メルセデス・ベンツG63 AMGに試乗|Mecedes-Benz
CAR / IMPRESSION
2014年12月11日

メルセデス・ベンツG63 AMGに試乗|Mecedes-Benz

Mercedes-Benz G63 AMG|メルセデス・ベンツ G63AMG

メルセデス・ベンツ G63 AMG試乗記

1979年の初代の発表からこれまで、大きな変更がおこなわれたのは一度きりにもかかわらず、販売台数は衰えることを知らないメルセデス・ベンツ「Gクラス」。そのハイパフォーマンスバージョンであるAMGモデルが、先ごろおこなわれたドイツでのマイナーチェンジにあわせて、従来のG55 AMGからG63 AMGへとかわった。シュツットガルトにて、このG63AMGに試乗した九島辰也氏のインプレッション。

Text by KUSHIMA Tatsuya

つくられつづける、唯一無二の存在

Gクラスは不思議なクルマだ。ゲレンデヴァーゲンというドイツ語で「不整地用クルマ」という意味の名前があり、その愛称で呼ばれることが多い。日本では“ゲレンデ”、海外では“Gヴァーゲン”というように。AクラスからSLまでのラインナップを持つメルセデスで、そんなクルマはほかにない。

しかも、1979年にリリースされた初代からこれまで一度しか大きな変更をおこなっていない。コードネームでいえばW460からW463に変わったのがそれだが、それとてラダーフレームを基本骨格とした設計図はそのまま。大きなところではパートタイム4WDをフルタイム式に進化させたことくらいだろう。

Mercedes-Benz G63 AMG|メルセデス・ベンツ G63 AMG

Mercedes-Benz G63 AMG|メルセデス・ベンツ G63 AMG

そんなモデルだけに近年の噂は「いつ生産中止になるのか?」ということばかり。事実「Mクラス」はその代用としてのプロジェクトだったし、それ以降も生産中止の噂はまことしやかに囁かれつづけた。

だが、その傍らこんな事実もある。33年間で20回“オフロード・オブ・ザ・イヤー”を受賞したこと、販売台数が衰えないことだ。データによると2009年の販売台数が4,300台に対し、2011年は6,600台となる。

まぁ、実際に一年前まで所有していた立場からいわせてもらうと、こいつは一度は乗ってみたいクルマのトップランクに位置する。ほかのモデルでは代用がきかないオンリーワンのところにグッと惹かれる。ワイルドな装いがメンズのハートに火をつけるのだ。

Mercedes-Benz G63 AMG|メルセデス・ベンツ G63AMG

メルセデス・ベンツ G63 AMG試乗記(2)

新開発5.5リッターV8+ツインターボ

前置きが長くなったが、そんなゲレンデが進化した。フロント周りの意匠をかえ、ダッシュパネルのデザインを一新している。そして、それにともないG63 AMGが登場した。今回シュツットガルト近郊で試乗してきたのでそれをリポートしよう。

新型G63 AMGの特徴はエンジンである。AMG製のもっともあたらしい5.5リッターV8+ツインターボが積まれた。これは今回ほぼ同時に試乗した、「SL63 AMG」に積まれるのと同ユニットだ。6.3リッターからダウンサイジングし、CO2排出量の低減と省燃費を考慮したものである。最高出力は544hpで、SL63 AMGの537hpをG63 AMGは超えているから恐ろしい。いったいどれだけこの四角いカタマリを速く走らせたいのか!

Mercedes-Benz G63 AMG|メルセデス・ベンツ G63 AMG

Mercedes-Benz G63 AMG|メルセデス・ベンツ G63 AMG

そしてこのエンジンには「AMGスピードシフト7Gトロニック」が組み合わされる。デュアルクラッチでないのはトルクが途切れるのを防ぐため。オフロード走行やトーイング(牽引)を考えた場合、トルコン式の方が使いやすいのは自明である。

また、このトランスミッションはほかのAMGモデル同様、C(コンフォート)/S(スポーツ)/S+(スポーツプラス)/M(マニュアル)モードに切り替えられる。

個人的にはゆったり走りたいときは「C」を、速く走りたいときは「M」モードでパドルシフトをパンパン叩くのが好きだ。「M」モードはおよそ燃費など考えない走りに最適である。

