2020年問題とフランクフルトショー|IAA 2015
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2015年9月18日

2020年問題とフランクフルトショー|IAA 2015

66th Frankfurt International Motor Show|第66回 フランクフルトモーターショー(IAA) 2015

2020年問題とフランクフルトショー

2年に一度、ドイツ・フランクフルトで開催される自動車ショー「第66回 フランクフルトモーターショー(IAA) 2015」が、今月15日から開催された。“環境”をテーマにしたモデルで目白押しの今回のショー会場。自動車メーカーがいま頭を悩ましている「2020年問題」とはなにか。現地から小川フミオ氏がレポートする。

Text by OGAWA Fumio

ドイツ勢のエコカー戦略

2015年9月に、独フランクフルトで開催された自動車ショー、通称フランクフルトショー。特徴をひとことで解説すると、エコカーのオンパレード。ポルシェの電気自動車にはじまり、アウディもフォルクスワーゲンもメルセデスベンツもBMWも、電気自動車やプラグインハイブリッドを数多く出展していた。

なぜかというと、自動車メーカーがいま頭を悩ましている「2020年問題」があるからだ。読者は先刻ご承知かもしれないけれど、欧州委員会が、欧州市場で販売される車両が排出するCO2の量を平均して走行キロあたり95g以下に抑えることを義務づけることになった。実施されるのが2020年である。超えてしまうと多額の制裁金を課金される。

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BMW X5 xDrive40e

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Volkswagen Tiguan GTE concept

自身の社会的責任に意識的であり、IR的にも環境適合企業であることが“マスト”といえる自動車メーカーにとって、なんとか2020年までにめどをつけなくてはならない。そこで昨今では、充電できて電気モーターの役割分担がエンジンよりも大きいプラグインハイブリッド(PHV)に注目が集まっているのだ。

ほんの少し前までPHVは一種ぜいたくな存在だった。価格も高く、オーナーは、社会的な責任を意識しつつ、社会で特権的な立場にあることを顕示するという、少し変な表裏一体の関係にあった。その流れがたったいま変わった。ドイツではプラグインハイブリッドの価格が(戦略的に)引き下げられ、いまやガソリンエンジン車と同等というモデルが出はじめている。

「プラグインハイブリッドならキロあたり90グラムを切れます。1台でも多く普及させて規制にひっかからないようにしたい」。ミュンヘンに本拠地を置くメーカーの広報担当者は、会場でその事情を解説してくれたのだった。

そこにあって、強力な布陣でPHVをはじめ、エコカー戦略を展開するのが、フォルクスワーゲンでありアウディである。

66th Frankfurt International Motor Show|第66回 フランクフルトモーターショー(IAA) 2015

2020年問題とフランクフルトショー (2)

依然として人気が高いSUV

「新開発の2リッター4気筒ガソリンエンジンは、従来の1.4リッターより燃費がよく、つまりCO2排出量が少ないんです」。話題の新型アウディ「A4」を発表した、アウディAGで技術開発部門を統括するドクター・ウルリッヒ・ハッケンベルグは、フランクフルトショーの会場で、そう語って胸を張った。

新型A4の新開発の4気筒エンジンは、従来のオットーサイクルでなく、ミラーサイクルという機構だ。トヨタ自動車も熱心だが、簡単に説明すると、混合気(燃料と空気が混ざったもの=これに着火して爆発させてピストンを動かす)を導き入れる吸気バルブの閉じるタイミングを調整して、圧縮比より膨張比を大きくし、燃焼効率をよくするところにメリットがある。

Audi A4

Jaguar F-PACE

「これからの社会はよりエネルギーを節約しCO2を低減する方向に向かいます。そこにあって都市化(都市内の移動に適した交通)は、インテリジェントな方向へとより強く舵を切っていきます」。こう述べるのは、フォルクスワーゲングループ監査役会のドクター・マルティン・ウィンターコーン会長だ。

