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IMPRESSION
2019年8月13日
5世代目に進化したA6アバントに試乗|Audi
Audi A6 Avant |アウディ A6アバント
5世代目に進化したA6アバントに試乗
2018年4月にデビューし、2019年3月に日本にも導入された新型アウディA6アバント。5世代目へと進化し、最先端の運転支援技術やコネクティビティシステムも導入された同モデルに試乗した。
Text by NANYO Kazuhiro|Photographs by ARAKAWA Masayuki
比類ないスムーズさを獲得
今でこそ、ボルボ「V90」やメルセデス・ベンツ「CLSシューティングブレーク」のような“2枚目ワゴン”はよく見かける存在になったが、荷室の大きな実用車でしかなかったステーションワゴンを一躍、華のあるドライバーズカーの座に押し上げたのは、アウディ「100」以来のアバントの功績によるものと断言できる。
今回は、C4というコードネームが与えられた初代から数えて5世代目となるC8に進化した、「A6アバント55 TFSI クワトロ Sライン」に試乗した。
今回は、C4というコードネームが与えられた初代から数えて5世代目となるC8に進化した、「A6アバント55 TFSI クワトロ Sライン」に試乗した。
結論からいえば、そのボディサイズからすれば信じられないほどの軽やかなハンドリングと扱いやすい身のこなし、鉄板というべき直進安定性に加えて、アイドリングストップからコースティングに至るまでの48Vマイルドハイブリッドのマナーでも、比類ないスムーズさを獲得していた。
欧州Eセグメントのステーションワゴンには、実用車であって実用車ではないハイエンドツアラーとしての矜持を各々が追及しているというか、国産車には存在しない世界観があるが、そのセグメントリーダーとしてA6アバントはふさわしい進化を遂げていた。
Audi A6 Avant |アウディ A6アバント
5世代目に進化したA6アバントに試乗 (2)
機能主義のドライバーズカーとしてひとつの頂点を究めた
そもそもアウディがプレミアムブランドとして確立できたのは、初代TTとほぼ時を同じくして登場したC5世代のA6に負うところも大きい。それまでコンサバな旦那グルマかドイツ本国でタクシー用途という、Eセグメントのセダン&ワゴンのイメージを刷新してみせた。因襲的なるものを超えるイノベーター=アウディというイメージは、A6アバントから来ているのだ。
そしてアウディがこのジャンルの先駆者となった理由は、バブル期にステーションワゴンに乗っていることがスキーやサーフィンやキャンプといった豊かな週末を連想させ、ライフスタイル商品として時流にのったから、ではない。
そしてアウディがこのジャンルの先駆者となった理由は、バブル期にステーションワゴンに乗っていることがスキーやサーフィンやキャンプといった豊かな週末を連想させ、ライフスタイル商品として時流にのったから、ではない。
空力の追及とクワトロという独自の4WDシステムによって、高速巡航エクスプレスとして直進安定性とステーションワゴンならではの積載性を高次元で両立させ、機能主義のドライバーズカーとしてひとつの頂点を極めたからだ。
逆に高速安定性と積載性を究めたがゆえ、アバントは欧州映画界では、Go fast(ゴーファスト)と呼ばれる麻薬や大麻の運び屋が乗る定番の足にもなってしまった。映画ではRS4アバントだったが、フランスはスペイン国境近くで2009年、本物の売人がRS6アバントに大量の大麻を積んで200km/hオーバーで逃走した末、逮捕されたことがあった。事実はフィクションを超越するのだ。
逆に高速安定性と積載性を究めたがゆえ、アバントは欧州映画界では、Go fast(ゴーファスト)と呼ばれる麻薬や大麻の運び屋が乗る定番の足にもなってしまった。映画ではRS4アバントだったが、フランスはスペイン国境近くで2009年、本物の売人がRS6アバントに大量の大麻を積んで200km/hオーバーで逃走した末、逮捕されたことがあった。事実はフィクションを超越するのだ。
話が少し逸れたが、5世代目を迎えた最新のA6アバントは、それだけ独特の背景と存在感をもつモデルなのだ。4950×1885×1465mmの外寸は、全長こそEセグメントとして5メートル以内に収められたとはいえ、全幅と全高はひと昔前のA8に相当する。2925mmものロングホイールベースにも同じことがいえる。
伸びやかなプロポーションに、前後フェンダーからボディサイドにかけてのショルダーラインはエッジの緩急を含めかなり複雑。先代と同じく内側がえぐれた目つきをしているフロントライトはLEDマトリックスを採用し、リアランプの上に横一文字に渡されたクロームガーニッシュなど、面積を増したシングルフレームグリル以外にも、凝ったディティールは多い。だが、一つひとつが悪目立ちせず、全体としてすっきり見える辺りは、さすがだ。
伸びやかなプロポーションに、前後フェンダーからボディサイドにかけてのショルダーラインはエッジの緩急を含めかなり複雑。先代と同じく内側がえぐれた目つきをしているフロントライトはLEDマトリックスを採用し、リアランプの上に横一文字に渡されたクロームガーニッシュなど、面積を増したシングルフレームグリル以外にも、凝ったディティールは多い。だが、一つひとつが悪目立ちせず、全体としてすっきり見える辺りは、さすがだ。
Audi A6 Avant|アウディ A6アバント
5世代目に進化したA6アバントに試乗 (3)
角のない乗り心地と軽快なハンドリングが印象的