その分、今回からCモードに「エコ・スタート/ストップ機構」が付いたのは見逃せない。というか、ゲレンデがアイドルストップするのだから驚く。時代が変わればこうなるのか! ということだ。

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メルセデス・ベンツ G63 AMG試乗記(3)

外観のインパクトと内装のモダナイズ

エクステリアの変更点でひときわ目立つのがバンパー。大きな口を開けたことで迫力が増した。ヘッドライト下のLEDは従来型からそのままスライドしたが、このバンパーと組み合わされることで存在感が高まった。

そしてホイールは20インチという大径を履く。しかも、今回はチタニウムグレイに塗られたことで足元が引き締まって見える。もっといえば、その隙間から顔をのぞかせる赤いキャリパーが、こいつがただ者でないことを悟らせる。試乗車には「AMGハイパフォーマンスブレーキ」が奢られていたが、性能と同時に見た目のインパクトがある。

Mercedes-Benz G63 AMG|メルセデス・ベンツ G63 AMG

Mercedes-Benz G63 AMG|メルセデス・ベンツ G63 AMG

とはいえ、今回のエンジン以外の目玉はインテリアにちがいない。ちょっぴり懐かしさもあるメルセデスらしいスイッチ配列のダッシュパネルは様変わりし、なんとナビ用モニターまで付けられた。正直、とって付けた感は否めないが、あると便利なのはいわずもがなだ。

メーターもそう。古典的なアナログメーターとデジタル表示は姿を消し、かなりスポーティに仕上がった。そこだけ写真を切り抜けばスポーツカーに見えるほどだ。

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メルセデス・ベンツ G63 AMG試乗記(4)

かわらないもの

では、走りはどうかというと、この辺はじつは変わっていない。もちろんマックスパワーの上がったことで大きなボディはドーンと加速し、向こうにある電柱がすぐ目の前に迫ってくるような感覚を得る。が、コーナリングなどの挙動はそのまま。いまどき珍しく深いロールをしながらラインをトレースしていく。それにパワステのセッティングもこれまたいまどき珍しいくらい重めでクイックさは微塵もない。要するに操作系の味付けはイメージ通りでこれまでのフィールを踏襲している。

ただ、これには安全にたいするAMGなりのドライバーへの気づかいがあるようにおもえる。というのも、当然シャシーからつくり直せばもっと高出力ユニットに見合った軽快な走りのクルマがつくれるのは確か。が、テーマはあくまでも「キープコンセプト」。もし根本からつくりかえ、デザインが成立しなくなっては、なんの意味もなくなってしまう。

Mercedes-Benz G63 AMG|メルセデス・ベンツ G63 AMG

Mercedes-Benz G63 AMG|メルセデス・ベンツ G63 AMG

そこで、ロール角を深くとることやパワステを重くすることでドライバーに注意をうながしたのだ。これによりコーナリング速度の限界を知ることができるし、急激なダブルレーンチェンジなどしなくなる。直線ならいざ知らず、このハイパワーエンジンをオンロードでガッツリ受け止めるには、この古典的なクルマでは少々厳しい気がしなくもない。

そうはいってもやはりゲレンデはゲレンデ。所有すべき理由はいくつもある。なんたってフロントのデフまでスイッチひとつでロックできるクルマはそうないだろう。それに外ヒンジのドアという無骨さも、見てるだけでうれしくなる。

話によると、今後「G65 AMG」も追加されるそうだ。もちろん、それとて需要があってのこと。さらなるパワーを求める輩が世界中にはいるということだ。

spec

Mercedes-Benz G63 AMG|メルセデス・ベンツG63 AMG
ボディ|全長 4,453 × 全幅 1,760 × 全高 1,951 mm
ホイールベース|2,850 mm
車両重量|2,550 kg
エンジン|V型8気筒 ツインターボチャージャー付
排気量|5,461 cc
ボア × ストローク|98.0 × 90.5 mm
圧縮比|10.0 : 1
最高出力|400 kW (544 ps) / 5,500 rpm
最大トルク|760 Nm / 2,000–5000 rpm
トランスミッション|AMGスピードシフトプラス 7G-TRONIC
最低地上高|232 mm
燃費|13.8 ℓ/100 km(NEDC combined)
CO2排出量|322 g/km
0–100 km/h加速|5.4 秒
最高速度|210 km/h(リミッター作動)
(註:すべて本国の数値)

           
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