最新にして最後のテスラ ロードスターをテストドライブ|TESLA
TESLA Roadster|テスラ ロードスター
電気自動車の金字塔
テスラ ロードスター 最終モデルに試乗
IT系企業をバックボーンに、シリコンバレーに拠点を構える異色の自動車会社「テスラモーターズ」。現在は、モデルバリエーションを拡大しつつあるテスラの第1弾モデル「テスラ ロードスター」は、いまや電気自動車の金字塔的存在といえるだろう。この世界中の注目をさらった限定2,500台のEVスポーツも、ついに残り台数あとわずかとなった現在、OPENERSでは、その最終モデルに試乗する機会を得た。九島辰也氏がナビゲートする。
Text by KUSHIMA Tatsuya Photographs by NAITO Takahito
シリコンバレーの午後に
テスラと聞いておもい浮かぶのはシリコンバレーである。このクルマに投入された最先端技術とベンチャーキャピタルとしての成り立ちが、そこに点在するメジャーブランドとイメージをともにする。アップル、ヤフー、インテル……先月ここに訪れたときも偶然グーグルの本社を見つけた。ルート101を北上すればサンフランシスコまでひとっ走りという好立地。ダウンタウンでパワーランチも可能だ。きっとボードメンバーともなればハーフムーンベイあたりのリンクスで平日からティーオフしていることだろう……。
そんなテスラは2003年に誕生した若い会社。翌年製品開発をスタート。2006年「ロードスター」のプロトタイプを発表し、2008年に生産開始、ロサンゼルスをはじめ17の直営店を展開している。
日本での発売開始は2010年。この年の5月にまずインターネットでの販売がはじまり、10月に青山ショールームをオープンさせた。その日、創業者のイーロン・マスク氏が来日したのもニュースだが、豊田章男氏が同席したのも印象深かった。アメリカにおける工場の売買でこの二者はすでに深い関係にあったが、それをメディアを通して日本のマーケットにアピールするのはまたちがった話。その意味じゃテスラは信頼性を上げ、トヨタは先進性をアピールするいい機会だったとおもう。
TESLA Roadster|テスラ ロードスター
電気自動車の金字塔
テスラ ロードスター 最終モデルに試乗(2)
テスラ ロードスター 最新にして最後の2012年モデル
さてさて、そんなテスラのロードスターに乗った。お馴染みのロータス「エリーゼ」をベースに開発されたシャシーに、バッテリーパックとモーターを積んだ、ゼロエミッション電動スーパーカーである。しかも、こいつは最新2012年モデル。もともと、このロードスター自体の販売台数は発表当初から2,500台限定とされていたのだが、北米ではすでに昨年に販売を終了。ヨーロッパと日本を含むアジアパシフィックでも残りわずかときいている。在庫がはけ次第で終わりというわけだ。
特徴は3つのボディカラーと改良されたエアコンシステム、キセノンヘッドライト、それと2つのタイプのモバイルコネクター(充電ケーブル)などなど、各種アップデートがほどこされている。撮影車のボディカラーはマグマオレンジ。スーパーカー然とした雰囲気がクルマ好きの心を揺さぶる。
なぜ限定車が登場したというと、このロードスター自体の販売が終了するからだ。今後はすでに発表されているように、4ドア5シーターの「モデルS」が売り出されることになっている。
これまでのスポーティなイメージを残した4ドアセダンが、またあらたな台風の目になるのは必至だろう。昨年末からの予約注文はすでに6,500台以上。年間2万台の生産規模でそれに対応する。もっといえば、その先にはSUVプロジェクトも見え隠れする。「モデルX」と称するそれは、デュアルモーターでAWDになるというから、そちらも楽しみだ。
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テスラ ロードスター 最終モデルに試乗(3)
南へ75km ロードスターを味わう
それはともかく、久々にステアリングを握ったロードスターは心地よく元気に走りまわった。コースは都内から高速道路を使って神奈川方面へ。横浜横須賀道路から葉山の南佐島へ向かった。というのも、そこにはテスラ用の充電システムが設置される「Nowhere but Sajima」という貸別荘があるから。
