Mercedes-Benz|メルセデスの環境適合車3台をブリーフテスト(1)
Mercedes-Benz Blue Efficiency Models|メルセデス・ベンツ ブルーエフィシエンシー
メルセデスの環境適合車3台をブリーフテスト(1)
メルセデス・ベンツ日本は「ブルーエフィシエンシー」の名のもとに、環境適合車種を続々と日本市場に導入している。クリーンディーゼル、ハイブリッド、そして小型軽量エンジンなど。なかでもE250CGIブルーエフィシエンシーアバンギャルドは、輸入車初のエコカー減税対象車の認定を取得した。
文=小川フミオ写真=河野淳樹
CO2ゼロへつづく環境テクノロジー
ブルーエフィシエンシーとは「CO2ゼロへつづく環境テクノロジー」を標榜するメルセデス・ベンツが展開するさまざまな技術の総称。最終目標は電気自動車や燃料電池車など排ガスを出さない、いわゆる「ゼロエミッションカー」だが、そこにいたる過程でも、さまざまなやり方でCO2を減らしていこうとしている。具体的には、排ガス中の窒素酸化物の量を劇的に減らした「クリーンディーゼル」エンジン、電気モーターと高効率エンジンを組み合わせたハイブリッド、さらに、小排気量化とともに過給して燃費とパワーの両立をはかった「CGI(Charged Gasoline Injection)」エンジンといったぐあいだ。
現在、日本に導入されている「ブルーエフィシエンシー」テクノロジー搭載したモデルを整理すると下記のようになる。
・SクラスHYBRIDロング(ハイブリッド)
・E250CGIブルーエフィシエンシー/同アバンギャルド(CGIエンジン)
・E320CDIアバンギャルド(クリーンディーゼルCDIエンジン)
・C250ブルーエフィシエンシー アバンギャルド(CGIエンジン)
・同 ステーションワゴン アバンギャルド(CGIエンジン)
C250ブルーエフィシエンシー アバンギャルドの2台は2009年8月25日、SクラスHYBRIDロングは9月3日、E320CDIアバンギャルドは10月6日に、日本発売されたもの。このラインナップ中、ディーゼル以外のモデルを試乗する機会に恵まれた。
メルセデス・ベンツ SクラスHYBRIDロング
──独自の存在価値を築くリムジン
「Sクラス中4割を占める」と日本法人じしんが驚く好調な販売を記録しているのがSクラスHYBRIDロング。最大の特長は、3.5リッターV6ガソリンエンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムを採用している点で、エコカー減税対象車として、自動車取得税および重量税が100パーセント免除される。
Sクラスのスタンダード版が3,035mmのホイールベースに5,100mmの車体を搭載するのに対して、「ロング」は3,165mmのホイールベースに5,230mmとおおぶりな車体をもつ。わざわざロングホイールベース版との組み合わせを選んだ理由として、メルセデス・ベンツ日本ではハイブリッドは法人需要が多いと見込んでいたためとも聞くが、ふたを開けてみたら個人客でもハイブリッドを選ぶひとが多かったということだ。
SクラスHYBRIDロングのハイブリッドシステムの特徴は、エンジンとトランスミッションのあいだに薄型の電気モーターを入れて、加速時のパワーブースト、減速時の回生ブレーキ、信号待ちなどでエンジンが自動的に停止するECOスタート/ストップといった機能をもたせた、いわゆるマイルドハイブリッドである点。プリウスのように積極的に電気モーターを使うフルハイブリッドではない。
メルセデス流ハイブリッドの特徴とは
もうひとつ注目されたのが、量産ハイブリッド車としてははじめて、いち早く、小型軽量かつ高効率のリチウムイオンバッテリーを搭載した点にある。大きな電池容量を必要としないマイルドハイブリッドであることも手伝い、バッテリーはエンジンルームに収まって居住スペースやトランクルームを犠牲にしていない。
さらにガソリンエンジンも高効率化をめざしている。SクラスHYBRIDロングに搭載される3.5リッターV6は、4サイクルの吸気/圧縮行程において吸気バルブの開放時間を少し長くとることで熱効率を改善、結果として燃費向上と排ガス生成を制御するアトキンソンサイクルとなっている。プリウスやレクサスRXでも採用されているのと同タイプだ。環境適合性が高くなるいっぽう、デメリットは低回転域でのトルクが細くなるため、それを電気モーターのトルクで補う。その部分は日本の先達とおなじ考え方だ。
SクラスHYBRIDロングを運転すると気持ちよく動くのが印象的だった。2トンを超える車重に対して279馬力のエンジンは、数値から期待するより加速にかったるさをおぼえる場面があるが、そこでアクセルペダルを踏み込むと、電気モーターが作動。ハイブリッドシステムの作動モニターを見ていると、パワーのフローがモーターから後輪へ行くと同時に、いわゆるブースト機能を体感できる。いきなりぐぐっとクルマが前に押し出される感覚だ。これがメルセデス流のハイブリッドの特徴といえる。
フラッグシップとしての価値は守られている
SクラスHYBRIDロングの導入は、Sクラス全体のマイナーチェンジとともにおこなわれたため、ハンドルの舵角に応じてステアリングのギア比が変化する「ダイレクトステアリング」も装備される。このシステムの特徴は、直進性を高めるとともに、俊敏なハンドリング、そして低速走行時の取り回しのよさにある、と説明されている。たしかにSクラスHYBRIDロングのハンドリングのよさは特筆もので、5.2メートルもの車体とは思えぬほど軽々とコーナーを抜けていく。
かつシャシー性能が高く、ボディの剛性感、そして乗り心地のしっかり感など、メルセデスの頂点に位置するSクラスならではの価値はしっかりある。これは今回、Cクラス、Eクラスと乗り較べて再認識したこと。設計年次からいえばもっとも古いSクラスだが、フラッグシップとしての価値は守られている。
SクラスHYBRIDロングをかつて試乗したとき、燃費はリッターあたり10km近くを記録した。車体重量を考えると、驚く、といっていいぐらいの好燃費だ。環境適合性の高いリムジンというのも、独自の存在価値ととらえることができる。
メルセデス・ベンツ Sクラス ハイブリッド ロング
ボディ|全長5230×全幅1870×全高1485mm
エンジン|3.5ℓ V型6気筒DOHC
最高出力|205kW[279ps〕/6000rpm
最大トルク|350Nm[35.7kgm〕/3000~5500rpm
電気モーター|15kW[20ps〕
駆動方式|後輪駆動
トランスミッション|7速AT
価格|1405万円
MERCEDES CALL
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