OPENERS CAR Selection 2012|九島辰也篇
OPENERS CAR読者におくる2012年の5台
OPENERS CAR Selection 2012 九島辰也篇
OPENERS CAR編集部は、2012年、OPENERS CARを支えた執筆者6人に、2012年を振り返ってもらうと同時に、OPENERS読者に注目してもらいたい5台を選んでもらった。九島辰也氏による5選。
Text by KUSHIMA Tatsuya
ECO+スポーツ!
今年は年初のデトロイトモーターショーから、ジュネーブショー、オートチャイナ(北京)、パリオートサロンといった自動車ショーを観てきた。また、その間に様々なメーカーの国際試乗会や工場見学もおこなった。マクラーレンやベントレーの工場はなかなか見応えがある。
それを踏まえて、ヨーロッパメーカーが元気なのを感じた。特にドイツ系はそうだ。アウディ人気は絶大だし、フォルクスワーゲンも「up!」でその存在をアピール。それにポルシェ「911」のフルモデルチェンジも大きな話題といえる。
だが、英国車系も負けていない。マクラーレンが送り出した市販車「MP4-12C」はすぐにヨーロッパの自動車専門誌に絶賛された。こんなに乗りやすいスーパーカーはないと。ヨーロッパの経済危機のあおりを受けたフランス、イタリア系はおとなしかった。スペインやポルトガルといったお得先が経済破綻するとかしないとかで騒がれれば、仕方のないことだろう。
でももっと元気がないのは日本のメーカー。各モーターショー会場でブースに足を運んでもどこか雰囲気がどんよりしている。にわかにいいクルマも発表されているのだが、活気を感じない。ただ、そんななかでもトヨタ「GT86」(欧州名)は話題となった。他国のモータージャーナリストや欧州メーカースタッフからその中身についていくつか質問を受けた。やはりこの業界は、スポーツカー好きで構成されているのだろう。
ということで、今年はやはりドイツのメーカーの活躍が挙げられる。彼らの技術が自動車業界を牽引しているのは確かだ。個人的に興味を持ったのは「ECO+スポーツ」。いくらECOを叫んでも走らせて楽しくなければクルマじゃないという彼らのポリシーを感じる。その辺のテイストはヨーロッパメーカーに牽引してもらった方がいいかもしれない。燃費競争ばかりしてクルマを電化製品化させている日本のメーカーにはない発想だ。
九島辰也氏がOPENERS読者にオススメする2012年の5台
デザインの革命だとおもう。
SUVというカテゴリーにとらわれず、あたらしいジャンルをつくってくれた。これ以降SUVのデザインは変わるだろうし、その可能性を感じさせてくれる。
デザイナー、ジェリー・マクガバンは何度かインタビューをしたが、かなりデザインコンシャスな人。この作品は彼にとってもコメモラティブなものになるにちがいない。
ディーゼルエンジンのイメージを変えてくれた一台。
「BMWがディーゼルを手がけるとこうなるのか」、と感心させられる。“駆け抜ける喜び”をスローガンに掲げるメーカーはディーゼルのネガティブ要素である鈍重なところを払拭させたばかりか、低回転での太いトルクを見事に活かしている。しかも、燃費がいいのだからこの上ない。
お見事な仕上がり。
997型から991型へ進化した911。見た目以上に中身を進化させている。特に気に入ったのはコースティング機構の搭載。高速巡航時にエンジンを切り離して滑走状態をつくるのはハイブリッド車ばかりだとおもっていたら、そんな技術まで搭載していた。びっくり。要するに、“走り”とともにかなり精緻なところまでECO対策されていた。まさにインテリジェンスを感じる。
マクラーレンがいよいよ始動しはじめた。MP4-12CはこれまでのマクラーレンF1やメルセデスのSLRとはちがい彼ら単独で仕上げた一台。その意味からもモータースポーツ好きにはたまらないはずだ。しかもその仕上がりはイタリアンエキゾチックカーとはまったくことなるオリジナリティ満載の出来映え。スタイリングを含め、なにかをマネしていないところがものすごく好感を得る。アンチイタリアンの方、どうぞ!