マセラティ初のSUV「レヴァンテ」がデビュー|Maserati
Maserati Levante |マセラティ レヴァンテ
マセラティ初のSUV「レヴァンテ」がデビュー
1914年にイタリアはボローニャで産声をあげたマセラティは、一昨年、記念すべき設立100年を迎えた。その一世紀にも及ぶ歴史の中でも初めてとなるSUVが、マセラティ「レヴァンテ」である。3月1日開幕した第86回のジュネーブ モーターショーでワールドプレミアしたこのニューモデルは、マセラティの歴史に新たな1ページを書き加える。
Text by SAKURAI Kenichi
マセラティ第5のラインナップ
昨年ワールドプレミアを迎えると予想されていたマセラティ初のSUV「レヴァンテ」が、ついに登場した。発表が遅れた理由は明らかにされていないが、2011年のフランクフルト モーターショーでは「クーバン」というネーミングでSUVを発表。フラッグシップモデルの「クアトロポルテ」やミッドサイズのプレミアムセダン「ギブリ」、そしてスタイリッシュな2ドアクーペ「グラントゥーリズモ」やそのオープン版となる「グランカブリオ」に続く第5のラインナップとして登場が待ち望まれていたモデルである。
現在、プレミアムブランドやラグジュアリーブランドと一般的に認知されている欧州のカーメーカーは、SUVの開発に積極的な姿勢をみせている。先のフランクフルト モーターショーではベントレーがこちらも同ブランド初となるSUV「ベンテイガ」をワールドプレミア、ランボルギーニも「ウルス」と呼ぶSUVの正式発表を控えている。こうしたプレミアムブランドがSUVの開発に乗り出す背景には、北米や中国、中東市場を中心とした世界的なSUV需要の拡大がある。
ユーザーが、ステイタス性に加え実用性と快適性をプレミアムブランドのSUVに求めているのは当然で、そこに需要があることはすでにポルシェが「カイエン」で証明している。いっぽうのメーカー目線でいえば、自らのブランドの価値の向上や、これまでそのブランドに興味を持たなかった層にアピールすることができ、したがってビジネスの幅を広げる効果ももたらす。
これまでスポーツカーやセダンが中心だったプレミアムブランドがSUVを造ると、自社の他の車種が売れなくなるのではという論評をエコノミストから寄せられることがあるが、それは間違いである。このクラスを愛車にするユーザーは複数台所有が当たり前。マセラティの例でいえば、2ドアクーペ「グラントゥーリズモ」のユーザーはほかに実用的なラグジュアリーカーを所有しているはずだ。想像どおり、走る楽しさや所有欲は「グラントゥーリズモ」でかなえられるだろうが、これ1台では不便なのも事実。となれば、これまではドイツ製の高級セダンやSUVが「グラントゥーリズモ」のパートナーになっていたところを、自社ブランドでカバーできるというチャンスが広がる。
そうした背景を理解したうえで、レヴァンテをみると、マセラティがこのモデルに賭ける意気込みと本気度が理解できる。
“レヴァンテ”という名前は、ボローニャ地方にあるVia Emilia Levanteという、マセラティ兄弟ゆかりの土地にちなんだもの。100周年を期にフィアット クライスラー グループ(FCA)のラグジュアリーブランドとしてポジショニングをより明確にしながら、このレヴァンテの追加によって、将来的にマセラティは年間3万7,000台以上の生産台数を見込んでいるともいわれている。マセラティの飛躍は一にも二にも、このモデルの双肩にかかっているのだ。
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パワートレーンは3種類
ジュネーブ モーターショーの会場でワールドプレミアされたレヴァンテは、基本シルエットを前述のコンセプトカー「クーバン」に同じくしているが、フロントグリルやヘッドライトの基本形状は100周年を記念し発表されたコンセプトカー「アルフィエーリ」で採用された新しい意匠に進化した。今後マセラティは、このフロントグリルデザインを他モデルに波及させていくはずだ。
テールライトは立体的な造形だが、グラントゥーリズモから始まった赤いレンズがウインカーやバックランプを囲むこれまでの流れとは異なった意匠を採用。そのテールライト外側にまで及んだクバングのハッチゲートは、こちらも一般的なリアウィンドウとほぼ同幅の形状に改められている。個性的なフロントマスクに対して、リアビューはいささか大人しくも感じる。背の高いSUVでありながら、空気抵抗係数は0.31で、クラス最高のエアロダイナミクス性能を実現しているとマセラティは説明する。
