メルセデス・ベンツのクーペ+SUV「GLEクーペ」に試乗|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz GLE Coupe|メルセデス・ベンツ GLE クーペ
メルセデス・ベンツのクーペ+SUV「GLEクーペ」に試乗
「Mクラス」から「GLEクラス」へと名前を変えたメルセデス・ベンツのSUVに、派生モデル「GLE クーペ」が登場した。SUVにスポーティなクーペ的ボディを掛けあわせたこのあらたなモデルを、メルセデスはどのように仕上げたのか。新型GLEにつづけて試乗した小川フミオ氏によるリポート。
Text by OGAWA Fumio
コンフォートもスポーティも
メルセデス・ベンツは、「Mクラス」のフルモデルチェンジをおこない、「GLE」というあらたな名称とともに発表した。あたらしくなったのは、名前だけでない。GLEのラインナップが充実。「GLEクーペ」の追加で、より幅広い層の興味に応えられるようになったのである。
2015年1月の北米自動車ショー(デトロイトモーターショー)でお披露目されたGLEクーペは、同社にとって初のクーペコンセプトの大型SUVだ。小型SUV「GLA」のスタイルは、セダンとのクロスオーバーともいえるスタイリッシュなものだが、GLEクーペはコンパクトさを強調したキャビンと、強く傾斜したリアゲートでもって、まさに名のとおり、クーペ的な前席主体のパーソナル感を強調した点があたらしい。
全長4,900mm、全高1,731mmの堂々たるサイズを利用して、なめらかな面とクロームで飾りたてた車体は、周囲の目を惹くキャラクターをもつ。少しノッチがつけられたリアエンドがスタイリッシュで、実用性最優先のSUVでなく、スタイルを重視するドライバーの価値観を感じさせてくれる。
「昔のクルマづくりは、コンフォートかスポーティか、どちらかを選ぶ必要がありました」。メルセデス・ベンツの取締役員で、車両開発のトップに立つドクター・トマス・ウェバーが、試乗会が開かれたオーストリアの、スタイリッシュなリゾートホテルにおけるディナーの席上で、そう語ってくれた。
「どちらかしか選べないなら、ビジネスチャンスを失っている。私たちはそう感じていました。なぜなら、両方ともに欲しい顧客の存在を知っていたからです。いまは技術が、両立を可能にしてくれました。オフロード車であろうとセダンであろうと、スポーティさは、昨今、重要なキーワードです。たとえ利便性が優先されるクルマでも、楽しくなくてはいけません。私たちにとって、F1での成功がイメージづくりにおいて奏功していますが、実際にGLEクーペに乗ってもらえれば、いかに楽しいSUVだか、わかってもらえるとおもいます」。
では乗っての印象はいかに。たんにスタイルだけでない。乗れば期待にたがわずスポーティ。それこそメルセデスが作り上げたGLEクーペだと実感した。
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メルセデスのクーペ+SUV「GLEクーペ」に試乗 (2)
ラインナップもスポーティ重視
メルセデスGLEクーペのラインナップは、GLEとは少々ことなる。ディーゼルエンジンは「GLE 350d 4MATIC」(2,987cc V6 / 190kW、620Nm)1車種のみ。いっぽうガソリンエンジン車は、「GLE 400 4MATIC」(2,996cc V6 / 245kW、480Nm)、「GLE 450 AMG 4MATIC」(2,996cc V6 / 270kW、520Nm)だ。くわえて高性能版として、メルセデスAMG「GLE 63 4MTIC」(5,461cc V8 / 410kW、700Nm)、「GLE 63 S 4MATIC」(5,461cc V8 / 430kW、760Nm)がある。
ラインナップに設けられたGLE 450 AMG 4MATICは、最近設定された仕様で、AMGのサスペンションシステムなどを組み込んだスポーティなメルセデス車というキャラクターを特徴とする。価格面などAMGではすくいきれないターゲット層に向けたニッチ(すきま)商品だが、スポーティなモデルが好きなユーザーは少なくなく、評判は上々とか。
GLEが250dの設定もあるのに対して、GLEクーペは350dに絞りこんでいる。スペシャルティカーという性格を考慮に入れてのことだろう。さきに触れたようにAMGモデルのバリエーションが揃うのも、クーペの特徴だ。
「GLEとGLEクーペ、モデルミックスの割合は、まだどうなるかわかりません。基本的には(GLEのように)クラシックなスタイルのSUVのほうが人気が高いのですが、国によって事情は多少ことなります」
開発総責任者のドクター・トマス・ウェバーは市場を分析する。
