3代目になった新型MINIを試乗する|MINI
Car
2015年1月14日

3代目になった新型MINIを試乗する|MINI

MINI Cooper|ミニ クーパー
MINI Cooper S|ミニ クーパー S

変化を感じさせない変化

3代目になった新型MINIを試乗する

昨年秋に開催された東京モーターショーでワールドプレミアを飾った新型「MINI」を、中米・プエルトリコで初ドライブ。試乗したモデルは、新開発の1.5リッター3気筒エンジンを搭載する「クーパー」と、2リッター4気筒「クーパーS」の2台。3代目へと進化を遂げた注目のニューモデルを九島辰也氏がリポートする。

Text by KUSHIMA Tatsuya

新型に対する期待

クラシックMINIの時代から日本にはMINIファンが多いことは有名だ。90年代後半、当時の生産台数のおよそ半分がこの国で消費されていたという逸話があるほどで、あの頃、英国の「CAR」という自動車誌に、そんなコラムがあったのを記憶している。さしずめ“不思議の国、MINI好きニッポン!”ってところだろう。

個人的にもこれまで「クラブマン」や「クロスオーバー」に乗ってきた。それにクラシックMINIをクラシックカーイベントで走らせたこともある。ご多分に漏れないMINI好きだ。その経験からも新型に対する期待は持っている。言葉にするなら「変化を感じさせない変化」だ。

今回3代目となった新型に乗って感じたのは、それが実現されたことだった。きっとBMW開発陣も相当悩んだにちがいない。どこまでどう変えたらいいのか……。ただ、それはおおよそ予想が付いていた。

昨年7月、ミュンヘンで披露された新型のデザインスタディ「ミニ ビジョン」を見たとき、「どこが変わったの?」と感じたからだ。いま考えると、それがひとつの市場調査だったかもしれない。変えすぎないことへの反応をメディアの顔色から伺っていたのだろう。

それじゃまったく変化がないのかと言えばそうではない。クルマの中身もそうだが、明らかに彼らのマーケットに対するコミュニケーションは変わった。これまでBMWはMINIをボーダーレスと考え国籍を伏せてきた。「英国製!」とうたっても、「中身はBMW製だろ」と返されるからだ。

が、今回彼らは「MINIは英国で生まれた」という事実を前面に押し出した。そしてさらに、「技術はBMW製である!」と明言している。その意図にかんして特に説明はないが、BMW MINIになって約10年。あらたな時代へとさしかかった気がする……。

では話を新型MINIの中身へと移そう。

MINI Cooper|ミニ クーパー
MINI Cooper S|ミニ クーパー S

変化を感じさせない変化

3代目になった新型MINIを試乗する (2)

おなじパーツはひとつもない

写真からもわかるように、その見た目の変化は少ない。テールランプが大きくなっていたり、ヘッドライトの角度が寝ていたりするが、全体的な印象はそのままだ。「マイナーチェンジ?」といっても文句は出なさそうである。それでもデザイナーに言わせれば、フロントの六角形のグリルがクラシックMINIの時代にかなり近づいたなど、こだわりは散りばめられるようだ。

とはいえ、中身はまったくのオールニュー。フロアパネルから足回り、パワートレーンまで一新した。開発陣はおなじパーツはひとつもないとまで豪語する。つまり、多額の投資がおこなわれたわけだ。

ただ、そこには別の理由もあった。昨年コンセプトカーとして発表され、今年のジュネーブショーで正式なプロダクションモデルとして披露されたBMW「アクティブツアラー」とのシャシーフレームの共有化が噂されている。アクティブツアラーはBMW初のFF車で、メルセデス・ベンツ「Bクラス」あたりをライバルとするモデルだ。MINIだけでなくBMWブランドでもこのシャシーを使うとするなら、投資の回収は早いだろう。そんなことも鑑みると、新型MINIはお金がかかっていると言えそうだ。

新開発のシャシーの上に乗るのがこれまた新エンジン。すでに東京モーターショーでアナウンスされたユニットだ。具体的にはMINI「ワン」に1.2リッター3気筒、「クーパー」に1.5リッター3気筒、「クーパーS」に2リッター4気筒が積まれる。

すべて直噴式+ターボで、カムシャフトを可変制御するダブルVANOSも装備する。ワン以外はBMWが特許を持つ可変バルブタイミングも追加する。

最高出力は下から、102ps/135ps/192psで、気筒数が減っても確実にパワーを上げてきた。いやはやお見事である。ちなみに、日本導入のないディーゼルはMINI「ワンD」と「クーパーD」で、排気量はともに1.5リッターとなる。トランスミッションはすべてのモデルに6段MTと6段ATが用意される。前者がゲトラグ製、後者がアイシンAW製だ。

MINI Cooper|ミニ クーパー
MINI Cooper S|ミニ クーパー S

変化を感じさせない変化

3代目になった新型MINIを試乗する (3)

低速からモリモリとトルクを出す

そんなMINIを試乗するステージとして選ばれたのは、中米・プエルトリコ。ラム酒で有名なバカルディの本社工場がある国だ。なぜ、MINIのメディア向け国際試乗会がそこでおこなわれたのか。プレゼンテーションでは開発責任者がこんなことを言っていた。「ここは舗装状態が悪い道が多いので、あたらしいMINIの上質な乗り心地を存分に味わってください」と。なるほど、新型はパワーソースもそうだが、足の出来映えもかなり自身を持っているとおもわれる。

