ベントレー コンチネンタルGTスピードに試乗|Bentley
Bentley Continental GT Speed|ベントレー コンチネンタルGT スピード
待ち望まれた怪物
あたらしくなったコンチネンタルGTスピードを試す
2003年の登場以来、巨体をものともしないスポーツラグジュアリークーペとして進化をつづける「コンチネンタルGT」は、本物のレーシングカーブランドとしてのベントレーを愛するファンの期待に応えつづけ、2011年、2代目へと進化を遂げた。その2代目「コンチネンタルGT」に、ついに追加された、ハイパフォーマンスバージョン「コンチネンタルGT スピード」。最高出力625ps、最大トルク800Nm、0-100km/h加速4.2秒、最高速度330km/hという怪物に九島辰也氏がミュンヘンで試乗した。
Text by KUSHIMA Tatsuya
レースならばお手のモノ
今年のパリモーターショー 2012でマニアの熱い視線を集めたクルマがある。ベントレーブースに置かれた「コンチネンタルGT3コンセプト」だ。見慣れたコンチネンタルGTをベースにしたそれにはとてつもなく大きなリアウイングが取り付けられ、車高は指一本も入らないほど落ちていた。中身もそう。スープアップされたパワートレーンと極限まで削ぎ落されたインテリアからはワークスとしての“ホンキ”をうかがわせる。戦闘的な趣のそれは、まさにレーシングマシンそのものだ……
ここ数年レーシーなイメージの薄いベントレーだが、今回のGT3コンセプトの登場で久々に覚醒したようにおもえる。もともとがレース畑で育ったブランドだけに、いざとなればお易い御用といったところなのだろう。
ただ、こうした流れを後押ししたのはマーケットであることは否めない。先代の「コンチネンタルGT」のときから、そのハイパフォーマンスバージョンであるGTスピードが販売の半数を占めていたからだ。つまり、カスタマーが欲しているのはより高い次元の走りを可能とするクルマ。そうした強い要望があって、GT3マシンは生まれたといえる。
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待ち望まれた怪物
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アウトバーンでも足りない?
さて、そのGTスピードだが、母体となるコンチネンタルGTが進化したことで、こちらもあたらしくなった。エンジンパワーがさらに上がり、軽量化も進められる。素材を見直すことで65kgのダイエットに成功した。結果、トップスピードは330km/hという、とてつもないものとなった。もはやアウトバーンとてめったに試すことのない領域である。
お馴染み6リッターW12のエンジンは625psに達する。これでV8の507ps、スタンダードW12の575psと3つのバリエーションが揃ったことになる。組みあわされるトランスミッションはZF製8段AT。かなりのクロスレシオで、早めにシフトアップすることで省燃費に役立てている。
駆動方式はこれまで通りAWDとなる。フロント40、リア60の駆動配分だ。スタンダードモデルも現行型からそうなった。先代は前後50:50だったが、GTスピードの40:60の配分がバランスがいいということでそれを取り入れることにした。正直スピードが上がってくるとその方がナチュラルに感じる。今回もそうだが、先代のGTスピードをスペインのモンテビアンコサーキットで試したときにそれを強くおもった。
このほかのオリジナル装備は、フロントバンパー、リアランプベゼル、エキゾースト、21インチアルミホイール、それにペダル類やスカットプレートなど。ボディカラーも種類を増やした。まぁ、その辺はビスポークの国のシロモノだけにどうにでもなるのだろう。
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250km/hでも気づくまい
では、実際に動かしてみるとどうなのか。まずおもうのは、ボディがより堅牢になっていること。ステアリング操舵にたいして、フロントからリアエンドまでがひとつのカタマリとしておなじ動きをする。特に高速域ではそれが如実で、ダウンフォースの効いたボディがピタリと納まりながら挙動を安定させた。
こうしたつくり込みはさすがで、かなりスピードが上がっても乗員が不安を感じることはない。パッセンジャーはスピードメーターを覗き込まない限り、250km/hで巡航していても気づかないだろう。
これはエアロダイナミクス的にクルマの裏側をデザインしたり、10mm車高を落としたり、さらにはアンチロールバーやサスペンション取り付けまわりに手を入れた結果なのだが、同時に快適な乗り心地を生み出していることも見逃せない。
ダンパーは減衰圧の調整で4段階に固さをコントロールできるが、一番スポーツ寄りにしても最低限の快適性は見事にキープされるのだ。バンピーな路面でもサーッとフラットなフィーリングはさすが。このときも“ベントレーならでは”を感じた。275/35ZR21といったタイヤサイズを忘れさせるほどの気持ちよさである。
このほかではブレーキに驚いた。試乗車はオプションのカーボンセラミックブレーキが取り付けられていたが、これがどんな速度域からも強いGフォースを発生させながらクルマを思い通りに減速する。熱放射の効率がいいのだろう。ワインディングでかなり急激なブレーキングを頻繁に繰り返しても、踏みはじめの感覚はいつも一定だった。これも感動に値する。
そんなGTスピード。冒頭にも記したように2008年にリリースされた先代から、そのボリュームはGTシリーズ全体のほぼ半分を占めている。その意味じゃ決してニッチなモデルとは呼べない。普段使いも十分できるスポーツマシンの恩恵は、その層の人にはことのほか広く知られているようだ。
Bentley Continental GT Speed|ベントレー コンチネンタル GT スピード
ボディサイズ|4,806×1,944×1,394mm(ミラーを含めると全幅2,227mm)
ホイールベース|2,746mm
トレッド 前/後|1,667/1,663mm
重量|2,320kg
エンジン|5,998ccW型12気筒ツインターボ
最高出力| 460kW(625ps)/6,000rpm
最大トルク|800Nm/2,000rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|4輪駆動
最高速度|330km/h
0-100km/h加速|4.2秒
サスペンション 前|4リンクダブルウィッシュボーン エアサスペンション アンチロールバー付き
サスペンション 後|トラペゾイダルマルチリンク エアサスペンション アンチロールバー付き
タイヤ 前/後|275/35ZR21
燃費|14.5ℓ/km(EUサイクル複合値)
CO2排出量|338g/km