インテリアの各パーツは、オプションで選択可能なプレミアムレザーからマセラティとのコラボレーションではお馴染みのエルメネジルド ゼニア製のシルクにいたるまで、マセラティらしく最高の手触りを持った最上級の素材が用いられているほか、シルク素材は、イタリアのトリヴェーロにあるこちらもゼニアの毛織物工場が特許取得済みの製法で加工。電動パノラマサンルーフの効果もあり、室内はとても広く感じられるという。
エンジンには、最高出力が350psまたは430psの3リッターV型6気筒ツインターボ ガソリンエンジンのほか、275psの最高出力を発生する3リッターV型6気筒ディーゼルターボ エンジンも用意される。トランスミッションには8段ATを採用し、これらすべてのパワートレインはインテリジェントフルタイム4WDの「Q4 AWDシステム」と組み合わされる。エンジンには燃費向上と環境に配慮したスタート&ストップシステムも組み込まれる。
マセラティから発表されたパフォーマンスデータによれば、最高出力430psの3リッターV型6気筒ツインターボを搭載する「レヴァンテS」は、0-100 km/h加速で5.2秒、最高速度は264 km/hに達し、そのいっぽうでNEDCサイクルでの複合燃費は10.9ℓ/100km(およそ9.2km/ℓ)、二酸化炭素排出量は253g/kmに収まる。
ベーシックモデルとなる最高出力350psの3リッターV型6気筒ツインターボを搭載する「レヴァンテ」は、0-100km/h加速のタイムが6.0秒、最高速度は251km/h、NEDC複合燃費は10.7ℓ/100 km(およそ9.3km/ℓ)、二酸化炭素排出量は、249g/kmになる。ちなみにディーゼルエンジンを搭載する「レヴァンテ」は、0-100km/h加速のタイムが6.9秒で、最高速度は230km/h、複合燃費7.2ℓ/100km(およそ13.9km/ℓ)と189g/kmという二酸化炭素排出量を実現させている。
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今秋には日本導入も予定
コンセプトカー「クーバン」が発表された時点では、FCAのジープ ブランドのトップモデル、「グランドチェロキー」のパワートレインやシャシーを一部流用しているとの情報もあったが、レヴァンテでは、クアトロポルテとギブリに採用されたテクノロジーを引き継ぎ、オンロードとオフロードを問わず卓越したパフォーマンスを発揮できるように設計されたという。
参考までにサスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン方式、リアはマルチリンク方式。電子制御式のダンパーが組み込まれるほか、エアスプリング搭載車では、ダイナミック制御によって車高を5段階+パーキング用のローポジションに可変可能。このクラスの車両の中では重心位置がもっとも低く設計され、同時に前後の静止重量バランスも50:50となっている。
オフロードでは車高を上げてクリアランスを確保、オンロードでは車高を下げてスポーティな走りを楽しめるという。このあたりは、走りにこだわるマセラティらしい設計といえそうだ。
ちなみに、レヴァンテの生産は、モデナの本社工場やフェラーリの工場ではなく、トリノにあるフィアットのミラフィオーリ工場で行われる。これはもちろん、マセラティ史上もっとも多い、同社の屋台骨を支えるはずの生産台数をカバーするためである。
マセラティ オーナーのセカンドカー需要としてはもちろんのこと、これまでメルセデス・ベンツの「MLクラス(現GLE)」やBMWの「X5」、さらにはポルシェ「カイエン」のユーザーなど、これまでマセラティに興味はあったものの実用性という点で二の足を踏んでいた愛車1台で何でもかなえたいという新規層もターゲットになるだろう。レヴァンテはすでに生産が開始されており、今春欧州市場に投入された後、そのほかの市場でも販売される予定。
ジュネーブのあるスイスにおける価格は、75,900スイスフラン(およそ870万円)から。日本への導入は今秋とアナウンスされている。
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