従来と同じような運転の楽しさを追求している──マツダMX-30 EVモデルに試乗|MAZDA
CAR / IMPRESSION
2021年5月5日

従来と同じような運転の楽しさを追求している──マツダMX-30 EVモデルに試乗|MAZDA

MAZDA MX-30 EV MODEL|マツダ MX-30 EVモデル

マツダMX-30 EVモデルに試乗

コンパクトでスタイリッシュなボディが魅力のマツダのクロスオーバーSUV「MX-30」にEVモデルが追加された。航続距離から走り味まで、そこにはマツダ開発陣のEVに対する思想がふんだんに込められていた。

Text by OGAWA Fumio|Photographs by KAWANO Atsuki

航続距離をあえて256kmにとどめている理由

クルマにもトレンドがある。ひとつはSUV。かつてのハッチバックやステーションワゴンを抜く人気を見せている。もうひとつ、今じわじわっと、興味を持つ人が増えているのが電動車だ。マツダが2021年1月28日に発売した「MX-30 EVモデル」は、コンパクトなサイズとスタイリッシュなデザインで、OPENERS読者も興味をもつであろう、電気自動車だ。
クルマに詳しい方なら、2020年11月に「MX-30」が発売されているのはご存じだろう。そのとき出たのは、マイルドハイブリッドといって、発進時などに電気モーターの力を借りるモデルだ。基本的な車台は、先行するCX-30などと共用。ただし、よりパーソナルな雰囲気が強いスタイルをもつMX-30では、足まわりがよりしっかり、よりスポーティに仕立てられている。
MX-30 EVモデルは、そこに追加された車種だ。エンジンはもたず、電気モーターで前輪を駆動する。注目してほしいのは、背景にある、マツダのユニークな考え方だ。電気自動車というと、航続距離を競うきらいがあるものの、MX-30ではあえて、256kmにとどめている。理由はバッテリー。大きくするとコスト髙になるうえ、生産時に工場が発生するCO2の量が大きく増える。そこに注目したのがマツダで、MX-30 EVモデルの35.3kW/hが適切なのだそうだ。
たとえば、パワフルな走りが印象的なアウディのピュアEV「e-tronスポーツバック」では、95kW/hと大型バッテリーを搭載している。だいぶ差がある。もちろんアウディでは405kmもの航続距離を誇る。それに対してマツダでは、日常使用が中心の人には、200kmの航続距離なら週末一度の満充電で十分実用的とする。環境負荷を中心にすえると、マツダの考え方にも一理あるように思える。そこが面白い。
MX-30のユニークなところは、もうひとつ。スタイルだ。クーペ的にややコンパクトにしたキャビンとともに、「フリースタイルドア」と呼ばれる、小さな観音開きのドアを後席用に設けているのだ。かつてのスポーツカー「マツダRX-8」で採用したデザインである。実際の乗り降りは不便でなく、クーペ的に小さめにしたキャビンの使い勝手とうまくバランスをとったデザインだと思う。

乗員が不自然な感じを受けない緻密な駆動制御

走りは、ひとことでいってスムーズ。先述したとおり、バッテリーもインバーターもいたずらにパワフルさを追究していないため、ドイツ製の高性能EVのように頭が後ろにのけぞるような加速感こそない。それでも、ガソリンエンジンなどと比較すると、発進から高速にいたるまで、切れ目なく気持ちよい加速が続く魅力を備えている。
マツダの開発者は、加速と減速でも操縦の楽しさを味わわせてくれようと、ステアリングホイールのところにパドルを設けている。普段はDというポジションで発進。よりなめらかな加速感が欲しければ右手でパドルを引くと、2段階でスムーズさが増す。一方、ブレーキペダルを使うまでもない程度の減速なら、左のパドル。タイヤの回転を使って駆動用バッテリーのために発電する、EV独自のブレーキ回生システムによる抵抗を利用しているのだ。
EVのなかには(いや、ほとんどのEVが)このブレーキ回生システムを使って、アクセルペダルをオフにすればほぼ停止にいたるまで強い制動がかかる設定をとっているのに対して、マツダの開発陣は、このいわゆるワンペダル操作は採用しなかった。あくまで、従来と同じような運転の楽しさを、自然なかたちで、加減速でも味わってもらいたい、としている。
ただしモーター駆動のメリットはしっかり役立てている。ひとつはアクセルペダルを急にオフにしたときの挙動。がっくんとショックが伝わらないように、駆動力をいきなりオフにしない丁寧な制御が施されているのだ。それは一例で、ペダルやステアリングホイールの戻しなども、モーターの力をうまく使って、ドライバーを含めて乗員が不自然な感じを受けないよう、緻密な調整がされているようだ。
カーブを曲がるときには、やはりモーターが“ひと仕事”してくれる。ドライバーのステアリングホイール操作に応じて、車体の前後左右にかかる重力(G)を、モーターの力でコントロール。たとえば、カーブに入っていくときは駆動力を少し抜き車体前方へと荷重を移動し、カーブから出ていくときは駆動力を増し、こんどは後方へと荷重移動させるという具合だ。これはいってみれば、ひそかに行われる。MX-30のEVモデルだから実現した、マツダ開発陣自慢のシステムである。
外装の仕上げがいいのは、マツダ車の例にもれない。内装も、今回は上級グレードには、あえてファブリックを張ったシートも用意される。ファブリックは一般的にいってレザーよりたわみが大きく、乗り心地がよい。加えて、MX-30では、一般的なニット(編み物)でなく、伸びにくく、しっかりした座り心地をもたらす織物を採用。他ではなかなかない快適性を追求している。見た目もクリーンで、大変好感がもてる内装が出来上がっている。
グレードは3つ。ベースモデル「EV」(451万円)に始まり、「EV BASIC SET」(458万7000円)、そして「EV HIGHEST SET」(495万円)だ。違いは装備のレベルで、たとえば、ファブリックシートは全車標準(レザーはない)で、トップグレードはサイドに合成皮革が使用されてデザイン的に凝ったものになる、といった具合。選べる車体色のバリエーションも差がでる。

MAZDA MX-30 EV MODEL|マツダ MX-30 EVモデル

  • ボディサイズ|全長4,395×全幅1,795×全高1,565mm
  • ホイールベース|2,655mm
  • トレッド前後|1,565mm
  • 車両重量|1,650kg
  • 最低値上高|130mm
  • 最高出力|107kW(145ps)/4,500-11,000rpm
  • 最大トルク|270.9Nm(27.5kgm)/0-3,243rpm
  • サスペンション前|マクファーソンストラット
  • サスペンション後|トーションビーム
  • ブレーキ前|ベンチレーテッドディスク
  • ブレーキ後|ディスク
  • バッテリー|リチウムイオン電池
  • 定員|5人
  • 一充電走行距離|281km(WLTCモード)
  • 価格|451万円~495万円
問い合わせ先

マツダコールセンター
Tel.0120-386-919(平日9:00〜17:00、土日祝9:00〜12:00 13:00〜17:00)
https://www.mazda.co.jp

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