420psの2リッターエンジンを搭載したアウディTT|Audi
Audi TT quattro sport concept|アウディ TT クワトロ スポーツ コンセプト
420psの2リッターエンジンを搭載したアウディTT
ジュネーブ モーターショーで、3代目「TT」を公開したアウディは、同時にコンセプトカーとしてシリーズ最強モデルとなる「アウディ TT クワトロ スポーツ コンセプト」を発表。新型TTをベースに、2リッターエンジンながら、最高出力420psを発揮するモンスターマシンに仕立てた。
Text by SAKURAI Kenichi
ライバルはメルセデス・ベンツ「A 45 AMG」
3代目「TT」と同時に発表されたアウディ「TT クワトロ スポーツ コンセプト」は、ずばりメルセデス・ベンツの「 A45 AMG 4MATIC」や「CLA 45 AMG 4MATIC」の対抗馬となるモデルだ。コンセプトカーながら、2リッター直列4気筒の2.0 TFSIエンジンは、309kW(420ps)にまでチューンされ、排気量1リッターあたり155kW(210ps)と、「A 45 AMG」のもつリッター180psにターゲットを絞ってきたことは明白だ。
自慢の「クワトロ システム」を介して得られる最大トルクは450Nm(45.9kgm)とこちらも強力で、コンパクトスポーツモデルの最高峰をきわめたといっても過言ではない。アウディではこの特別なTTを「レース用に設計し、顧客のなかでもモータースポーツ愛好家へのプレゼンテーションとして製作しました」とプレスカンファレンスで紹介したが、排気量2リッタークラスのカテゴリで、あたらしいベンチマークになるモデルとして登場させたいという意図がはっきりと読み取れる。
リッターあたり155kW(210ps)の出力といえば、FSIガソリン直噴にターボを組み合わせたエンジンを初採用し、2001年には見事ル・マンで勝利を飾ったレーシングマシン「R18」よりも高出力、と紹介すれば、より具体的にアウディ TT クワトロ スポーツ コンセプトのポテンシャルが想像しやすいだろう。
パワートレインを開発したDr.ステファン・クランチは「この高性能パワーユニットは、アウディのEA888エンジンのポテンシャルと可能性を知ってもらうためのデモンストレーションです。このパワーユニットは、世界中で数かずの賞に輝いており、その実力は、すでに多くのアウディ スポーティモデルで、証明されています。
TT クワトロ スポーツ コンセプトでは、EA888エンジンの最高峰となるべき可能性をしめしています。われわれはターボ過給の分野で培ってきた35年の経験を活かし、最大のパフォーマンスとダイナミズム、そして燃費の両立を具現化しました」と、会場で語った。
エンジンは、特別な冷却系統のほか、アルミ製ピストンと超高強度鍛造スチールシャフト、新開発のシリンダーヘッドなどを採用。肉厚が薄くコンパクトなシリンダーやクランクケースは高強度鋳造合金で形成されている。また、新開発のターボチャージャーも採用し、1.8バールの過給を可能とした。トランスミッションは、デュアルクラッチの「Sトロニック」を組み合わせている。
Audi TT quattro sport concept|アウディ TT クワトロ スポーツ コンセプト
420psの2リッターエンジンを搭載したアウディTT (2)
発売を期待する声も高い
サスペンション形式は通常のTTとおなじくフロントにマクファーソン式ストラット、リアが4リンク式だが、車高を低くし、より固められた足回りをもつ。前後54:46となる重量配分もこの“最強”マシンの特徴だ。クワトロシステムは、コーナリングのさいに必要であれば左右輪のトルク配分を制御し、より曲がりやすくなるようにコントロールする。
アグレッシブなデザインを有するフロントセクションは、CFRPで作り替えられている。空力的にすぐれた実戦的なデザインな上に、エンジンルームへのエア導入量も多くなるよう設計。さらに、通常のTTよりも全幅は30mm拡大され、それらのシルトリムやリアディフューザー、固定式となったリアスポイラーもCFRP製を採用する。
インテリアは「レース用」であることを裏付けるように、アームレストやスピーカーなどを取り外し、軽量化を図った。コクピットはアルカンターラが張られ、ホワイトのアクセントが印象的なレーシングバケットシートと4点式シートベルトを搭載。荷室には、2つのヘルメットが置けるスペースを確保している。
先行するメルセデス・ベンツAクラス系の「AMG」や、今後登場が期待されるBMW「2シリーズ」をベースとした「M」モデルを牽制するプレビューとして、予告なしで登場したアウディ TT クワトロ スポーツ コンセプト。そのインパクトは絶大であった。発売を期待する声は、ジュネーブ モーターショー会場のあちらこちらから聞こえてくる。アウディにもその声は、きっと届いているはずだ。