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IMPRESSION
2020年11月27日
まさに背の高いアストンマーティン──アストンマーティンDBXに試乗|ASTON MARTIN
圧倒的な加速を誇る、AMGも開発に携わったV8エンジン
いまは、405kW(550ps)の最高出力と、700Nmの最大トルクを持つ3982ccのV8という内燃機の、圧倒的なパワーを楽しんでおいても損はない。現在アストンマーティン・ラゴンダ車のCEOを務めるトビアス・モアーズ氏の出身母体であるAMGも開発に携わったこのエンジンは、たとえばメルセデス・ベンツGLS580 4MATIC Sportsにも搭載されている。
GLS580 4MATIC Sportsは、ちなみに同じエンジンを積んでいるものの、360kW(489ps)と、パワーが抑えられている。あちらも、クルマとしての完成度は高い。それでも比較すると、DBXのほうが突き抜けている。
DBXは、メルセデス・ベンツ車に対して、悪路走破性を考えていないとはいわない。事実、日本に入ってくるモデルは、通常のサマータイヤに加えて、オールシーズンとスタッドレスと、ユーザーが選択できるようになっている。ほかの試乗リポートを読んでいても、砂漠とかがれきのある悪路でも悪くないようだ。それでも、キャラクターをより明確に、スポーティな方へと振り切っている印象だ。
加速性は圧倒的。まさに、背の高いアストンマーティンだと思った。1913年以来、スポーツカーに(ほぼ)専念してきた同社の魅力が詰まっている。たとえばDBSバンティッジに乗っている人がDBXを買ったら、違いは背の高さとパッケージだけか、なんて思うかもしれない、と想像した。
本社ですべての車両の開発責任を負う、ロータス出身のマット・ベッカー氏は、オンラインのプレゼンテーションに登場して、「ドライブモードセレクターで好みのセッティングが選べます」と語った。
自分が好きな組合せは、として、ベッカー氏が挙げたのは、ダンパーはGTモード、ステアリングもGTモード、変速はスポーツモード、そしてエグゾーストのサウンドエンハンサーもスポーツモードという設定である。
この設定は、リムジンとしても使えるほど後席スペースがたっぷりしているDBXに合っている。2200rpmから最大値に達するエンジンのたっぷりしたトルクと、ソフトではけっしてないが、重厚な乗り味が実現されているからだ。
一方で、スポーツ、あるいはスポーツプラスといったモードでは、かなりキャラクターが変わる。ツインターボエンジンは、弾けるような、というぐらい、アクセルペダルをわずかな踏みこみに反応してパワーを出す。ややクイックな設定のステアリングのおかげもあって、運転を楽しみたいときにぴったり。スポーツでも充分すぎるぐらいである。