試乗|Volkswagen POLO GTI
Volkswagen POLO GTI|フォルクスワーゲン ポロ GTI
軽快で力強い走り、ハニカム構造の口をもつ新型GTIの主張(1)
フォルクスワーゲン グループ ジャパンは、2010年9月21日に、179psの高出力、1.4リッターエンジンを搭載するスポーティなハッチバック「フォルクスワーゲン ポロGTI」の日本発売を開始。モータージャーナリストの小川フミオがさっそく試乗した。
文=小川フミオ写真=荒川正幸
「XDS」新搭載、よりタイトなスポーツシャシー
ポロはフォルクスワーゲンの主力に位置づけられる量販車種で、わが国でも、1.2リッターにインタークーラーつきターボチャージャーを組みあわせたTSIコンフォートラインや、車高の高いクロスポロが人気を集めている。そこに追加投入されたポロGTIは、高性能を意味するサブネームGTIの名に恥じない、操縦する楽しさを追求したモデルだ。
ポロGTIに搭載される1.4リッターには、インタークーラーつきターボチャージャーが組みあわされ、179psの高出力を実現する専用のチューニングだ。ギアボックスはポロ初の7段DSG。
さらに15mmローダウンされた専用のスポーツシャシーに、ポロとしては初採用となる電子制御式ディファレンシャルロック「XDS」を搭載している。
この「XDS」は、よりスポーティなコーナリングを可能にしてくれる。ハイスピードでカーブを曲がるさい、電子制御によりブレーキ圧を調整し、内側車輪の空転を防ぎ、外側へと車体がふくらんでいくアンダーステアを減少させる役割を果たす。
さらに専用の17インチアルミホイールやレッドブレーキキャリパー、そして、ゴルフGTIにもつうじるチェック柄のスポーツシートなど、ひと目でポロGTIとわかる特徴が盛り込まれている。
精悍なつくりから滲みでたような力強い走り
「新世代のポロGTIの特徴はまさに効率のよさにある。1780ccターボエンジン搭載の先代と比較すると、パワーは29パーセント、トルクは14パーセントアップしながら、燃費は約26パーセント向上しています。これには2バルブ化で軽量、コンパクトにする一方、排気量を抑えつつ過給によってパワーをえたエンジンの果たした役割が大きい」。輸入元のフォルクスワーゲン グループ ジャパン広報ではこのように特徴を語っている。
見た目の印象は、ゴルフにつうじる新世代のフロントグリルはかなりの精悍なつくり。吊り目ぎみの矩形ヘッドランプと、グリルにはさまれた赤いラインが特別性を引き立たせてくれる。さらに扁平率40パーセントいうタイヤに組みあわされた大型軽量の専用17インチホイールが、すごみさえあたえている。
室内では、ゴルフGTIのアイデンティティのひとつともいえるチェック柄のファブリックが張られたシートが目を惹く。「トップスポーツシート」と呼ばれるこのバケットシートをはじめ、パドルシフトつき革巻きステアリングホイール、革巻きシフトノブなど、スポーティな装備がおごられる。赤色のステッチが随所にほどこされており、緻密な工夫が雰囲気を醸しだしている。
Volkswagen POLO GTI|フォルクスワーゲン ポロ GTI
軽快で力強い走り、ハニカム構造の口をもつ新型GTIの主張(2)
"GTI"の名に恥じない、完成されたクルマ
運転した感覚は、ひとことでいうと、軽くて、かつ速い。1.2トンの車重にたいして179psの最高出力および、250Nmの最大トルクを2000rpmから発生する設定。そこで太めの排気音とともに、するどい加速を見せる。回転計を見ていると、2800rpmぐらいからモリモリと力がでてくる。そのあとは途切れることなく加速がつづく。一般道なので、リミットがわからないが、全長4メートルを切るコンパクトなボディは、驚くほどいきおいがよくスピードが増していく感覚を味わわせてくれる。
ハンドルの操作感にかんしては設定が軽め。コーナリング性能は高く、操舵感はニュートラル。なので速度が上がっていっても不安感はない。足まわりは硬く、215/40R17サイズのタイヤのせいもあるのだろう、ややゴツゴツ感のある乗り心地だ。その代償として、ハンドルを切ったときの楽しさが手にはいる。ハンドルの切りはじめから車体の反応速度がはやい。思ったとおりにカーブを曲がることができる。
乗りつづけても飽きない、シンプルで使いやすいホットハッチ
ラテンのクルマは、乗りはじめの印象と、乗りこんでいった印象とが大きく変わるものがある。いろいろな状況での運転を楽しんでいるうちに、クルマのもつキャラクターが見えてくる。そして、そのクルマをより深く好きになることがある。ポロGTIは、完成されたクルマというのが最初の印象。そのあとどんな場面でのドライブを体験しても、最初の印象が覆されることはない。これに感心した。
7段DSGも反応が速く、アクセルペダルの踏み込みへの反応がよい。クルマがパワフルに感じられトルクバンドをうまくつかえる。オートマチックモードでは、加速にあたってはギアを1段おとすなど、細かいセッティング。クルマの敏捷性を損なうことはないとおもわれた。
シートなどつくりは簡素ともいえるものだが、よいのは表面上のよさだけでなく、実際の座り心地もすぐれている。上体左右におおきく張り出したサポートがコーナリング時にはからだをしっかり支えてくれる。ポジションは自然で、ムリなく運転できるのも、機能主義の国、ドイツ生まれの証だろう。
ダウンサイジング化とは、エンジン排気量を小さくしてターボチャージャーなど過給器を装着することをいう。
子どもが親元の手から離れた家族、いわゆるエンプティネストなどは、いたずらに車体の大型化を求めず、都市でつかいやすいクルマを望む傾向があるとか。たんにコンパクトなだけでなく、目が覚めるような速さをみせるポロGTIは、そんなマーケットにも合致している。
ドアが4枚あるのも実用的でよい。機能とスポーティな楽しさ、300万円を下まわる価格で、という欲張りな要求はけっして稀なものではないだろう。ポロGTIはオールマイティな万人むけのホットハッチ(速いハッチバック)だ。
Volkswagen Polo GTI|フォルクスワーゲン ポロ GTI
ボディ|全長3,995×全幅1,685×全高1,460mm
エンジン|1.4ℓ 直列4気筒DOHC+インタークーラーつきターボチャージャー
最高出力|132kW[179ps〕/6,200rpm
最大トルク|250Nm[25.5kg〕/2,000-4,500rpm
CO2排出量|139g/km
駆動方式|前輪駆動
トランスミッション|7段DSG
価格|294万円
フォルクスワーゲン カスタマーセンター
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