最高のコンサートのごとく──コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ2022が開催| Concorso d’Eleganza Villa d’Este

2022年コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステにて。「BMW“M”カーとその祖先たち」クラスに参加した1978年「BMW320」グループ5ツーリングカーレース仕様

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2022年6月30日

最高のコンサートのごとく──コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ2022が開催| Concorso d’Eleganza Villa d’Este

Concorso d’Eleganza Villa d’Este|コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ

コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ2022リポート

イタリア北部、世界的な高級リゾートとして知られるコモ湖のほとりを舞台に開催される「コンコルソ デレガンツァ ヴィラ・デステ」、通称「ヴィラ・デステ コンクール」が2022年も開催された。現存する世界最古の自動車コンクールを、イタリア在住のジャーナリスト、大矢アキオ氏がリポートする。

Text by Akio Lorenzo OYA|Photographs by Mari OYA/Akio Lorenzo OYA

フィアット創業家3代目の密かな趣味

湖面ではモーターボートが行き交い、水上機もたびたび離陸し空高く舞う。そうした光景を一望できるグランドホテルには、今回も数々の物語を秘めたクルマたちが初夏の木漏れ日を浴びながら筆者を待っていた。
欧州を代表する古典車コンクール「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」が2022年5月21日-22日にイタリア北部コモ湖畔チェルノッビオで開催された。縮小版として開かれた2021年10月同様、隣接する「ヴィラ・エルバ」での参加車一般公開は今回もキャンセル。参加車オーナーとゲストのみで行われた。
2019年以来3年ぶりの初夏開催に。51台のエントラントが7クラスに分かれて競った
クラス数は前回同様7つだが、台数は47台から51台に増やされていた。
クラスB「コンプレッサー! スーパーチャージャー付きメルセデス・ベンツ」の参加車が集まる一角では、1936年「540Kスペツィアル・ロードスター」と対面することができた。当時1台あたり5カ月をかけたという、そのひときわ優雅なメーカー製ボディと、約30台(諸説あり)しか造られなかったことから、戦前型メルセデス・コレクターの間では垂涎の1台である。
その優雅さと対照的に、この時代のメルセデスのステアリングの重さと取り回しは、かなり大変であると、かつて専門家に聞いたことがある。
さらにスペツィアル・ロードスターは、全長5メートルを超えるうえ、ひときわ長大なエンジンフードをもつ。しかし、現オーナーで米国在住のリチャード・ワークマン氏は「時速30マイル(約48km/h)あたりからの走行安定性は、きわめて快適です」と筆者に教えてくれた。このクルマはクラスウィナーこそ逃したものの、選外佳作賞に選ばれた。
1936年「メルセデス・ベンツ540Kスペツィアル・ロードスター」
クラスC「ヴィラ・デステの150年」には、往年のホテルゲストたちが乗りつけたことをイメージさせるクルマたちが集められた。
クラスウィナーとなった1956年「クライスラー・クーペ」の初代オーナーは、フィアット創業家3代目の故ジョヴァンニ・アニェッリだった。彼はトリノの「ボアーノ」にカスタムメイドのボディをオーダー。実際に鑑賞しても、米国車の華麗さとカロッツェリア・イタリアーナの優雅さが素晴らしい調和をみせている。さらに当時としては珍しいグラスルーフまで備えている。ただし、当時アニェッリとしては、やはり他社製車を運転するのは気が引けたようだ。弟でパリを拠点としていた弟ウンベルトに譲っている。ちなみにフィアットは、アニェッリ兄弟の没後、2014年にクライスラーを傘下に収めている。もし彼らが生きていたなら、このクルマを堂々と乗り回すことができたのに、と思うと興味深い。
1956年「クライスラー・クーペ・ボアーノ」。発注したフィアットの総帥ジョヴァンニ・アニェッリの自動車趣味性がしのばれる。
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