試乗車はクーパーとクーパーSが用意された。トランスミッションはクーパーにMT、クーパーSにATという組み合わせである。ちなみにハンドルは左だった。通貨がUSドルからもわかるように、プエルトリコはアメリカの自治区的なポジションにある。よって交通法規はそれに準じる。

MINI Cooper

MINI Cooper S

走って感じたのは相変わらずのゴーカートフィーリングである。鼻先からグイグイいく加速感とハンドルに対してクイックに動く挙動がまさにそれだ。しかもボディ剛性がいっそう高められたことで一体感は増々上がった。現行モデルの「ジョンクーパーワークス」とまではいかないものの、カタマリ感は強い。

気になる3気筒ユニットの吹け上がりだが、こちらもほとんど気にならない。開発陣は4気筒よりもバランスがいいことをしきりにアピールしていたほどで、確かにノイズも少ない。事実バランサーシャフトは、4発に2本、3発には1本となるらしい。

低速からモリモリとトルクを出すクーパー。エンジンパワーが上がっていることもあり、アクセルを踏む量は明らかに減った。特にクーパーSはオーバースペックとも思えるほど。アクセルをガバッと踏んだときの急加速はこれまでとは別モノだ。

MINI Cooper

MINI Cooper|ミニ クーパー
MINI Cooper S|ミニ クーパー S

変化を感じさせない変化

3代目になった新型MINIを試乗する (4)

MINIに可変ダンパーなんて驚きだ

新型MINIのあたしい装備として注目したいのは「MINIドライビングモード」だろう。スポーツ/ミッド/グリーンのそれぞれのモードでアクセル、ステアリングの反力、ギアのシフトタイミング(ATのみ)、ダンパーの減衰力を変えることができる。MINIに可変ダンパーなんて驚きだ。

スポーツはそれなりに硬い。ただ、ミッドとグリーンはおなじ。グリーンは積極的にアイドリングストップをおこない燃費を稼ぐモードとなる。

MINI Cooper

MINI Cooper

インテリアに目を移すと、センターメーターからなる従来のスタイルを継承しながら、あたらしさをアピールしているのがわかる。各種メーターのデザインは変わり、スタートもキーレスのプッシュボタン式となった。シート地はファブリック、ファブリックとレザーのコンビ、フルレザーが用意される。リアシートは6:4の分割可倒式、リクライニングも可能となる。

さてこの新型MINI、日本へはいつ上陸するのかと問えば、4月にも国内販売が開始されるそう。3月2日に間に合わなかったのが残念だが、思いのほか早い販売開始は、MINI好きには嬉しいばかりだ。

080507_eac_spec
MINI Cooper|ミニ クーパー
ボディサイズ|全長 3,821 × 全幅 1,727 × 全高 1,414 mm
ホイールベース|2,495 mm
トレッド 前/後|1,501 / 1,501 mm
最低地上高|124 mm
重量|(6MT)1,085 kg  (6AT)1,115kg
エンジン|1,499cc 直列3気筒 直噴DOHC ターボチャージャー付き
ボア×ストローク|82 × 94.6 mm
圧縮比|11.0
最高出力| 100 kW(136 ps)/ 4,500-6,000 rpm
最大トルク|220 Nm / 1,250-4,000 rpm
   (オーバーブースト時)|230 Nm / 1,250-4,000 rpm
トランスミッション|6段マニュアル / 6段オートマチック
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソン シングルジョイント サスペンション ストラットアクスル
サスペンション 後|マルチリンク アクスル
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
タイヤ 前/後|175/65R15 84H
0-100km/h加速|(6MT)7.9 秒  (6AT)7.8 秒
最高速度|210 km/h
燃費|
  (6MT)4.5-4.6 ℓ/100km(約22.2-21.7km/ℓ)
  (6AT)4.7-4.8 ℓ/100km(約21.3-20.8km/ℓ)
CO2排出量|(6MT)105-107 g/km  (6AT)109-112 g/km
トランク容量|211 リットル

MINI Cooper S|ミニ クーパー S
ボディサイズ|全長 3,850 × 全幅 1,727 × 全高 1,414 mm
ホイールベース|2,495 mm
トレッド 前/後|1,485 / 1,485 mm
最低地上高|124 mm
重量|(6MT)1,160 kg  (6AT)1,175kg
エンジン|1,998cc 直列4気筒 直噴DOHC ターボチャージャー付き
ボア×ストローク|82 × 94.6 mm
圧縮比|11.0
最高出力| 141 kW(192 ps)/ 4,700-6,000 rpm
最大トルク|280 Nm / 1,250-4,750 rpm
   (オーバーブースト時)|300 Nm / 1,250-4,750 rpm
トランスミッション|6段マニュアル / 6段オートマチック
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソン シングルジョイント サスペンション ストラットアクスル
サスペンション 後|マルチリンク アクスル
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
タイヤ 前/後|195/55R16 87W
0-100km/h加速|(6MT)6.8 秒  (6AT)6.7 秒
最高速度|(6MT)235 km/h  (6AT)233km/h
燃費|
  (6MT)5.7-5.8 ℓ/100km(約17.5-17.2km/ℓ)
  (6AT)5.2-5.4 ℓ/100km(約19.2-18.5km/ℓ)
CO2排出量|(6MT)133-136 g/km  (6AT)122-125 g/km
トランク容量|211 リットル

           
Photo Gallery