最高のコンサートのごとく──コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ2022が開催| Concorso d’Eleganza Villa d’Este
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2022年6月30日

最高のコンサートのごとく──コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ2022が開催| Concorso d’Eleganza Villa d’Este

新時代のコレクター

一方、招待者投票による「コッパ・ドーロ」に選ばれたのは、1979年「アストン・マーティン・ブルドッグ」(タイトル上部の写真)であった。「時速200マイル(約321km/h)に到達できる車両を」という、あるスペシャルクライアントの要望に応えるかたちで当時メーカーが製作したものだ。
チューブラーフレームに既存の5.3リッターV8エンジンをミドシップしている。全高はわずか1.09メートルに過ぎない。1976年「ラゴンダ・シリーズ2」と同じ英国人デザイナー、ウィリアム・タウンズによる攻撃的なデザインは、今日見ても衝撃的だ。1981年に時速192マイル(約308km/h)を達成しているが、丹念なレストアに成功した現オーナーは、NFLオースティン・テキサスの共同オーナーでもある実業家フィリップ・サロフィム氏。
彼は、設計時のスペックである時速200マイルのテストランを計画している。そのサロフィム氏といえば、2018年のヴィラ・デステには、イタリア自動車史上記念すべきコンセプトカーの1台である1970年「ランチア・ストラトス・ゼロ」を持ち込み、賞を獲得している。
今回の受賞直後サロフィム氏は筆者に「今回の賞は、かつてこのクルマのために素晴らしい業績を残した人、レストアに尽力した人双方に捧げたい」と語った。彼は1986年生まれの36歳。かつてのアヴァンギャルドの自動車史的意義を理解する、新世代コレクターの登場は好ましい。名器といわれる楽器同様、たとえ名作でもしかるべき財力と鑑識眼をもった人物のもとで保管されないと、その輝きはたちまち失われてしまうからだ。
楽器ついでにもう一言お許しいただければ、例年以上に多様なクルマたちが揃った今年のヴィラ・デステはコニサー(目利き)たちにとって、古典から近代作品まで見事に組まれたコンサートプログラムに通ずる楽しさがあったはずである。
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