レクサス、ミラノサローネでベスト エンタテイニング賞を受賞|Lexus
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特集|ミラノサローネ国際家具見本市 2015
レクサス、ミラノサローネでベスト エンタテイニング賞を受賞
レクサスは世界最大のデザイン展「ミラノ デザイン ウィーク」に「LEXUS - A JOURNEY OF THE SENSES」を出展。「五感」をテーマに掲げた展示が高評価を受け、ミラノ デザインアワード コンペティションにおいて自動車メーカーとしてはじめて「ベスト エンタテイニング賞」を獲得した。レクサスは、これまで数年にわたり「レクサス デザイン アワード」を設け、サローネを盛り上げる側として注目されてきたが、今年は自身の展示が受賞したことで、舞台の主役としてその活躍が際立った。小川フミオ氏が現地からリポートする。
Text by OGAWA Fumio
五感のすべてを刺激する展示が評価
レクサスが、ミラノ デザインアワード コンペティションにおいて、自動車メーカーとしてはじめてベスト エンタテイニング賞を獲得した。2015年4月14日から19日にかけて、家具の国際見本市、通称ミラノサローネと同時に開催された、ミラノ デザインウィークにおける「LEXUS - A JOURNEY OF THE SENSES」という展示が大きく評価されたのだった。
ミラノ郊外のフィエラミラノと呼ばれる見本市会場をはじめ、ミラノ市内のブレラ地区、ランブラーテ地区など、デザインウィークの期間中は、いたるところがユニークなプロダクトやインスタレーションで溢れかえるのが特長。
町中がお祭り状態といえる楽しいイベントに、大きく華を添えたのが、トルトーナ地区に展示会場を構えたレクサスである。2015年のテーマは「Senses」、つまり五感。「視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚を捉え直すことで、その可能性を最大限に引き出す五感体験を提供」するというのが、レクサスが説明してくれた、展示の核になるコンセプトだった。
空間スペースをデザインしたのは、フランス人のフィリップ・ニグロ氏。最近ではエルメスのためにデザインしたチェアが大きく話題になるなど、すぐれた感覚を持つデザイナーだ。そしてタッグを組んだのは、大阪のレストラン「ハジメ」の米田肇。米田シェフの料理は、ジャンルにとらわれず、さまざまな味覚体験を味わわせてくれることで、数カ月にわたって予約困難状態が続いているほどファンが多い。
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五感に寄り添うレクサス デザイン
同時にレクサスでは、LEXUS DESIGN AWARD 2015の受賞作品を展示。「Senses」をテーマに応募してきた作品のなかから、プロトタイプ4作品、パネル8作品からなる12の受賞作品を並べたのだ。
とりわけプロトタイプ4作品は「テーマをよく消化していただいた」と主宰者が感心するほどの高い完成度を持っている。キリン、ヘビ、イルカとおなじ世界を観ることが出来る仮面「アニマルマスク」。風などに反応して動くことで発光するモビール「Diomedeidae(アホウドリ)」。外界の気象状況に反応して光を変える「ルス」。そして、感覚に対する意識を高める服やアクセサリー「Sense-Wear(センスウェア)」。
会期中にこのなかからグランプリを決定するのもイベントのひとつで、各組がプレゼンテーションをおこなった後、審査員は「センスウェア」に栄冠を与えたのだった。制作したのは、イタリア人のエマヌエル・コルティ氏と、イヴァン・パラティ氏からなるキャラバン。プロダクトやインテリアのデザインをしているスタジオだ。
「締め切りまで5日しかなかったなかで考えたアイディアだけれど、もとは自閉症の人向けに、こういう洋服やアクセサリーが精神的な安定を与えられるのではと考えていたものです。それを掘り下げました。だから評価してもらえたことは、とても嬉しいです」とはコルティ氏の弁。
不安になってマフラーを噛みたくなった時のために「Bite Me(私を噛んで)」と名づけられた弾性のあるネックレス。
