BENTLEY Continental GTC|ベントレー コンチネンタル GTC 新型に試乗
CAR / IMPRESSION
2015年2月27日

BENTLEY Continental GTC|ベントレー コンチネンタル GTC 新型に試乗

BENTLEY Continental GTC|ベントレー コンチネンタルGTC

よりエレガンスを増した新型GTCに試乗(1)

2011年9月におこなわれたフランクフルトモーターショーで、ベントレーから2代目「コンチネンタル GTC」が公開された。よりハイパフォーマンスとなったW12気筒エンジン搭載し、シャープさをえたボディデザイン、さらにはコンバーチブルならではの装備、機能も充実させたこのニューモデルに、クロアチア・プーラにて、ジャーナリスト 島下泰久氏が早速試乗してきてくれた。氏の試乗インプレッションをお送りする。

文=島下泰久

多様な国籍のチームによるデザイン

ロンドン南西部にあるチャーター/ビジネスジェット専用のファンボロー空港からチャーター機に乗り込み、3時間ほどのフライトを経て降り立ったのはクロアチア西部のプーラであった。ここで新型ベントレー コンチネンタルGTCの国際試乗会が開催されたのである。

この新型GTC、ひと目見ただけで、エレガンスを増したその姿に釘づけになってしまった。新型コンチネンタルGTとおなじく、低いボンネットや横基調のテールランプ等などによって先代よりもロー&ワイド感を強調したフォルムが、重厚感が前に出ていた先代よりも繊細な美しさを演出している、ということだろうか。あるいは新型のフォルムは、先代以上にGTCのことを意識して描かれていたのかもしれない。

そのスタイリングは、33歳のロシア人とドイツ人のハーフという若いデザイナーによって描かれた。現在ベントレーのデザインチームにはイギリス、デンマーク、韓国……と多様な国籍のメンバーが集まっているという。

さまざまな背景をもったメンバーたちが、それぞれの解釈でブリティッシュネス、そしてベントレーらしさを描き出すからこその瑞々しさ。筆者に用意された試乗車のマゼンダという強烈なボディカラーが難なく溶け込んでいたのも、すんなり納得できた。

BENTLEY Continental GTC|ベントレー コンチネンタル GTC 新型に試乗|02

さらに強化された6リッターW12気筒エンジン

いっぽう、それでもブレないものがあるのは、まさにブランドの強さと言うほかない。メカニズムにかんしては、昨秋登場の新型コンチネンタルGTにほぼ準じている。

6リッターW12気筒ツインターボエンジンは最高出力が560psから575psに、最大トルクが650Nmから700Nmにそれぞれ強化されており、組みあわされる6段ATにはコンチネンタルスーパースポーツ譲りのクイックシフト機能、2段連続シフトダウンなどの機能が盛り込まれた。フルタイム4WDシステムの前後駆動力配分も、50:50から40:60へとあらためられている。

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フロントシートには首もとをあたためるネックウォーマーを内蔵

やはりコンチネンタルGTとおなじく車輛重量の軽減も図られている。2,495kgという数値は先代より45kgのマイナス。クーペとは175kgの差があるが、もともとの車重を考えれば、増加分はそれほど大きいとは言えないだろう。重量増のおもな内訳は、ボディ各部の補強にポップアップ式ロールバーなどの安全装備、そして新設計された3層構造のソフトトップとその開閉機構といったところである。

ソフトトップの開閉所要時間は約24秒。うれしいことに約30km/hまでの速度なら走行中にも開閉できる。オープン時の快適性を高めるアイテムとして、ネックウォーマーが用意されたこともお伝えしておこう。これはフロントシート内蔵のヒーターから首筋に温風を吹き出すもので、寒い季節の走行ではおおいに役立ってくれるだろう。まずはトップを上げたままで走り出す。ほどなく感じられたのは乗り心地がすばらしく良いということだ。

BENTLEY Continental GTC|ベントレー コンチネンタルGTC

よりエレガンスを増した新型GTCに試乗(2)

ミュルザンヌに似た、あたたかみのあるテイスト

ボディは堅牢そのもので、波打ち、ざらついた舗装に差しかかってもビシッとしたまま。そのうえでサスペンションがしなやかに動いて、あらゆる入力をきれいに減衰してしまう。内装が軋んでざわつくことも皆無。静粛性も高く、とにかく快適に過ごせる。交通量の少ない新設の高速道路では最高速度の7割近い結構なペースまで試すこともできたのだが、その印象は変わらなかった。