もちろん、持続可能距離が400km近いテスラにとって佐島往復など朝飯前だが、素敵な貸別荘を眺めるのもこのクルマを動かす大きな動機付けになるのは、いわずもがな。1,000万円オーバーのスーパーカーにモダンデザインの別荘はピッタリはまる。
では、実際にロードスターを動かした印象だが、スタートからあいかわらずのエレクトリックパワーが発生し、クルマをグイグイ前へ押しだす。アクセルにたいするレスポンスは当然いいのだが、うまくリニアに稼働するのは感激だ。内燃機関に慣れている我々に違和感を与えないのはさすがである。また、ブレーキの信頼性が高いのも注目ポイント。400Nmのトルクをグググッと押さえこむにたりるストッピングパワーをもつ。しかもフィーリングがかなりナチュラルなのがいい。
ハンドリングもロータスのイメージを壊さない軽快さを持つ。この辺はテスラの実験部スタッフがかなりこだわったのだろう。フロントの軽さと相反する接地感がいい時点で折り合いをつけている。じつに気持ちいい。ただし、この絶妙なハンドリングが生まれるのはある程度スピードに乗ってから。駐車場などではいまどき珍しい重ステに苦労する。今回は撮影でこまめに動かしていたこともあり、それが少々気になった。
それと、速度域が上がってからのハンドリングはいいのだが、そこでレーンチェンジを繰り返していると今度はボディが少し重く感じはじめる。イメージ的にはもっとヒラリヒラリと軽快なフットワークだったが、そこまでは期待通りに動かなかったのが正直な感想だ。
きっとそこはバッテリーパックの重さが関係しているのだろう。ある速度域ではステアリング操作にたいし、ほんの少しボディの追従が遅れる。ただ、それと同時に予想以上にそれを低い位置に搭載しているのはわかった。重心とロールセンターがかなり低いのはふりまわせばふりまわすほど実感する。つまり、高速域でもワインディングでも安定感は絶品なのだ。
DATA
Nowhere but Sajima
神奈川県横須賀市佐島3-10-8
問い合わせ|Nowhere resort
Tel. 03-5785-2320
http://www.nowhereresort.com
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テスラ ロードスター 最終モデルに試乗(4)
オンリーワンのEV
およそ350kmの航続可能距離をしめすデジタルメーターは、いろいろ走りまわって佐島に着く頃には100km強減っていた。合間に撮影を含んだため、それがそのまま日常的な数値になるとは限らないが、それでも残り200km以上あればストレスは皆無。この辺は国産EVとちがうところだ。まぁ、価格が大きくちがうのと使用目的が開発の段階からことなるのだから、そのまま比べても意味はないが。
それにしてもテスラ ロードスターはユニークなクルマだ。最先端のEVをこれほど自由に仕上げたのは英断といいたい。きっと何年経っても振り返って賞賛されることだろう。それにバッテリーに大きなブレークスルーがない限り走行面での価値も高い。ロングドライブをストレスなくスポーティに走れるEVは、いまもってオンリーワンだと実感させられた。
TESLA Roadster Sport 2.5|テスラ ロードスター スポーツ 2.5
ボディサイズ│全長3,941×全幅1,851×全高1,126.5mm
ホイールベース│2,351mm
車輌重量|1,253kg
モーター│3相4極交流誘導モーター
バッテリー容量|56kWh(リチウムイオンバッテリー)
最高出力│215kW(288ps)
最大トルク│400Nm
駆動方式|MR
サスペンション|ダブルウィッシュボーン
ブレーキ|ディスクブレーキ
最高速度│201km/h
0-100km/h加速|3.7秒
航続距離│394km
CO2排出量│0g/km
価格|1,481万5,500円
テスラ ジャパン
Tel. 03-6890-7700
http://www.teslamotors.com/jp/