ぎゅっと身体を締め付けられるほうが精神が安定するような時のために、空気ポンプでタイトになる「Pump Me(私に空気を入れて)」。外の音を少し遮断したくなる気分になったら音をマッフルしてくれるポンチョ「Hold Me(私を抱えて)」。
すぐにでも製品化できそうなものが多い。
ブランドイメージのひとつの核としてデザインを重視してきたレクサス。これまで2回にわたりレクサス デザインアワードを展開して、世界中のすぐれたデザインを評価してきた(1回目の受賞者のインタビューはこちら)。
「ドライビングエクスペリエンスは、五感とも密接につながっています」とするレクサスでは、五感というテーマがブランドと非常に関係深いものであることを謳う。それだけに、ミラノ デザインウィークでの展示は、多くの来訪者の注目を集めたのだった。
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おもてなしの心を再解釈
この原稿の書き出しで、2015年のベスト エンタテイニング賞を受賞したことに触れた。その最大の理由は、五感による経験をテーマにした、フィリップ・ニグロ氏と米田肇氏によるインスタレーションだろう。
凸面鏡が「コクーンのように」(レクサス)、コンセプトモデル「LF-SA」を取り囲み、「普段隠れて見えないラインやフォルムを見ることができる」とコンセプトが説明されるのがゾーン1。そこを過ぎるとデザインアワードのゾーン2、そのあと自然木で格子を組んだようなフィリップ・ニグロ氏によるゾーン3である。
レクサスの生産工場を見学した際、目に見えない細部まで作りこむことに感銘を受け、このインスタレーションのセットを組むときも、あえて“裏側”にも通路を設けたという。それがインサイド アウトというコンセプトになっている。同時に、神社などで目にした縦格子がインスピレーションの源になったとか。
「発想する時、日本で受けたおもてなしをおもい出しました。とくに京都の天ぷら屋は印象深かったですねえ(少し笑)。会場構成では、そんな日本で気づいた“心”のようなものを核にしました。この展示を“日本っぽい”と評価してくれる欧州人がいるいっぽう、日本人は“さすが外国人の解釈”と言います。私なりの解釈が認められたとおもって、すなおに喜んでいます」。会場で出合ったフィリップ・ニグロ氏はそう語ってくれた。
そこに組んだのが、米田肇氏である。「人は料理に接するとき、“これは毒ではないのか?”と防御作用が働き、五感のすべてが研ぎ済まれます。あたらしい料理を提案する醍醐味は、その感覚を逆手にとって、新鮮な驚きを味わってもらうところにあります」。真の意味で予約のとれないレストランである「ハジメ」を大阪で営む米田シェフは、何料理とも定義できない自らの料理に込めた企みをそう説明してくれた。
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空間と味覚を組み合わせた体験するアート
展示のセットと食の体験が組み合わされた大胆なインスターションは、雨をおもわせる光の粒と雨音で構成された部屋で、「雨の雫(しずく)」と題された“スパークリングキャンディ”を口にするところシーン1からはじまる。
シーン2は、木の幹のなかをイメージしたという部屋で、球形のもろいガラスのようなカカオバターを口に入れる。なかのキウイや緑茶が甘酸っぱく舌を刺激し、新緑をおもわせる香りが鼻孔に抜ける。部屋の中央に立つと、この球体を咀嚼する自分が作る音が強調して聞こえる。完璧な静寂のなかにいる気分だ。
シーン3は、おもてなしの心を表現したとする、温かいスープが提供される。牛、魚介、昆布と4種類以上の野菜を煮込んだスープである。いっぽう、毎日12人の予約客に限定された「エクスクルーシブジャーニー」では、シーン3に、美しい宇宙の世界を表現した、とするおなじ部屋で「地球のサラダ」が用意される。
地球のサラダは、30種類以上の野菜と、さまざまな材料で作ったソースが盛られた大きなひと皿だ。地球や森林の映像が投影されるテーブルで食べる。照明が落とされた部屋での体験は神秘的ですらある。
まさに「ジャーニー」のしめくくりとしてぴったり。ゾーン1からゾーン3までの体験は、入念に練り上げたコンセプトもユニークだし、体験が最高のエンタテイメントと評価されたのも、よく理解できる。