インテリジェントというのは、昨今の自動車界におけるトレンディなキーワードで、電子の手助けを借りて燃費をよくしていくことを意味する。エンジンの燃焼技術のコントロールから、人間より燃費のいい運転を可能にする自動運転システムまで、あらゆることが含まれる。

Bentley Bentayga

BMW 7-Series

SUVは依然として世界的に人気が高く、今回のショーでも、ベントレーが「ベンテイガ」、ジャガーが「Fペース」を発表、という具合に、話題の新型車が揃った。フォルクスワーゲンは、「ティグアン」の新型を発表したが、とりわけ目玉は「GTE」というプラグインハイブリッドモデルである。電気モーターだけで50km走行する大型SUVで、大きなルーフを利用してソーラーパネルが埋め込んであるのが目を惹いた。

BMWは、フルモデルチェンジした「7シリーズ」がショーの中心となったが、なかでもプラグインハイブリッドモデル、740eの存在感を強調した。燃費がリッター50km近くに及び、キロあたりのCO2排出量は49グラム。「これからのラグジュリーセダンの在り方のベンチマーク」と宣言するに値する内容だ。くわえて、「X5」「3シリーズ」「2シリーズ」にも、数字の後ろに「e」がつくプラグインハイブリッドモデルを設定した。

66th Frankfurt International Motor Show|第66回 フランクフルトモーターショー(IAA) 2015

2020年問題とフランクフルトショー (2)

ピュアEVでスポーツカーを作る

「スポーツカーとEVは水と油のようにとらえられてきましたが、それを融合させることに成功しました」。ポルシェAGのマティアス・ミュラー社長の言葉とともに、ショー会場でベールを脱いだのは、「ミッションE」と名づけられた4ドアのコンセプトモデルだった。

「ピュアEVでスポーツカーを作るとどうなるかの例になると思います」。ミュラー社長がそう語るように、静止から100km/hまでを3.5秒で加速するというスーパースポーツカーなみの性能を有するという。充電はわずか15分しかかからず、日常的にどんな場合でも使えるポルシェ、ということが強調された。ただし現時点では、観音開きのドアを持ち、独特の曲面パネルで覆われたスタイルをもつミッションEはコンセプトモデルである。

Porsche Mission E

Ferrari 488 Spider

噂されていた「911」の4気筒モデルは姿を現さなかったが、効率のよいターボ技術によって、低回転域からのトルクアップをはかり、それによって燃費向上をはかるのが、これからの911のありかた、とミュラー社長は強調した。

「効率性がとても大事だというのは理解しています」。そう話すのは、アウトモビリ・ランボルギーニのステファン・ヴィンケルマンCEOだ。

「ただし、すぐに『アベンタドール』や『ウラカン』にターボ付きV6エンジンを搭載するようなことはしません。ファンがそれを期待していませんから。でも今度私たちが発表するSUV(現時点では『ウルス』の名で2018年発表といわれている)ではターボエンジンを使うことになるでしょう。(同じグループの)アウディが開発したプラットフォームですが、ランボルギーニの個性が存分に発揮されたモデルになるはずです」。

Lamborghini Huracan LP610-4 Spider

Honda Project 2&4

ウラカン LP610-4 スパイダー」をフランクフルトショーでお披露目したランボルギーニも、あたらしい時代へと向かう岐路へとさしかかっているのかもしれない。

ターボを先に採用したのはライバルのフェラーリで、このショーでは「488スパイダー」がお披露目された。依然人気が高いが、個人的に印象ぶかかったのは、本田技研のコンセプトモデル「プロジェクト2&4」だ。レースバイクである「RC213V」の1リッターV型4気筒ユニットを搭載した四輪で、わずかにボディが覆われているだけの手作り感覚のスポーツカーだ。ボディのペインティングは、60年代ホンダF1を思わせるもので、環境的な提言がなかったのは残念だが、この先に期待したいと思わせられた。

           
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