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2022年1月25日
古典派フレンチによるジビエを食す。今宵、軽井沢で王になる|TRAVEL
TRAVEL|ブレストンコート ユカワタン
「知る」は、おいしい!リターンズ ブレストンコート ユカワタン編(2)
フレンチの真骨頂「リエーブル・ア・ラ・ロワイヤル(野兎のロワイヤル)」
その後、魚料理を挟んで(この日はスジアラ)、いよいよ、メインの兎ちゃん、「リエーブル・ア・ラ・ロワイヤル(野兎のロワイヤル)」です。こちらは、“ジビエの女王”とも言われる、クラシックなフランス料理。なぜ“ジビエの女王”かといえば、野兎が希少であることに加え、とーっても手間がかかるから(笑)。それに、日本ではなかなか野兎って手に入らないのだそうです。
「野兎はジビエの醍醐味が詰まった食材。なかでも『野兎のロワイヤル』は、フランス料理の技術が集約された料理です。臭みがあり、パサパサしがちな野兎を美味しくできるのはフレンチだからこそ。フランス料理の技術を駆使し、ジビエの嫌なところを隠し、いいところを引き出すようにして仕上げています」
とはいえ、日本では、まだまだ兎を食べることに抵抗がある人も多く、「はい、ですので、まずは見た目から抵抗なく入ってもらえるように、プレゼンテーションにはこだわりました」と松本さんは言います。で、コレですよ。「ユカワタン」の「野兎のロワイヤル」、まるで、チョコレートのデザートみたいでしょ⁉
「一般的な『野兎のロワイヤル』とまったく異なる作り方をしています。本来のレシピでは、野兎は丸々の姿で、1週間ほど煮込むのですが、それだとパサパサになってしまう。臭みもあり、ジビエが苦手な人はまず食べることができません」(松本さん)
……わかります。私もジビエは大好きですが、兎にはあまり食指が動きません。あのかわいらしい体躯を思い浮かべてしまうと……なんて殊勝なことを言うつもりはありませんが、そうなんです、松本さんが言うように、パサパサして臭みのある野兎をあまり美味しいと思ったことがなくて(笑)。ですが松本さんは、そんなイメージの強い野兎に、「ぜひ美味しく食べてほしい」と、最高のアレンジを加えます。
「野兎の肉をフォアグラやトリュフで巻き、香味野菜やワインとともに低温で煮込み続けます。今回は58度で、4日間煮込みました。さらに1日置いて味を落ち着かせた後、お酒や、エシャロットなどの香味野菜、ハーブ、スパイスと合わせることで、しっとりと、また少量でもリエーブル本来の味わいが感じられるように仕上げています」
見た目からして濃厚なソースにも、たっぷり手間をかけました。野兎からとった出汁に、大量のワインを加えて煮詰め、出汁で伸ばし、フォアグラやチョコレート、野兎の血などで、濃度を高め、さらにコニャックやマデラワインを加えて煮込んでいるとか。あ、ほんとにチョコレート、入ってるんだ(笑)。
野兎は、本来の猛々しさはそのままに、少しおしゃれした印象。勇ましさのなかに、雅びも感じる野兎が纏うソースは、妖艶な濃厚さを持ちながらも、神々しいほどに澄んでいました。いただいてからすでに10日ほど経過していますが、あの複雑で鼻腔を痛快にくすぐるソースは、舌も鼻もまだはっきりと記憶しています。
そして、もちろんこの野兎ちゃんには赤ワインがマスト、ですよね⁉ 松原さんのセレクトは、ブルゴーニュの老舗の作り手によるピノ・ノワール「モンジャール ミュニュレ ヴージョ」。
可憐な香りを持つ官能的なワインは、野兎の繊細さ、凛々しさと絶妙にマッチし、単体でも文句なしに美味しい料理とワインが、何倍にも美味しく感じられる──、これぞ、ペアリングの醍醐味と、体中に喜びが漲っていきます。
それにしても、1月にして、2022年のハイライトを迎えてしまった、私の食ライフ、いったいどうすればいいのでしょう? これ以上に美味しいものに出合えるのでしょうか。贅沢な悩みとは知りつつ、不安を感じる今日この頃ですが、2022年、軽井沢で王になった記憶は、私の人生のなかで燦然と輝き続けることでしょう。いや、マジで。
ブレストンコート ユカワタン
- 住所|長野県軽井沢町星野
- 電話|050-5282-2267
- 営業時間|17:30〜(事前予約制)
- 料金|コースメニュー2万2000円、ペアリング(約6種類)1万2100円(税込・サービス料別)
王様のジビエ
- 提供期間|2021年12月1日~2022年1月5日 ※今年度の提供期間は終了。来年度に乞うご期待!
- 料金|料理2万7500円(全9品)、税込・サービス料別
問い合わせ先
ブレストンコート ユカワタン
Tel.050-5282-2267
https://yukawatan.blestoncourt.com