ベントレー コンチネンタル GTC V8に試乗|Bentley
BENTLEY CONTINENTAL GTC V8|ベントレー コンチネンタル GTC V8
開けてよし閉めてよし
ベントレー コンチネンタル GTC V8に試乗
ベントレー「コンチネンタル GTC V8」を駆り、紅葉深まる山梨県八ヶ岳をオープンエアドライブ。12気筒とはひと味ちがうV8サウンドを響き渡らせ、九島辰也がレポートする。スペックだけでは計れない、ベントレーの世界がそこにはあった。
Text by KUSHIMA Tatsuya
Photographs by NAITO Takahito
V8 + オープントップ
森林浴である。それはまるで朝もやの林道を歩いたときの、心地よい木の香りそのものであった……
そんな気分を抱いたのはなんと工場の一角。英国クルーにあるベントレーの生産ラインでのことだ。インテリアに使われるウッドパネルを乾燥させる部屋は、まさに森林浴でもしているような香りに満たされる。これまでいくつもの自動車工場に足を踏み入れてきたが、こんな体験はしたことがない。
「コンチネンタル GTC V8」に乗り込んだとき、そんなことをおもい出した。ダッシュボードに貼られるTamo Ash(タモアッシュ)のウッドパネルが目に飛び込んできたからだ。建材にも使われるそれは日本でも見ることができる樹木。一般的に多いウォールナットよりも色が薄い分、室内の表情を明るくする。まさにベントレーらしくエレガントなインテリアをつくる素晴らしい演出だ。
オープントップのコンチネンタル GTC V8は、今年3月のジュネーブモーターショーで発表されたものだ。年の頭のデトロイトモーターショーでクローズドの「コンチネンタル GT V8」がリリースされ、それにつづいた。矢継ぎ早にターンテーブルに載ったことを考えれば、ほぼ同時に開発がおこなわれたのだろう。W12モデルでも人気のGTCだけに、その活躍ははじめから期待されていたにちがいない。
よってパワートレーンを含めスペックはGTと変わらない。サイズもそうだし、エンジンもそうだ。4リッターV8ツインターボは最高出力507psを発揮する。W12が575psだから、そこはしっかり差別化されたことになる。とはいえ、もはや500psをも越えると、アウトバーンの速度無制限エリアかレースウェイにでも持ち込まない限りなかなかちがいがわかるものでもない。スーパースポーツカーであることに異議はないだろう。最高速度301km/h、0-100km/h加速5秒は立派な数値だ。
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ベントレー コンチネンタル GTC V8に試乗(2)
おもったとおりに反応する
ただ、乗り味にかんしていえば、W12モデルとはことなる味付けがほどこされる。電子制御バリバリのW12搭載車はどんな状況でも挙動を乱さない。コーナーではロールは抑えられ、乱暴なアクセルワークに対しても精緻なエンジン出力コントロールがおこなわれる。これにたいしGT V8は、もう少しドライブフィールがしっかりドライバーに伝わる。たとえば、ロール角はW12より深く、加速もアクセルにたいしリニアさが増す。
これはどういうことかというと、運転が楽しく感じられる。ドライバーは操り感を強く持ち、クルマもそれにたいし素直に応答する。ステアリングを持つ手の握りこぶし一個分ずらしたとき、クルマの動きはおもったとおりに反応するから楽しい。
この辺の感想を開発陣に直接ぶつけたわけではないが、かなり意図したチューニングにおもえる。というのも、このクラスの競合車はポルシェ「911ターボ」や「AMG」といった強い個性を持った面々。ドライバビリティとも表現される運転する“味”というのも、クルマを選択する必須条件となることは、いわずもがなだ。
ちなみに、V8モデルの開発目的はあたらしいマーケットの創造と燃費の低減にある。2008年からアウディと共同開発したこのV8ユニットはそれに大きく貢献する。
なんたってこいつは可変シリンダー機構搭載。パワーを必要としないときは4気筒を休止し、燃料噴射を削減するシステムを持つ。新採用のZF製8段ATやボディの軽量化、低抵抗タイヤを含め、W12比で約40パーセントも燃費を低減したのだからお見事だ。
GTC対比でいえば、W12の燃費は14.9ℓ/100km、V8は10.9ℓ/100km。これはヨーロッパ式の表記で、100km走るのに何リッター必要かというものを表す。まぁ、結論からすれば改善のほどは一目瞭然。その差は燃料4リッター分ということになる。
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ベントレー コンチネンタル GTC V8に試乗(3)
赤く塗られた“ウィングB”
エクステリアのW12とV8のちがいは、V8はグリルのメッシュ部分が黒くなったこと、エナメル製“ウィングB”バッジのBの部分が赤く塗られていること、それとバンパーの形状がことなることだ。そして後ろへまわると2本のエキゾーストテールパイプが8の字を横にしたカタチになっているのが目に入る。
これはちょっとしたシャレだろうが、うまい具合にV8であることを主張する。後ろ姿で見分けるのにいいアクセントであることは間違いない。
ところでGTCならではのオープントップだが、これはいうまでもなく電動フルオープンタイプが採用される。スイッチひとつでソフトトップ収納という一連の動作がおこなわれる。低速であれば走行中も可能なので、雨の降り出しでも路肩にクルマを止めることなく速度を落として屋根を閉じることができる。
BENTLEY CONTINENTAL GTC V8|ベントレー コンチネンタル GTC V8
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ベントレー コンチネンタル GTC V8に試乗(4)
響き渡るV8サウンド
また、オープントップによるボディの補強はおこなわれ車両重量は重くなっているが、それによる運動性能の低下は見当たらない。逆にW12よりドライバビリティが高いためゴーカートフィールさえ得られる。とにかく、ワインディングを長く走ったが、だんだんとクルマが小さく感じられてきた。無論それだけおもい通りに操れるということである。
そんなルーフは3層になっているが、これが閉めたとき見事に外界を遮断する。高速域でもバタバタと風に叩かれることなく、メタルトップのような剛性を感じさせた。試乗時も閉めたあとしばらく走ったが、それに慣れるとオープントップであることを忘れてしまったほどだ。
ということで、開けてよし閉めてよしのGTCだが、やはり醍醐味はオープンエアモータリング。そのときに響き渡るV8サウンドのチューニングも開発陣の一日の長を感じる。
冒頭に記したようにエレガントな演出もそうだが、走って楽しいのがベントレー本来の性格。リニアな加速とそれに連動するエキゾーストノートは本当に気持ちがいい。エンジニアたちはその辺を十分わきまえてこのクルマを開発しているのがわかる。なるほど、じつにお見事な仕上がり、であった。
BENTLEY CONTINENTAL GTC V8|ベントレー コンチネンタル GTC V8
ボディサイズ|4,820 × 1,945 × 1,400 mm
ホイールベース|2,745 mm
トレッド 前/後|1,665 / 1,660 mm
重量|2,530 kg
エンジン|3,993 cc V型8気筒ツインターボチャージャー
最高出力| 373 kW(507 ps)/6,000 rpm
最大トルク|660 Nm/1,700 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|4WD(駆動配分 フロント40:リヤ60)
最高速度|301 km/h
0-100 km/h加速|5.0 秒
タイヤ|275/40ZR 20
燃費|10.9 ℓ/100 km(EUサイクル複合値)
CO2排出量|254 g/km
トランク容量|260 リットル
価格|2,380 万円