BMW X5のプラグインハイブリッドモデルに試乗|BMW
BMW X5 xDrive40e|ビー・エム・ダブリュー X5 xDrive40e
BMW X5のプラグインハイブリッドモデルに試乗
脱炭素化のための選択
持続可能な次世代モビリティを提供すべく、複数のPHEVモデル導入を予定しているBMW。その第一弾としてデビューした「X5 xDrive 40e」に、モータージャーナリスト小川フミオ氏が試乗した。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
「2020年問題」に対するソリューション
プラグインハイブリッドの「X5 xDrive40e」が、2015年9月に日本発売された。デリバリーは12月からなので、それに合わせて試乗会が開催された。注目のモデルだ。なにしろ、「e」はハイブリッドモデルを意味するサブネーム。2015年東京モーターショーにも、X5に加えていくつものBMW製PHVが導入予定として並べられていたのは記憶に新しい。2016年には日本でも目にする頻度が増えそうだ。
X5 xDrive40eは、2リッター4気筒ガソリンエンジンに、リチウムイオンバッテリーで作動する電気モーターが組み合わされている。モーターは、8段オートマチック変速機の前に搭載される。2013年に日本発売されたX5の、強力な追加車種だ。
xDrive(エックスドライブ)と呼ばれるオンデマンド型4WDシステムは、エンジン、モーター、それにハイブリッドと、3つのモードで駆動される。外部充電式のため電気モーターだけでの走行も可能だ。
2016年はSUVの年になる、という自動車メーカーの首脳は多い。かつて中国経済が失速する前の、2015年初頭には、この言葉にも説得力があった。その後はどうなったかというと、いまでも同じことを言い続けている。どこに根拠があるかよくわからないが、新型車のローンチはまだまだ続くようだ。
プラグインハイブリッド化が、ドイツを中心にどんどん進むのはよくわかる。オウプナーズでも何度も書いてきたように「2020年問題」があるからだ。CO2排出量規制である。規制値をクリアできないと、1台あたり100ユーロ程度の多額の制裁金がかかる。収益を上げるためには利益率の高い大型モデルが必要だが、燃費とは相反する関係にある。そこでプラグインハイブリッドという動力源は、この先、さらに増えていくだろう(リチウムイオン電池の供給さえ滞りなく行われれば……)。
X5は、全長4.91メートル、全高1.76メートルと、堂々たるサイズだ。かつ豪華。それゆえ人気があるのは確かだ。さらにもうひとつ、このクルマに惹かれる理由がパワフル感だというユーザーがいたら、今回のプラグインハイブリッドモデルは、十分に試す価値がある。
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脱炭素化のための選択 (2)
電気モーターのみでの航続距離は約31km
X5 xDrive40eは、ひとことで言うと、期待以上に速い。先に触れたように、5メートルになんなんとする大型の車体なので、さすがに2リッターではと思っていたのが、杞憂にすぎないとすぐ分かる。スタートボタンを押してモーターを無音で作動させ、アクセルペダルを踏むと、一瞬の遅れもなく発進する。
電池の充電状態がフルならば、120km/hまでの速度域で31km近く電気モーターのみで走行することができるとBMWではする。今回はそこまで走ることができず、燃費の面で、BMWの主張する3.3ℓ/100km(日本ふうにいえば30km/ℓ)を確認することはかなわなかった。トータルの燃費は実感できなかったが、もうひとつのモーターの長所であるパワー感はよく分かった。
X5 xDrive40eはハイブリッドゆえ、走行モードが選択できるようになっている。それは「eDrive」と書かれたセンターコンソール上のボタンで行う。「AUTO eDrive」はエンジンとモーターという2つの動力源を走行状況に合わせて切り替えるハイブリッドモード。「MAX eDrive」は電気モーターのみのEVモード。そして「SAVEバッテリー」はガソリンエンジンのみで走るモードである。
「MAX eDrive」モードで走りだすと、250Nmの最大トルクを瞬時に発生するモーターの恩恵で、途切れることのない加速感を味わえる。通常ならこれが長く続くわけだが、試乗車は充電状態がいまひとつで、このモードを体験できた距離は短い。ふと見ると、エンジン回転計が動いているので、「AUTO eDrive」モードに移行したことがわかる。移行はたいへんスムーズだ。
