“モーター”ショーの向かう先|IAA 2017
IAA 2017|フランクフルト モーターショー 2017
“モーター”ショーの向かう先
次はフェードアウトか「有人ドローン館」か
フランクフルト モーターショーの現地に足を運び、現地の熱と報道を肌で感じた大矢アキオ氏。
市販モデルの傾向はもとより、俯瞰してみたとき見えてくる、モーターショー自体の未来についての考察。
Photographs by Akio Lorenzo OYA / Mari OYAText by Akio Lorenzo OYA
今年はiPhoneにはかき消されなかったが
フランクフルト モーターショーにおける過去数回のライバルは、ずばり「アップル」であった。
具体的には彼らが、ショーとほぼ同時期に大西洋の向こうで催す新製品発表会だ。
メディアの多くは、たとえ夏中にメーカーが配信するコンセプトカーや新型車のティザー画像を並べ立てていても、いざ新しいiPhoneが発表されると一気にクルマの話題はトーンダウンしてしまうのが常だった。
話題性という観点でアップルの新製品は、わずか数機種でフランクフルトの200台を超えるプレミア車を一気にかき消してしまう。それだけ“破壊力”をもっていたのである。
いっぽう今年2017年、欧州メディアは意外にもフランクフルトを取り上げつづけた。
背景の一つにはディーゼルエミッション不正が社会問題に拡大したなか、各メーカーの電動化戦略が注目されたことだ。もう一つはiPhone8およびXが、ほぼ予想どおりのスペックだったことがあろう。
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変わらず盛況のSUV
市販車、もしくは市販を前提としたコンセプトカーのトレンドは、依然としてSUVである。最も積極的だったのはフォルクスワーゲン グループだ。
中核をなすフォルクスワーゲンブランドは、かねてから噂のスモールSUV「T-Roc」を公開した。スペイン法人のセアトも同じBセグメントのSUV「アローナ」をショープレミアした。
ヨーロッパでは10年ほど前大型SUVがトレンドとなった。しかし、いざ普及してみると、ドライバーのあいだでは旧態依然とした大都市のパーキングや歴史的旧市街の狭い街路での扱いにくさがネックとなった。数年前までつづいた燃料高騰もユーザーのフラストレーションを増大させた。
そうしたシチュエーションを汲み取った日本・韓国ブランドのコンパクトSUVは、近年大きな成功を収めた。2016年秋に発売されたアウディ「Q2」の販売も好調だ。ゆえに、Q2の姉妹車であるT-Rocやアローナもヒットはほぼ間違いなかろう。
いっぽうポルシェは、3代目の「カイエン」を発表。こちらはプレミアムSUV市場における地位をより強固にすることを狙う。
新たに装着された「アダプティブ ルーフスポイラー」は、250km/hからのフルブレーキングで、非装着車と比較して最大2メートル手前で停止する。
また同車の車載電源は48ボルトが搭載されている。それはより高度なマルチメディア対応や、各部のヒーティングシステムの効率化が実現できる。同時に、ワイヤーのケーブル径を小さくできるので軽量化に貢献できる。そのためドイツのメーカー/サプライヤーが普及を推進している。
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モーターショーの未来を考えると
さて、第67回フランクフルトモーターショーの入場者数は?
冒頭のメディアにおける露出とは裏腹に、入場者は前回比約12万人減の81万人にとどまった。2015年東京モーターショーと同水準にまで落ち込んだことになる。
ショー開幕2日後の9月26日、イギリスではあの家電メーカー、ダイソンが独自の電気自動車開発計画を発表した。
また同じ日、前回記したダイムラーが出資するベンチャー企業ヴォロコプター社のドローン式電動フライングタクシーは、ドバイで30分もの試験飛行に成功した。
モーターショーという存在そのものが近い将来フェードアウトを余儀なくされるのか、それとも異業種参入組に「有人ドローン&空飛ぶクルマ パビリオン」も加わって再び活気づくのか。
かなりスリリングな展開になってきた。