「たとえばイタリアではスタイリッシュなSUVが売れますから、GLEクーペの比率はほかより高くなりそうです。女性にもSUVは“守られている”という安心感ゆえに人気ですが、あまりがっちりした男性的なスタイルは敬遠されがちです。なので、GLEクーペは成長が期待できるセグメントとみています」
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見た目だけではない、中味もしっかりとスポーティ
「クーペ的なスタイルをもった大型SUVはほかにもあります。しかし私たちはフォロワーで終わっていません。なにより中身があります」。GLEクーペについて、ドクター・トマス・ウェバーは胸を張る。「9Gトロニックと私たちが呼ぶ9段化したオートマチック変速機と、フルタイム4WDシステムである4MATIC(フォーマチック)と組み合わせてGLEクーペで初めて採用したのです」。
オーストリアで試乗したGLEクーペは、ディーゼルのGLE 350d 4MATIC、GLE 450 AMG 4MATICそしてメルセデスAMGによるGLE 63 4MATIC だ。どれも個性が際立つモデルである。
GLE 63 4MATICは1,750rpmから750Nmの最大トルクを発揮しはじめる5.5リッターV8搭載のモデルで、ひとことで表現して圧倒的だった。2.3トンという車重をいっさい意識させることがないばかりか、アクセルペダルを軽く踏んだだけで、のけぞるような加速性を味わわせてくれる。
足まわりはやや硬めだが、サスペンションは伸び側も縮み側もバランスよくしつけられている。適度に派手で、高級なスポーツウェアに通じる感覚で仕上げられた室内でステアリングホイールを握っていると、たいへん楽しい。ボディサイズにかかわらずクルマとの一体感を強く感じるからだ。ナチュラルな運転感覚は、AMGのブランドに期待するとおりのものである。
理知的にクルマ選びをする人には、3リッターV6搭載のGLE 450 AMG 4MATICも気に入るとおもう。こちらに試乗できた時間は限られていたが、520Nmのトルクを1,800rpmから発生しはじめるので加速性はもうしぶんなく、回転をあげていけば、力を尽きることがないかんじだ。タイトコーナーが連続するような山道でも、すばらしいシャシーのおかげで、スポーティなドライビングが堪能できる。
ステアリングホイールを切ったときに車体の追従性はいいし、ロールを含めた動きはなめらか。9段変速機はそういう時はトルクバンドを維持してくれるので、ごくわずかなアクセルペダルの踏み込みに、すぐに反応してクルマが前へと出ていく。スポーツカーともちがうが、ドライビングを楽しませてくれる点では、もうひとつのスポーツカーとさえ呼びたくなるほどだ。
ドクター・ウェバーは、GLEクーペは女性ユーザーと相性がいいと言っていたが、女性だけに独占させてはいけない。飛ばすと、そんなよさが光る。GLE 350dと名づけられた3リッターV6ディーゼルモデルでも、運転の楽しさはしっかりある。けっして失望しないはずだ。
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メルセデスのクーペ+SUV「GLEクーペ」に試乗 (4)
実用性も犠牲にはしていない
GLE 350dと、ディーゼルエンジン車をあらわす「d」をサブネームに使う、新世代のメルセデスの呼称システムが特徴的なモデルだ。3リッターV6ディーゼルエンジンは、620Nmの最大トルクが1,800rpmで発生する設定なので、加速性はとてもよい。いっぽうで高速巡航時など回転が低く抑えられるため静粛性が高く、ディーゼルと聞いただけで妙に身構えてしまう人には意外かもしれないけれど、かなり洗練されている印象が強い。AMGの名をもたないこのモデルを選んでも、日常的な楽しさと快適性は、しっかり確保されている。
ハッチゲートを備え、クーペ的なスタイルのために傾斜角はなだらか、つまり、後席空間が影響を受けそうに見える。しかし乗れば、着座位置をGLEよりすこし低めているため、レッグルームとともにヘッドルームもじゅうぶんに確保されている。フロントシート下への足入れ性もよく、180cm級の乗員でも狭さはいっさい感じないだろう。
荷室の画像はカタログには載っていないけれど、じつは驚くほど奥行きがあって、ゴルフクラブ2セット以上、スーツケース、そのほか趣味のものが楽々と積めそうだ。6対4の分割可倒式の後席バックレストを倒せば、荷室は広大というかんじに広がる。スタイリッシュであるが、機能が犠牲になっていないのに感心する。
「Mクラスは、米国、中国、ドイツを中心に好調な販売を記録しており、とりわけこれまでのMクラスは世界で年間13万台を超える記録的な数字を達成しています。GLEになってからも、この数字を維持、いや、それを凌駕することを私たちは計画しています」。