ソフトトップはしっかりしていて一切バタつかず、オープンカーにしては良くできているという程度のレベルではなく、オープンカーであることを完全に忘れてしまうほどだった。けっして誇張して言っているのではない。ではソフトトップを開けたらどうなのかと言えば、こちらも好印象には一切水を差されることはなかった。むしろ、さらに深く感心させられてしまったのだ。なにより目を見張ったのは、段差を超えるなどしてもフロントウインドウやピラーが一切、揺さぶられないこと。ハンドリングや乗り心地にも感知できる変化はない。あいかわらずステアリングはしっとりとした手ごたえを返し、サスペンションもしなやかにストロークして、上質な乗り味を満喫できる。

ふと感じたのは、こうしたフィーリングの随所で、ミュルザンヌに似た、あたたかみのあるテイストが強まってきているということだ。従来よりも確実に、ベントレーらしい味わいは強まっている。

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2,495kgという車重を軽がると引っ張るハイトルク

いっぽう、新世代ベントレーの特徴であるW12ユニットも、さすがの大トルクのおかげで増加した車重にたいしても物足りなさなどを抱かせない。軽く踏み込んだときの繊細な回転上昇と力強いトルクの立ち上がりは、やはり12気筒ならでは。依然として、豊潤な魅力を味わわせてくれる。見てくれ優先でウインドディフレクターを装着しなかったので、風は室内にそれなりに巻き込んできた。しかし、それほど不快と思わなかったのは、この上質な乗り味のおかげだろう。トップを上げているときよりも存在感を増したW12ユニットの排気音をBGMに、陽光と風と戯れて走る時間は、とても贅たくなものだった。

新型はぜひ、これまでオープンにはそれほど関心のなかったひと、たとえばGTのオーナーにも試してほしい。それだけ失うものなく、得るのはすてきなものばかりなのだ。これを味わったらつぎはGTCにしようと思うひと、きっと少なくないにちがいない。

BENTLEY Continental GTC|ベントレー コンチネンタルGTC

よりエレガンスを増した新型GTCに試乗(3)

ごく近い将来、コンチネンタルシリーズにV8モデルを追加予定

さて、試乗のあとにはポルシェ社の技術担当重役から今年1月にベントレー社のCEOに就任したDr.ヴォルフガング・デュルハイマー氏に話をうかがうことができた。これからのベントレーは、果たしてどのように進化していくのか。まずきいたのは、これからのパワートレインの話だ。

「12気筒エンジンはコンチネンタルシリーズのアイコンですから今後も継続します。開発もつづけていきます。V8はより手ごろなモデルとして展開されるでしょう」

ベントレーはごく近い将来、コンチネンタル系に4リッターV8直噴ツインターボエンジンを導入する。

これにはアイドリングストップや気筒休止といった燃費向上技術が盛り込まれると言われているが、いっぽうでW12ユニットは、大きな進化を果たしていないのが現状だけに、あるいはフェードアウトの運命にあるのではないかと思っていたのだが、それは明確に否定された。開発がつづけられるということは、直噴化やアイドリングストップシステムの搭載なども検討されているのだろう。

BENTLEY Continental GTC|ベントレー コンチネンタル GTC 新型に試乗|08

「その方向で進化させていきます。排気量は縮小しません。ミュルザンヌで使っている気筒休止のような技術もありますから」

さらに、将来的にはミュルザンヌへのW12の搭載も検討されているという話まで飛び出した。

「とくに私たちにとってあたらしい市場のユーザーは、ミュルザンヌにも12気筒を望む声が大きいのです」

そのほかのパワートレインについても以前より積極的になっているように見える。

昨今噂になっていたベントレー製SUVがまもなく誕生か!?

「ハイブリッドも、大排気量エンジンを積みながら、いかにサスティナビリティを確保していくかという観点で、将来に向けて重要だと考えています。現状のシステムを飛び越えてプラグインハイブリッドからの導入となるでしょう。2モーターですね。また将来は、ディーゼルについても考えていく必要があると思っています。とくにSUVをつくっていくのであれば」

そう、図らずもデュルハイマーCEO自身の口から、ききたかったSUVの話が飛び出した。つぎにベントレーからもたらされる衝撃は、おそらく噂どおりのSUVということになりそう。

一体どれだけラグジュアリーな世界を見せてくれるのか……。新体制でますます意気上がるベントレー。今後も目が離せそうにない。

BENTLEY Continental GTC|ベントレー コンチネンタル GTC
ボディサイズ|全長4,806×全幅1,943×全高1,403mm
ホイールベース|2,746mm
車輛重量|2,495kg
エンジン|6リッターW12気筒ツインターボ
最高出力|575ps(423kW)/6,000rpm
最大トルク|700Nm/1,700rpm
トランスミッション|6段AT
燃費|16.5ℓ/km
CO2排出量|384g/km

           
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