2WDのティグアンに試乗|Volkswagen
Volkswagen Tiguan TSI BlueMotion Technology│
フォルクスワーゲン ティグアン TSI ブルーモーションテクノロジー
二輪駆動のティグアンに試乗
昨年末、より競争力を増した価格で2WDモデルが日本市場に投入された「フォルクスワーゲンティグアン」。従来の2リッター4WDモデルから大幅なダウンサイジングとなる1.4リッターのターボエンジンを搭載。アイドリングストップ機構やブレーキ回生システム、コースティングモードなどで構成される「ブルーモーション テクノロジー」ともあいまってさらなる低燃費を実現した。この2WDのティグアンはどんなキャラクターなのか? 小川フミオ氏のリポート。
Text by OGAWA Fumio
Photographs by ARAKAWA Masayuki
もっとはやくから日本でもほしかった2WDのティグアン
フォルクスワーゲン グループジャパンが、2012年11月20日に日本で追加発売した、「ティグアン TSI ブルーモーションテクノロジー」。1.4リッターターボエンジン搭載の、前輪駆動モデルで、セリングポイントは低燃費にある。
ティグアンは4.5mを切る全長の、比較的コンパクトなSUV(スポーツ多目的車)。日本では4MOTION(フォーモーション)と名づけられたオンデマンド(必要に応じて四輪駆動になるシステム)型4WDシステムを備えたモデルが、2009年9月に発売された。
今回は、着座位置の高さや広々感のある室内空間、それにセダンともハッチバックともことなる個性的な雰囲気をそのままに、より高効率性を追求した前輪駆動モデルの追加設定だ。
欧米では、雪が多い地方でも、必ずしも4WDが求められているわけでなく、ロードクリアランスという路面からの高ささえある程度確保されていれば、2WDでも充分目的を達成できるという考えかたが浸透している。その意味でも、ティグアンの2WDの完成度は高く、日本でももっと早くから発売されていてよかったともいえる。
特徴をひとことでいうと、2リッター4WDモデルより100kgも車重が軽いこともあり、排気量差を補ってあまりある力強い走りをみせる。2012年2月の外観マイナーチェンジを経て精悍さを増したイメージどおり、きびきびとした走りで、個性がより明確で、好ましい印象を受けた。
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フォルクスワーゲン ティグアン TSI ブルーモーションテクノロジー
二輪駆動のティグアンに試乗(2)
運転が楽しい
ティグアンのライバルを探すと、BMW X1(367万円~)や、アウディQ3(409万円)、MINIクロスオーバー(267.2万円)さらにシボレー キャプティバ(359万円)、ジープ パトリオット(258万円)といった輸入車勢がおもい浮かぶ。今回のTSI ブルーモーションテクノロジーは、339万円がスターティングプライスで、内装の作りなどを考慮すると巧妙な価格戦略ともいえる。
フォルクスワーゲンは、みごとなまでの作り込み品質の高さを誇るが、ティグアンはラインナップにあって中堅モデルなので、ドアの開閉からダッシュボードやドアの内張り、そしてシートにいたるまで、クオリティ感が高いのが印象に残る。これに慣れると、国産車の品質では確実にものたりなくなる。1990年代中半に、ドクター・フェルディナント・ピエヒがフォルクスワーゲンの総帥という立場から、全車の品質向上を指示して以来、今日にいたるまで、最高峰のバリューフォーマネーを提供するという牙城は崩されていない。
乗ると、1.4TSIブルーモーションテクノロジーは、2リッター4WDモデルよりも軽快で、好印象だ。1.4リッターエンジンは1,600rpmからもりもりとトルクを出し、1.6トンというそれほど軽くはない車重だが、痛痒感はいっさいなし。路面からの侵入音がやや気になるが、やがて耳に慣れてしまう。サイドウィンドウまわりの風切り音は低い。
エンジンの熟成だろうか、1,500rpmから240Nmの最大トルクを発生する設定も納得できるような、パワフル感がしっかりあるのは魅力的だ。もしこのエンジンのよさを味わいたければ(ふつうに気持ちよく走行できるのでそれだけでも充分だが)、6段DSG変速機でSモードを選択するとよい。シフトアップのスケジュールが遅くなり、3,000~4,000rpmという、ダイレクトにアクセルワークに反応する、エンジンの“もっともおいしい”ところを堪能できる。