「55 TFSI クワトロ Sライン」のパワートレインは、3リッターV6ターボエンジンに7段DCTであるSトロニックの組み合わせで、ベルト駆動オルタネータースターター(BAS)と48Vシステムによるマイルドハイブリッドでもある。これはアイドリングストップからの再始動と減速時の回生を担うもので、静止状態やコースティングからエンジンのトルクが有効になるまでの(それでも1370rpmから500Nmものトルクだが)クリティカルな領域を、オルターネーターの補助駆動でまかなう仕組みだ。その作動は恐ろしくシームレスで、ストップ&ゴーを渋滞で繰り返しても嫌な揺れやブレを感じることはなかった。
またモダンな意匠でまとめられたインテリアは上下2段、ワイドなタッチスクリーンがダブルで配される。上段にインフォテイメントや車両情報が、下段にコンフォート機能が集約されるが、ドライブモードは物理的ボタンでコンソール左端に設けられた点が、機能的だ。
エフィシェンシー/コンフォート/オート/ダイナミック/インディヴィジュアルと、5つの設定があって、まずは前2者で市街地走行してみるが、トルクが分厚くリアステアによる4輪操舵も手伝ってか、低速域なのにもっさり走る感じがない。むしろ1930㎏の5メートル近いクルマが、かくも軽やかにスムーズに取り回せるということへの驚きの方が大きい。ダイナミックモードを十分に試すことはできなかったが、中立付近が敏感でなく優しい手ごたえだったステアリングのゲインが強めになること、シフトも一段ほど低い選択になったエキゾーストノートが高まることも確認できた。
それにしても角のない乗り心地と、軽快なハンドリングが印象に残る。サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式だが、エンジンルームをのぞくとフロント側アッパーマウントがかなり内側に寄せられ、ダンパーストローク長を確保していることが看取できる。ターボチャージャーをVバンク内に収めたメリットを、こんな形でも生かしているのだ。
エフィシェンシー/コンフォート/オート/ダイナミック/インディヴィジュアルと、5つの設定があって、まずは前2者で市街地走行してみるが、トルクが分厚くリアステアによる4輪操舵も手伝ってか、低速域なのにもっさり走る感じがない。むしろ1930㎏の5メートル近いクルマが、かくも軽やかにスムーズに取り回せるということへの驚きの方が大きい。ダイナミックモードを十分に試すことはできなかったが、中立付近が敏感でなく優しい手ごたえだったステアリングのゲインが強めになること、シフトも一段ほど低い選択になったエキゾーストノートが高まることも確認できた。
それにしても角のない乗り心地と、軽快なハンドリングが印象に残る。サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式だが、エンジンルームをのぞくとフロント側アッパーマウントがかなり内側に寄せられ、ダンパーストローク長を確保していることが看取できる。ターボチャージャーをVバンク内に収めたメリットを、こんな形でも生かしているのだ。
「角のなさ」は先進運転支援機能にもいえることで、レベル2のそれは、前走車のペースに合わせた減速の仕方もレーンキープアシストの修正舵の介入も自然で、ドライバーの神経を逆撫でしない。シートも近頃では珍しいほど分厚い造りだ。居住性も高ければ静粛性も申し分なく、盤石の直進安定性もある。これらを享受しながらの高速巡航は、ほとんどクルマ自体が全知全能であるかのような体験で、悪天候時にも心強そうなことが想像できる。
機能主義のドライバーズカーとして独自の世界観を磨き続けてきたA6アバントは、その進化の方向と卓越した完成度によって、独特の美学をも感じさせる一台になった。
機能主義のドライバーズカーとして独自の世界観を磨き続けてきたA6アバントは、その進化の方向と卓越した完成度によって、独特の美学をも感じさせる一台になった。
Spec
Audi A6 Avant 55 TFSI Quattro S Line |アウディ A6アバント55 TFSI クワトロ Sライン
ボディ|全長 4,950 × 全幅 1,885 × 全高 1,465 mm
ホイールベース|2,925 mm
エンジン|2,994cc V型6気筒 インタークーラー付ターボ
最高出力| 250 kW(340 ps)/5,200-6,400rpm
最大トルク|500 Nm(51.0kgm)/1,370-4,500 rpm
トランスミッション|7段AT
駆動方式|4WD
サスペンション|前後ダブルウィッシュボーン
タイヤ|245/45R19
燃費(JC08モード)|12.3 km/ℓ
CO2排出量|189 g-CO2/km
トランク容量|565リッター
定員|5名
価格|1,041万円
Audi A6 Avant 55 TFSI Quattro S Line |アウディ A6アバント55 TFSI クワトロ Sライン
ボディ|全長 4,950 × 全幅 1,885 × 全高 1,465 mm
ホイールベース|2,925 mm
エンジン|2,994cc V型6気筒 インタークーラー付ターボ
最高出力| 250 kW(340 ps)/5,200-6,400rpm
最大トルク|500 Nm(51.0kgm)/1,370-4,500 rpm
トランスミッション|7段AT
駆動方式|4WD
サスペンション|前後ダブルウィッシュボーン
タイヤ|245/45R19
燃費(JC08モード)|12.3 km/ℓ
CO2排出量|189 g-CO2/km
トランク容量|565リッター
定員|5名
価格|1,041万円
問い合わせ先
アウディ コミュニケーション センター
0120-598-106
https://www.audi.co.jp/