MINI COOPER CROSSOVER|ミニ クーパー クロスオーバー 試乗インプレッション
MINI COOPER CROSSOVER|ミニ クーパー クロスオーバー
小気味良い、新型クロスオーバーの訴求力(1)
MINI初の4ドア、MINI クロスオーバーのクーパー仕様に試乗。使い勝手のいい1台だ。
文=小川フミオ写真=荒川正幸
販売の中核を担うクーパー仕様
MINIのラインナップに、2011年1月13日よりMINIクロスオーバーがくわわり、ビー・エム・ダブリュー株式会社の手によって発売された。MINIとして初の4ドアで、そこに4WDシステム搭載モデルも設定されたのがトピックスだ。
街乗り用に、ボディは小ぶりで、それでいてちょっと洒落たデザインのクルマが欲しい、と思っていたひとにとって、MINIクロスオーバーは期待のモデルといえる。全長からいえばほぼ4mのフォルクスワーゲン ポロ(213万円~)が直接のライバルだろうか。ポロのまじめなスタイリングでは少々物足りないと思っていたひとには、検討する価値がおおいにあるモデルだ。
MINIクロスオーバーのラインナップは、98psの1.6リッターエンジン搭載「ONE」(265万円~)、122psの1.6リッターの「クーパー」(299万円~)、184psの1.6リッターターボの「クーパーS」(345万円~)、そして「クーパーS ALL FOUR」(366万円~)の4モデル構成。それぞれのモデルに6MTと6ATとの設定がある。
今回試乗したのは、MINI クーパー クロスオーバーの6ATモデル(312万円)。MINIラインナップのなかでもっとも人気があるというクーパーだ。性能と価格のバランスのせいだろう。「クロスオーバーでも販売の中核になる」と輸入元では見ている。
MINIクロスオーバーは、シャシーもボディも新設計で、2,595mmものロングホイールベースをもつシャシーに、4,120mmと比較的コンパクトなボディが載せられる。だが実車に接すると1,550mmと高めの全高のせいか、予想以上に大きく感じる。クーパーはONEとおなじく、205/60というプロファイルをもつ16インチタイヤを装着する。ホイールアーチにブラックの合成樹脂製トリムがつくせいか、足を踏ん張った力強さはひときわ印象的だ。
力強い1.6リッターとマニュアルシフトの組み合わせ
走りはどうか。MINI クーパー クロスオーバーは1.3トンを超える車重をもつ。そのせいか、スタートはややかったるさがある。変速タイミングは燃費を考えてだろう、はやめはやめにシフトアップしてゆく設定だ。ただしエンジンはよくまわる。3,000rpmから上で力が出てくるため、ATで活発に走ろうと思うなら、マニュアルシフトをするといい。
マニュアルシフトとは手動でギアをセレクトすることで、クーパーはシフトレバーにプッシュとプルでシフトアップとダウンがおこなえる機構がもうけられている。ローから発進して3,000rpmあたりでセカンドにシフトアップ、そこからは5,000rpmを超えるまでひっぱってギアを変えていく。4,000rpmからがクーパーはおもしろい。やや排気音が過大だが、1.6リッターエンジンは力強いクロスオーバーのボディを引っ張ってゆく。
オートマチックギアボックスの変速ショックはそれほど大きくない。最近流行のデュアルクラッチシステムはもうけられていないが、「変速のスムーズさでいえばこっちでいい」と感じる。ONEからクーパーS ALL FOURまですべてのラインナップにMTとATを設定しているのは見識だと思う。実際にMTの比率は低いだろうが、でも、本当はMTで楽しいクルマだ。むしろMTでこそ、MINIの「おいしいところ」が味わえるのだが。
MINI COOPER CROSSOVER|ミニ クーパー クロスオーバー
小気味良い、新型クロスオーバーの訴求力(2)
セダンとも張り合える高い実用性をもつクルマ
操作性では、ハンドルが意外に重い設定なのが印象的だ。個人的にはもうすこし軽くてもいいと思うが、しかし、中立ふきんでも微舵といって、左右どちらかに少し切ったときのシャシーの応答性はよい。つまりスポーティだ。コーナリング特性はほぼニュートラルに近い気持ちよさを感じられる。乗り心地はやや硬めだが、それでもクーパー クラブマンに比べると、クロスオーバーのほうがしっとり感がある。クーパーまでは“乗用車”としての快適性も意識しているのだろうか。
輸入元では「じつはクラブマンのほうがニッチ(すきま)狙いのプロダクト。クロスオーバーは実用性の高さから他社のセダンとマーケットで互角に渡り合う可能性を秘めたモデル。クラブマンとクロスオーバーは、キャラクターのちがいによってマーケットで住み分けるだろう」(広報担当者)と語っている。
室内は広びろ感がある。前席のシートはファブリック張りの場合、あたりがやわらかく、座り心地は快適。ダッシュボードとメーターまわりの意匠も変更を受け、すっきり感が強くなった。後席は通常、独立したシートによるふたりがけ。後席の足もとはひろびろしている。2.6メートル近いホイールベースの恩恵だ。望めば無料オプションで、後席を3人がけのシートに変更することができる。
ライバル車は、VW ポロ GTI
MINI クーパー クロスオーバーの6ATは先にも書いたように312万円。実用性の高い4ドアボディに走る楽しさを組み合わせたという点では、179psの1.4リッターエンジンにデュアルクラッチシステムを搭載するVW ポロ GTI(294万円)が強力なライバルだ。MINIの強みはルーフとボディの2トーンカラーなどのカラースキームや、オプションが豊富なことだ。ドアの内張とシートカラーの組み合わせもバリエーション豊かで、この楽しさは他車の追随を許さない。
走りでは、いまひとつ個性に欠け、VW ポロ GTIのはじけるような楽しさには及ばない。そちらはクーパーSで、ということだろうが、345万円からというクーパーSの価格は、もはやアッパーミドルカーのセグメントで、別のところにライバルを探したほうがよさそうだ。
MINI クロスオーバーのライバルは自社内にいるのかもしれない。その証拠に「MINIからの買い替え需要もけっこうありそう」という輸入元の言葉がある。MINIが好きだが2ドアであるがゆえの実用性に不満をもっていたひともいるだろう。MINIクロスオーバーはMINIオーナーがもっとも待ち望んでいたモデルだといえる。