CLSシューティングブレークに試乗|Mercedes-benz
Mecedes-Benz CLS Shooting Brake|
メルセデス・ベンツ CLSシューティイングブレーク
スポーツクーペツアラーとは?
CLSシューティングブレークに試乗
日本にも導入されたばかりのメルセデス・ベンツ「CLS シューティングブレーク」。クーペとワゴンを融合させた流麗なスタイリングを誇る、そのコンセプトを、メルセデス・ベンツは“スポーツクーペツアラー”と呼ぶ。しかしこのクルマ、見た目が華麗で、実用性が高いだけではない。日本導入モデルのほぼすべてを一足先にテストした、渡辺敏史氏が、その実力に迫る。
Text by WATANABE Toshifumi
あって然るべきバリエーション
形式上は4ドアセダンながら、その名をみればわかるようにメルセデスの社内においてはクーペという位置づけになっているクルマが、巷でもお馴染みとなった「CLSクラス」だ。
そのCLSをベースとし、ワゴンを仕立てる。このクルマは単に安易なおもいつきから生まれたわけではなく、かねてからメルセデス自身が暖めてきた企画が具現化したものなのだとおもう。なにより「シューティングブレーク」という名前が、それを物語っているようにおもえてならない。
シューティングブレークはもともとイギリスにおいて発生したクルマのいちバリエーションだ。貴族や富裕層にとってのレジャーでもあり社交でもある狩猟には、細身のライフルケースやハンタードッグが運べるクルマが求められる。が、それらを収めるには四輪駆動車ほど大掛かりなものを必要とはしない。ラグジュアリーな2ドアクーペのボディ後半をワゴン風に架装することで、そのニーズをスマートに満たせるのではないか。そんなところに端を発している。
すなわち、メルセデスにとってクーペであるCLSをベースにワゴンをつくることは、シューティングブレークの主旨になんら反するものではない。どころか、あって然るべきバリエーションということなのだろう。現にこのスタイリングコンセプトは、初代CLSが現役だった08年の時点で、世に公開されてもいる。
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ワゴン化を評す
「CLSシューティングブレーク」のサイズは、通常の「CLS(CLSクーペ)」にたいして、全長がわずか15mmの延長に留まるのみ。その差異はほぼなしとしていいだろう。ただし上下の薄さを際立たせるグラスエリアのデザインもあって、後方視界はワゴンのそれとしては褒められるものではなく、「パークトロニック」やリアビューカメラが標準で備わることが有り難く感じられる。
荷室容量は標準時で590リットル、後席を倒せば最大1,550リットルまで拡大。くわえてフロアボード下には大容量のシークレットスペースも確保されている。
たいして「Eクラスステーションワゴン」のそれは標準時655リットルの最大1,910リットル。荷室形状も含め通常時の容量的な差異は我慢できるレベルだ。
ちなみにフロアボードはオプションでオークとの象嵌仕立てとなるチェリーウッドのフローリングにドレスアップすることも可能。
防水性にも配慮された素材には滑り止めのゴムを組み合わせたアルミレールが填め込まれるなど、ルックスだけでなく使い勝手にも抜かりはない。手の込んだ仕立てもあって価格は高額になりそうだが「シューティングブレーク」という名を掲げる以上、ハイライトのドレスアップは是非とも奢りたいところだ。
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実力をともなう“スポーティ”
基準仕様の足まわりはフロントが「CLSクーペ」と同様のコイル式ストラットであるのにたいし、積載荷重に備えてリアはオートレベライザー機能付きのエア式マルチリンクを標準とする。ダンパーはクーペ同様のセレクティブタイプだ。そこにAMGスポーツパッケージをくわえることで、四輪独立可変・車高調整付きの「エアマチック」が与えられるという算段だ。
ヨーロッパではディーゼル2種、ガソリン2種と計4つのエンジンバリエーションを用意し、ガソリンモデルにはそれぞれ4輪駆動の「4MATIC」版も備わるCLSシューティングブレークのラインナップだが、日本への導入はガソリンモデルのFR版「CLS 350 BlueEFFICIENCY シューティングブレーク」と4MATIC版「CLS 550 4MATIC BlueEFFICIENCY シューティングブレーク」を予定。そこに「CLS 63 AMG シューティングブレーク」がくわわっての3モデル構成となる。
AMGモデルのパフォーマンスは言うに及ばず、550の4MATICにおいても0-100km/h加速は5.3秒と一線級のスポーツカーに比類するほど。最高速は全車250km/hでリミッターを作動させるほどだからして、そのスポーティなイメージを充分にフォローするものといえるだろう。
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エレガンスとユーティリティの見事な調和
試乗には生産の関係で4MATICモデルが間にあわなかったものの、日本導入仕様のエンジンバリエーションはすべて試すことができた。
結論から先にいえば、動力性能的になんら不満がないだけでなく、V6エンジンのマスの小ささからくる動きの軽さが気持ちいい「350」のフィーリングが、シューティングブレークというキャラクターにもっともマッチしているようにおもえた。
「550」はややノーズの重さが目立つものの、4MATICとのコンビネーションでは盤石の安定性とともに、路上ではラグジュアリーSUVのオルタナティブとしてもしっかりと存在感をしめすようになるだろう。
そして爆発的なパワーをしっかり手なづける「63 AMG」は、おなじエンジンを積む「Eクラス」よりひときわソリッドなハンドリングも相まって、稀有なスーパースポーツワゴンとしてのキャラクターを際立たせている。
とはいえ、CLSシューティングブレークに乗ると感心させられるのはその乗り味の鷹揚さだ。それこそ、こちらが望まなければスポーツの一面をおくびに出すこともなく、淡々と路面をいなし、文字通りビタンとまっすぐに走り抜け、乗員を目的地に運んでくれる。
絶妙なサスペンション コントロールでつねに上屋をフラットにたもつ、その乗り心地は“メルセデスライド”と称されるが、このクルマにもしっかりそれが受け継がれている。ワゴン化によるリアまわりの遮音も抜かりはなく、CLSクーペとの差異はほとんどないとみていいだろう。
クーペのエレガンスとワゴンのユーティリティを兼ね備えるスポーツサルーン。言葉にすると欲張りに過ぎて散漫な印象だが、CLSシューティングブレークはそのいずれもを見事に丸くまとめあげている。新鮮な商品力もあいまって、メルセデスのあらたな看板モデルとなることは約束されたも同然だろう。