛想はないが、使い勝手にはたいへんすぐれる。ひょっとして開発時期がもっと遅かったら、「up!」で見られるような楽しいデザインが採用されたかもしれない、などと考えてしまう。

「ティグアン」のFWDモデルがほぼ同時期に発売されており、そちらは、そもそも4WDモデルしかなかったところに、軽快さを持ち込んでいる。ほぼ同時に、2台の魅力的な前輪駆動のSUVがラインナップされたことになる。

クロストゥーランの魅力は、端的にいうと、活動的なイメージ。

パワートレインは共通の「ゴルフトゥーラン TSI ハイライン」が339万円であるのにたいして、モノグレードの「クロストゥーラン」は348万円とかなり近接している。

機能の面ではトゥーランのよさを認めているが、もうすこし趣味性が欲しい、というひとは確実にいるとおもうので、上手なニッチマーケティングのようにもおもえる。

Volkswagen Cross Touran|フォルクスワーゲン クロストゥーラン

燃費とエコカー減税(ゴルフトゥーランが75パーセント減税であるのにたいしてクロストゥーランは50パーセント)で多少差は出るとしても、アクティブなライフスタイルビークルというイメージはプラスに働くはず。その選択を否定するつもりは毛頭ない。

spec

Volkswagen Cross Touran|フォルクスワーゲン クロストゥーラン
ボディサイズ|全長4,405×全幅1,800×全高1,680mm
ホイールベース|2,675 mm
トレッド 前/後|1,550 / 1,535 mm
最低地上高|145 mm
最小回転半径|5.3 メートル
トランク容量(VDA値)|最大1,913 リットル
重量|1,740 kg
エンジン|1,389cc 直列4気筒 直噴DOHC インタークーラー付きターボ+スーパーチャージャー
圧縮比|10.0 : 1
ボア×ストローク|76.5×75.6 mm
最高出力| 103kW(140ps)/ 5,600 rpm
最大トルク|220Nm(22.4kgm)/ 1,250-4,000 rpm
トランスミッション|7段DSG
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|4リンク
タイヤ 前/後|215/50R17 / 235/45R17
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃費(JC08モード)|14.0 km/ℓ
CO2排出量|166 g/km
燃料タンク容量|60 ℓ
価格|348 万円

           
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