Sモードで走ると、車体の高さや、重さなどを感じさせないハンドリングのおかげもあって、気持ちよいドライブができる。
ほんの少しアクセルに載せた足に力をこめると、クルマはたちどころに加速し、ゆるめると、さっと減速する。ドライバーの意志にまことに忠実に動いてくれる感覚は、スポーティそのもの。
いいエンジンだなあ、いいクルマだなあと、ティグアンのもつ、もうひとつの美点をたっぷりと味わえる。このモードでは燃費がいまいちよくないが、運転が好きなひとにはいちどお勧めしたい。
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フォルクスワーゲン ティグアン TSI ブルーモーションテクノロジー
二輪駆動のティグアンに試乗(3)
ドイツの機能主義
ティグアンのシートは、椅子に長い伝統をもつ欧州ならではの出来のよさ。国産車がいまだ座椅子の文化から抜けだせていないのと対照的だ。クッションは硬めだが、ドライバーのからだをしっかり支えてくれるホールド性はよく、びしっと芯のとおった印象だ。
ハンドルの剛性感は、やや硬めだが、巡航速度ではしっとりと落ち着きを見せるサスペンション設定、そして節度感のあるシフトレバーや各種コントロールなど、ドイツの機能主義に期待できるものはすべて備わっている。
路面のホールド性はすばらしく、かつ、中立付近からハンドルの切り込み量はそれほど大きくなく、コーナーを回っていくことができる。キャラクターは、車高の高いスタイリングから想像される以上のスポーティさがある。SUVのSはスポーツのSだから、走る楽しさという本来の目的をきちんと兼ね備えているともいえる。
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二輪駆動のティグアンに試乗(4)
切る札は強力
最後に、マイナーチェンジを受けたティグアンの特徴を列記しておこう。燃費の面では、信号待ちでエンジンのアイドリングを停止するスタート/ストップシステム、一定速度での走行中にアクセルペダルから足を離したときにトランスミッションとエンジンの接続を切り離すコースティング走行モード、ブレーキング時に電力を発生させる回生ブレーキ、といったさらなる効率化をめざしたシステムが装備される。
マーケットではかつては大型SUVが人気だったが、いまはダウンサイジング化指向が進んでいる。(4WDによる悪路の)走破性の高さより、エコロジーを求める層に向けて、日本のメーカーはさまざまなモデルをつくっている。フォルクスワーゲンも300万円以下の日本車とまっこうから対抗できるモデルを投入するのは意味あることとおもっている。
ティグアンTSIブルーモーションテクノロジーを日本市場に導入する背景について、フォルクスワーゲンではそう語る。クオリティ、ハンドリング、スポーティさ、かなり強力な切り札の数々を備えたこのクルマ、乗ってみると、選ぶ意味が見えてくるとおもう。
Volkswagen Tiguan TSI BlueMotion Technology│
フォルクスワーゲン ティグアン TSIブルーモーションテクノロジー
ボディサイズ|全長4,430×全幅1,810×全高1,710mm
ホイールベース|2,605 mm
トレッド 前/後|1,550 / 1,550 mm
最低地上高|180 mm
最小回転半径|5.7 メートル
トランク容量|470-1,510 リットル
重量|1,540 kg
エンジン|1,389cc 直列4気筒DOHC インタークーラー付きターボ+スーパーチャージャー
圧縮比|10.0 : 1
ボア×ストローク|76.5×75.6 mm
最高出力| 110kW(150ps)/ 5,800 rpm
最大トルク|240Nm(24.5kgm)/ 1,500-4,000 rpm
トランスミッション|6段DSG
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット スタビライザー付
サスペンション 後|4リンク スタビライザー付
タイヤ 前/後|235/55R17
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃費(JC08モード)|14.6 km/ℓ
CO2排出量|159 g/km
燃料タンク容量|63 ℓ
価格|339万円 / (R-Line Package)379万円