
LOUNGE /
EAT
2025年4月1日
伝統と革新、美食とモダニティ。パレスホテル東京 フランス料理「エステール by アラン・デュカス」
EAT|エステール by アラン・デュカス
東京・丸の内に佇むパレスホテル東京。その中核を担うフランス料理「エステール by アラン・デュカス」は、伝統と革新を融合させた美食の世界を創り出している。名匠アラン・デュカスの哲学を受け継ぎ、日本の食材とフレンチの技法が織りなす料理は、軽やかでありながら奥深い味わいをもたらす。
Text & Photographs by IJICHI Yasutake
日本のテロワールを体現する、アラン・デュカスの美食哲学
千代田区丸の内1-1-1、皇居外苑を望む、まさに東京の心臓部に位置する「パレスホテル東京」。その歴史は、1961年の開業にまで遡る。それ以前にはこの地に「ホテルテート」というGHQ(連合軍最高司令部)の命令により開業したバイヤー専用の国有国営のホテルが存在していた。
2012年、全面建て替え を経て現在の姿に生まれ変わったパレスホテル東京は、日本の美意識とモダニティが融合した独自の世界観を打ち出している。全284室の客室はすべて45㎡以上という贅沢な広さを誇り、全客室からは四季折々の表情を見せる皇居外苑の緑を望むことができる。 インルームダイニングも単なるルームサービスではなく、ホテルレストランを楽しめるインルームダイニングは、想像しているルームサービスとは一線を画す。
館内には約720点を超えるアート作品が配され、日本の伝統工芸を現代的に解釈した作品も少なくない。取材時は期間限定で(2025年3月13日~31日)、廃棄になる花を集めて高知の土佐和紙職人が和紙にすりこんで作った桜のオブジェなど、サステナビリティと伝統技術が融合した作品も見ることができる。
そんなパレスホテル東京の中でも、美食の中心となっているのがフランス料理「エステール by アラン・デュカス」だ。かつて「クラウン」として長く愛されてきたフレンチレストランが、2019年、フランス料理界の巨匠アラン・デュカス率いる「デュカス・パリ」をパートナーに迎え、新たな姿となった。
アラン・デュカスは、現在世界で最も著名なシェフのひとり。彼の料理哲学は過度な脂肪、糖、塩の使用を避け、素材本来の味わいを最大限に引き出すことを重視する。ジョエル・ロブションのようなクラシカルなフレンチとも、レネ・レゼピの北欧的な発酵技術とも異なる、「健康的で軽やか」なフランス料理の進化形を追求している。
デュカスの日本との関わりは2004年に遡る。銀座シャネルビルの最上階に「ベージュ アラン・デュカス 東京」をオープンさせ、フランス料理と日本の食材の融合で話題を呼んだ。エステールでは、この関係性をさらに深め、まさに「日本のテロワール」を体現するフレンチを提案。この姿勢は「ミシュランガイド東京2025」に1つ星レストランとして掲載されるなど、高い評価を受けている。
2023年1月、エステールのシェフに就任したのが小島景だ。1964年東京生まれ、鎌倉育ちの小島シェフは、アラン・デュカスとその右腕フランク・セルッティ氏のもとで10年以上研鑽を積んだ実力者。モナコのミシュラン3つ星「ル・ルイ・キャーンズ アラン・デュカス」で副料理長を3年間務め、その後「ベージュ アラン・デュカス 東京」の総料理長として、8年連続でミシュラン2つ星の評価を維持した。
デュカスからは「世界で最も私の料理哲学を理解し、実践する日本人シェフ」と絶大な信頼を寄せられる小島シェフ。彼は毎朝、愛する地元・鎌倉で旬の野菜を厳選してからホテルへ向かう。野菜を段ボールに詰めて昼に届くように送り、配送が間に合わないものは自ら持参するという徹底ぶり。
小島シェフの料理への姿勢は、食材の美味しさはもちろん、「どんな人が作っているか」という生産者との繋がりにまで及ぶ。一方で、「国産」などの縛りには捉われず、世界中から最高の食材を調達する柔軟性も持ち合わせている。サーフィンをライフワークとし、自然と人との繋がりを大切にする人柄が、エステールの料理にも豊かな表情を与えている。









小島シェフが紡ぎ出す料理で特筆すべきは、過度な脂肪分の使用を抑え、野菜をたっぷり使った軽やかな印象でありながら、伝統的なフレンチの本質は損なわず、フランス料理本来の深みと豊かな風味は見事に表現されている点。一皿を味わうごとに感じるのは、重厚さではなく、奥深さ。口の中に留まり続ける脂っぽさではなく、繊細な旨味の余韻。それは食後も心地よく続く満足感であり、胃に長く重くのしかかる満腹感とは一線を画している。まさに、食べ終わった後も軽やかに次の時間を迎えられる、現代のフレンチと言えよう。
エステールのメニューは季節の移ろいとともに少しずつ変化していく。例えば春には、脂の乗った真名鰹を備長炭でじっくり焼き上げ、ブラッドオレンジや野菜のソースと合わせた一皿や、ローストした鎌倉野菜など、旬の味わいが堪能できる。デュカスの哲学に従い、メニュー変更の時期はあえて決めていないという。なぜなら、気候変動などで食材の「いちばんおいしい時期」が変わったときに、柔軟に対応するためだ。
パレスホテル東京には、なんと19人ものソムリエが在籍しているらしい。中にはデスクワークを担当するスタッフもいるという充実ぶり。エステールではシェフ、ソムリエ、サービススタッフが三位一体となり、最高に心地よい空間を演出している。美食を味わいながら、皇居の緑を眺め、洗練されたサービスに包まれる時間——それはまさに現代の贅沢そのものである。
近隣のホテルコンシェルジュがエステールを紹介するというエピソードや、月曜・火曜を定休日とすることでシェフ不在の日をなくし、常に最高のパフォーマンスを維持している点も、エステールのこだわりと魅力が体現されている点の一つだろう。
伝統と革新が交差する場所。それがパレスホテル東京であり、エステールなのである。
フランス料理「エステール by アラン・デュカス」
住所|東京都千代田区丸の内1-1-1 パレスホテル東京 6F
営業時間 |
ランチ: 11:30 am – 1:30 pm L.O.
ディナー: 6:00 pm – 8:00 pm L.O. (10:00 pm Close)
* 月曜~火曜 (祝日は営業) はクローズ
Tel.| 03-3211-5317
住所|東京都千代田区丸の内1-1-1 パレスホテル東京 6F
営業時間 |
ランチ: 11:30 am – 1:30 pm L.O.
ディナー: 6:00 pm – 8:00 pm L.O. (10:00 pm Close)
* 月曜~火曜 (祝日は営業) はクローズ
Tel.| 03-3211-5317
問い合わせ先
エステール by アラン・デュカス
https://www.palacehoteltokyo.com/restaurant/esterre/