もし、X5 xDrive40eによる(より)パワフルな走りを求めていたら、BMWのドライバーにはおなじみの「ドライビングパフォーマンスコントロール」を操作して「パワー」モードを選ぶといい。圧倒的な感じの速さを体験できる。
フィールなど微細な部分では、もちろん、4気筒はしょせん4気筒で、より多気筒エンジンのほうがこの高級車には合うようにも思う。が、温暖化が進むのを手をこまねいて見ているより、海面が上昇して多くの都市が海の中に沈むのを防止するべく力を貸すというのはどうだろう。そのための脱炭素化のハイブリッド車。人生において決して悪い選択ではないはずだ。
大型SUVだけれど、X5 xDrive40e には、BMW的な個性がちゃんとある。
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脱炭素化のための選択 (3)
ストローク感のあるサスペンション
「卓越した運動性能と、高い環境性能の両立」とBMWでは、X5 xDrive40eを定義している。これまで触れてきたように、確かにハイブリッドという枠組みの中で、とてもよく出来ている。別の見方をすれば、電気モーターの力があるから、多気筒エンジンにない魅力も備えているともいえる。
面白いのは、乗り味だ。サスペンションにストローク感があって、ボディロールがけっこう大きい。どういう意図でこういう設定になっているのか、確認する機会がまだないので、ここでは感想を書くだけにとどめるが、悪くない感覚だ。“脚”の長さは、タイヤの接地性確保のため、本格的なクロスカントリー型4WD車にとって重要な要素だ。X5とは、そういうクルマだったのか、と改めて思った。
最近では、読者の方はご存じのように、電子制御技術が進んで、片輪が浮いたら差動装置のせいで、もう一方の車輪にもトルクがいかなくなるなどということはない。どの車輪にトルクを配分すれば、危機的状況(?)から脱することができるか、クルマが瞬時に判断して、手を打ってくれる。なので、かつてのようにサスペンションストロークに頼る場面は減っているはずだ。ただし、ほんとうの悪路では話はまた違ってくる。ライバルが少なくないマーケットで勝負するために、X5にもそこまでの限界性能が求められていると考えていいだろうか。
操縦性は、ストローク感のあるサスペンションだけあって、ちょっと気をつかう。車体の荷重移動をよく考えて、操舵や加速や制動の操作をやらないと、ロールしすぎたり、ステアリングホイールを戻したときに、いわゆる“おつり”の動きが出る。ただしそれが顕著に感じられるのは、中低速域で、飛ばしたときは、ぜんぜん気にならない。少し外側が沈みこむ感覚も悪くなく、カーブからカーブへと移るときには、操縦の楽しさを感じられるのだ。
実用性も高い。2935mmもあるホイールベースの恩恵で、前席でも後席でも、レッグルームとヘッドルームともに余裕がたっぷりある。サイドシルが広いので、人によっては乗り降りに少し神経を使うかもしれない。“正しい”乗り方をマスターしておく必要がある。そこはX5の“お作法”? そんなことはないか。
BMW X5 xDrive40e|ビー・エム・ダブリュー X5 xDrive40e
ボディサイズ|全長 4,910 × 全幅 1,940 × 全高1,760 mm
ホイールベース|2,935 mm
トレッド 前/後|1,645 / 1,650 mm
重量|2,370 kg
最低地上高|210 mm
エンジン|1,997 cc 直列4気筒 直噴DOHC
エンジン最高出力| 180 kW(245 ps)/ 5,000 rpm
エンジン最大トルク|350 Nm(35.7 kgm)/ 1,250-4,800 rpm
モーター|交流同期電動機
モーター定格出力|55 kW(75 ps)/ 5,000rpm
モーター最高出力|83 kW(113 ps)/ 3,170rpm
モータートルク|250 Nm(25.5 kgm)
バッテリー|リチウムイオン電池 96セ/26Ah
トランスミッション|8段AT
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|255/55R18
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン / インテグラルアーム
ブレーキ 前後|ベンチレーテッドディスク
燃費(JC08モード)|13.8 km/ℓ
トランク容量|500(後席折りたたみ時 1,720) リットル
価格|927万円
BMW カスタマー インタラクション センター
0120-269-437(平日9:00-19:00、土日祝9:00-18:00)