OPENERS CAR Selection 2013 渡辺敏史 篇
CAR / FEATURES
2015年4月2日

OPENERS CAR Selection 2013 渡辺敏史 篇

OPENERS読者におくる2013年の5台

OPENERS CAR Selection 2013 渡辺敏史 篇

モータージャーナリスト渡辺敏史氏が、2013年に登場したクルマのなかから気になった5台をセレクト。昨年につづき、今回もOPENERS CARにて執筆したジャーナリスト6名が、2013年のクルマで注目したい5台を選出し、ことしのクルマについて総括していただいた。

Text by WATANABE Toshifumi

充実した先進の安全装備が求められた

今年の市況を振りかえると、折からの低燃費指向にくわえて先進安全装備の充実──と、売れ筋のクルマに求められる要件がひとつ増えた感がありますね。象徴的だったのはダイハツとスズキという軽業界の2トップが、衝突軽減ブレーキを5万円程度という低価格での供給体制を採ったこと。そして販売好調の輸入車市場を牽引したCセグメントの新型車が軒並みそれを標準装着していたことでしょうか。もはや新型車にそれの用意がないというのは、大きな商機を逃がすことになる。日本のマーケットはそういうことになっているわけです。

言い換えれば、オートブレーキの類がこれほど普及している国はない。この流れが自動運転技術の実地投入へと進んでいくことは、技術発展の面からみれば悪くないことだとおもいます。

たとえば今年の話題の中心にあったフォルクスワーゲン「ゴルフ」は、オプション対応ながら前車追従型のクルーズコントロールと共に車線内に車輌をとどまらせるアクティブなレーンキープシステムを市場投入しました。高価格帯はともあれ、このクラスでそこまでの先進安全装備を投入しているメーカーはほかにありません。他国より受容性のいちじるしく高い日本市場での展開は、フォルクスワーゲンにとってもさまざまな反応をみる上で非常に興味深いところだろうと察します。

また、ボルボが「V40」等で搭載する歩行者衝突軽減ブレーキは制御アルゴリズムを開発するために、渋谷のスクランブル交差点をテスト地に選んでいたそうです。都市部人口密度の高さやトラフィックの平均速度、道路インフラのコンディションなど、世界的に見ても日本はユニークな場所なんですね。だからこそ、自動運転技術を普及させていく上でもっとも大きな課題であるモラル形成や法整備といったところでも、ひな型たる心構えがないといけません。

2014年はこの手の技術展開がさらに加速するだろう、そこにくわえてドイツ勢、フォルクスワーゲンとBMWのコンシューマー向けEV展開が控えています。未来への距離がグッとちかくかんじられるだろう、そんな年になりそうです。日本メーカーにかんしては、近年輸入車に大きく水を開けられていた動的な質感の向上がひとつのテーマになるでしょうか。その端緒はマツダやホンダのモデルなどから感じられるようになってきましたし、スバルは日本市場の期待にこたえる走り自慢のステーションワゴンをデビューさせます。こうなると、トヨタや日産もうかうかしてられない風向きになってくるでしょうね。

渡辺敏史がOPENERS読者にオススメする2013年の5選

Porsche Cayman|ポルシェ ケイマン

Porsche Cayman
ポルシェ ケイマン(2.7ℓ、6MT)

今年の顔、「ゴルフ7」のトータルパフォーマンスの素晴らしさには確かに舌を巻きました。が、同様に参りましたと頭を垂れるしかないできばえだったのがケイマンです。

一番のポイントはボディの剛性バランスの改善によるリファインされた乗り味。あらかじめ「ありき」でつくられたこともあって、911より高剛性でありながら日常域から全開のスポーツ走行まで極上のしなやかさを供してくれます。

環境性能や実用性もふくめ、三桁万円クラスのあらゆるスポーツカーのベンチマークと断言できます。

Mercedes-Benz C 63 AMG Edition 507|メルセデス・ベンツ C 63 AMG エディション 507

Mercedes-Benz C 63 AMG Edition 507
メルセデス・ベンツ C 63 AMG エディション 507

世の中的にはすでにあたらしい「Cクラス」の概要が発表されたところで、見る限り、相当大胆な進化をとげていることが予想されます。

いっぽうで、個人的には現行型のCクラスも、コンパクトなボディにメルセデス・ベンツらしいライドフィールがギュッと詰め込まれた、稀代の名車ではないかとおもうわけです。いわゆる、輸入車は熟成が進んだ最終モデルを買うのが吉──みたいな話でいえば、いまのCクラスはどれを買ってもまちがいなし。特にAMG設計・製造と贅沢な6.2ℓV8が搭載された「C 63 AMG」には、今後こういう感じのクルマは出てこないだろうなあとおもわせる無二の魅力が宿っています。

Chevrolet Corvette Z51|シボレー コルベット Z51

Chevrolet Corvette Z51
シボレー コルベット Z51

OHVのV8にフレーム構造のシャシー、横置きリーフのサス──と、C7「コルベット」は50年以上つづくコルベットの基本構造をキッチリ受け継ぎました。が、そのディテールはすべて最新のテクノロジーで磨き上げられています。
これ、べつに温故知新というわけではなく、GMのエンジニアはこれがベストと信じ切っているんですね。自分のスタイルを崩さずにポルシェやフェラーリとも対峙する、その意気やよし。ちなみにC7、最新のスポーツカーたちとガチで競える質感や乗り心地までゲットしています。

LEXUS IS F Dynamic Sport Tuning|レクサスIS Fダイナミック スポーツ チューニング

LEXUS IS F Dynamic Sport Tuning
レクサスIS Fダイナミック スポーツ チューニング

日本車は走りのフィーリングがイマイチ。レクサスですらベンツ、ビーエムには遠くおよばない。──と、そのレクサス、近頃はそういう先入観をくつがえす動的質感をもつクルマが増えてきました。昨年の「GS」然り、そして今年の「IS」然りで。

で、そのIS。すでに旧型となった車台をベースに5ℓV8を押しこんだスポーツグレードの「IS F」は、まもなく生産終了が予想されます。その最後も最後に突っ込んできた特別仕様車がこれ。開発陣の執念が隅々に乗り移った走りは、先述の「C 63 AMG」にも一矢報いるほどの鮮やかさをみせてくれました。

 Mazda Axela 1.5S|マツダ アクセラ 1.5S

Mazda Axela 1.5S
マツダ アクセラ 1.5S

走りが冴えないという日本車の印象を“スカイアクティブ テクノロジー”でくつがえしつづけているマツダですが、そのモデルラインナップの中でも決定版といえるのがこのアクセラです。

いわゆるゴルフクラス、欧州勢が十八番のCセグメントに相当するコンパクトカーですが、乗り心地もさておき、意のままに扱えるコーナリングの気持ちよさは彼らのモデルにまったくひけをとっていません。しかもベストバランスの1.5ℓグレードは170万円強~のプライスタグ。運転を愛する御仁にとっては、日本に生まれて良かったとおもわせてくれる文句なしの仕上がりです。

           
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