もし市場が正当にGLEクーペを評価するなら、ドクター・ウェバーの言葉は現実のものとなるだろう。日本ではあまり販売が芳しくないスタイリッシュSUVだけれど、メルセデス・ベンツ日本では秋からの輸入を検討しているとのことだ。
最新の安全装備も備わっており、全方位にすきがない。緑が深いオーストリアのワインディングロードとアウトバーンで試乗して、圧倒的なモデルの登場と、いたく感心した。
Mercedes-Benz GLE 350d 4MATIC Coupe
メルセデス・ベンツ GLE 350d 4マチック クーペ
ボディサイズ|全長 4,900 × 全幅 2,003 × 全高 1,731 mm
ホイールベース|2,915 mm
トレッド 前/後|1,658 / 1,725 mm
重量(ECE)|2,260 kg(乗員68kg+荷物7kg+燃料90%を含む)
エンジン|V型6気筒 2,987 cc ターボ ディーゼル
ボア×ストローク|83.0 × 92.0 mm
圧縮比|15.5 : 1
最高出力| 190 kW(258 ps)/ 3,400 rpm
最大トルク|620 Nm/ 1,600-2,400 rpm
トランスミッション|9段AT(9Gトロニック)
駆動方式|4WD(前後トルク配分 50:50)
サスペンション 前|ダブルウィッシュボーン
サスペンション 後|マルチリンク
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|275/50R20
0-100km/h加速|7.0 秒
最高速度|226 km/h
燃費(NEDC複合)|6.9-7.2 ℓ/100km(およそ14.5-13.9 km/ℓ)
トランク容量|650-1,720 リットル
CO2排出量|180-189 g/km
Mercedes-Benz GLE 450 AMG 4MATIC Coupe
メルセデス・ベンツ GLE 450 AMG 4マチック クーペ
ボディサイズ|全長 4,891 × 全幅 2,003 × 全高 1,719 mm
ホイールベース|2,915 mm
トレッド 前/後|1,656 / 1,675 mm
重量(EC)|2,220 kg(燃料90%を含む)
エンジン|V型6気筒 2,996 cc ツインターボ
ボア×ストローク|88.0 × 82.1 mm
圧縮比|10.5 : 1
最高出力| 270 kW(367 ps)/ 5,500-6,000 rpm
最大トルク|520 Nm/ 1,800-4,000 rpm
トランスミッション|9段AT(9Gトロニック)
駆動方式|4WD(前後トルク配分 40:60)
サスペンション 前|ダブルウィッシュボーン(エアマチック)
サスペンション 後|マルチリンク(エアマチック)
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|275/45R21 / 315/40R21
0-100km/h加速|5.7 秒
最高速度|250 km/h
燃費(NEDC複合)|9.4-8.9 ℓ/100km(およそ10.6-11.2 km/ℓ)
トランク容量|650-1,720 リットル
CO2排出量|219-209 g/km
Mercedes-AMG GLE 63 4MATIC Coupe
メルセデスAMG GLE 63 4マチック クーペ
ボディサイズ|全長 4,918 × 全幅 2,003 × 全高 1,720 mm
ホイールベース|2,915 mm
トレッド 前/後|1,657 / 1,704 mm
重量(EC)|2,275 kg(燃料90%を含む)
エンジン|V型8気筒 5,461 cc ツインターボ
ボア×ストローク|98.0 × 90.5 mm
圧縮比|10.0 : 1
最高出力| 410 kW(557 ps)/ 5,750 rpm
最大トルク|700 Nm/ 1,750-5,500 rpm
トランスミッション|7段AT(AMGスピードシフトプラス7Gトロニック)
駆動方式|4WD(前後トルク配分 40:60)
サスペンション 前|ダブルウィッシュボーン(エアマチック)
サスペンション 後|マルチリンク(エアマチック)
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|285/45R21 / 325/40R21
0-100km/h加速|4.3 秒
最高速度|250 km/h
燃費(NEDC複合)|11.9 ℓ/100km(およそ8.4 km/ℓ)
トランク容量|650-1,720 リットル
CO2排出量|278 g/km