メルセデス・ベンツ CLAクラスに試乗|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz CLA 250|メルセデス・ベンツ CLA 250
最小の4ドアクーペ
メルセデス・ベンツ CLAクラスに試乗
メルセデス・ベンツ「CLAクラス」は、2012年の北京モーターショーで発表された、「コンセプトスタイルクーペ」の市販版といったモデルであり、「メルセデス・ベンツ CLS」の弟分という位置づけのコンパクト4ドアクーペだ。「Aクラス」や「Bクラス」
と基本構造を共有し、成長しつづける、プレミアムコンパクト市場に投入される、この、メルセデス・ベンツの成長戦略における最後のキーマンを、渡辺敏史氏がひとあし早くテストした。
Text by WATANABE Toshifumi
次世代を担うストラテジーの中核
新興市場の隆盛にくわえ、先進国でのダウンサイジングニーズ拡大を背景に、コンパクトカーセグメントは成長の一途を辿っている。そのなかで、高付加価値をウリとするプレミアムカテゴリーのシェアも、2020年時点で現在の600万台から1,000万台超にまで市場規模が大きくなるというのが大方の見方だ。
BMWやアウディ、レクサスといったブランドがこのカテゴリーに注力しているのはご存知のとおり。そしてメルセデスが目指すのはこのセグメントにおけるトップシェアである。各社が掲げる野心的な台数増の販売戦略は、声高に言わずとも彼らとておなじ。嗜好の多様化やパワートレーンの進化にも応える柔軟な拡張性や、世界に展開する工場においての生産性などを考慮すると、FFプラットフォームの刷新は次世代を担うストラテジーの中核といっても大袈裟ではない。
そのあたらしいプラットフォームをベースとしたバリエーションは当面5つを予定している──というのはメルセデス側のアナウンス。メルセデス・ベンツ CLAクラスはA・Bクラスに次ぐ第三の車種となる。
全幅や全高、ホイールベースをAクラスとおなじくし、メルセデス・ベンツ CLSクラスのイメージを色濃く受け継ぐ4ドアクーペ。その全長は4,600mm超と、サイズ的には現行「Cクラス」とほぼ同一。この車格がなにを意味するかといえば、FFプレミアムコンパクト戦略を受けて、次期Cクラスが一線を画するべくサイズアップするだろうということだ。
Mercedes-Benz CLA 250|メルセデス・ベンツ CLA 250
最小の4ドアクーペ
メルセデス・ベンツ CLAクラスに試乗(2)
短時間ながら4MATICモデルに試乗
CLAクラスの先進安全装備は基本的にAクラスが搭載するそれに準拠する。
が、全車標準装備となるレーザーレーダーによる追突回避支援システム「CPA」は、このCLAクラスから作動下限速度が30km/hから7km/hへと大幅に引き下げられ実効性が向上。ミリ波レーダーをつかった全車速追従型のディストロニックプラス及び追突回避・軽減のオートブレーキシステムは、両側後方の車輌接近をミラーに表示するブラインドスポットアシスト等と併せてオプションで装着が可能になるはずだ。
メルセデス・ベンツ CLAクラスが搭載するエンジンはガソリン3種類、ディーゼル1種類の計4種類となる。
日本仕様の詳細は検討中とのことだが、A・Bクラスと同様、122psを発揮する1.6リッター直噴ターボのCLA180と、211psを発揮する2リッター直噴ターボのCLA250はおそらく投入されることになるだろう。
くわえて、メルセデス・ベンツ CLA250にかんしては四駆=「4マチック」仕様の導入も噂されている。
これはメルセデスがFFパワートレーンのために設えた、まったくあたらしいメカニズムで、7G-DCTのミッションケース内にトランスファーを内包、電子制御油圧クラッチのオイルラインをミッションオイルと兼用することで小型軽量化を実現したものだ。
ロジックは必要に応じて後輪側へと駆動力を分配するオンデマンド型。短時間ながらかなった試乗は、ところどころに砂利の浮くワインディングだったが、素早いレスポンスとともに、操舵感を濁らせない適切な配分のさじ加減を確認することができた。もちろん、先のNYショーで発表された「メルセデス・ベンツ CLA 45 AMG」も、このドライブトレーンをベースに専用チューニング&マネジメントをくわえ、360psを吸収することになる。このモデルもまた、日本導入の可能性は大とみていいだろう。
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最小の4ドアクーペ
メルセデス・ベンツ CLAクラスに試乗(3)
ティピカルなメルセデスライド
先出の2モデル、特にAクラスにかんしてはグレードを問わずスポーティなハンドリングを際立たせているのにたいして、メルセデス・ベンツ CLAクラスは4ドアサルーンというポジションもあり、チーフエンジニア曰く「ティピカルなメルセデスライドを意識した」という。
コイルやアブソーバーの専用チューニングにくわえて、リアのサブフレームマウントをラバー化するなどの変更を施したその乗り味は、確かにAクラスのそれとは一線を画するしなやかなものだった。ランフラットタイヤの特性にも起因しているだろう、角張った突きあげは、ごく低速域や鋭利な凹凸のみにとどめられ、速度が乗るほどに丸みを増していくそのライドフィールは、Cセグメントの範疇を超えた上質さを感じさせる。
そのぶん、操舵にたいする反応の機敏さなどは若干ながら穏やかになった印象もあるが、スポーティなドライビングにも充分応えてくれるものであることにちがいはない。
個人的にはスポーツハッチを唱うAクラスはともあれ、Bクラスにもこのチューニングの方向性を採用すべきではないかとおもう。
それほどにメルセデス・ベンツ CLAクラスの乗り心地は一気に洗練された恰好だ。
前代未聞のCd値
そして速度が高まるほどに際立つのは高い静粛性。フロア下からの侵入音もしっかりと封じ込まれ、サッシュレスにしてピラーまわりからの吸い出し等もまったく気にならず……と、全体のノイズレベルは驚くほどに低い。
この静かさに一助しているのは突出したエアロダイナミクスであることは明らかで、特にCd値はほぼ全グレードで0.23、ミラーやホイール等の意匠を最適化したグレードでは0.22を実現している。
昨今のメルセデスは車種を問わず空気抵抗の低減に並みならぬ力を注いでいるが、メルセデス・ベンツ CLAクラスのそれは一般的なパッケージの量販車では前代未聞、究極に近い数字といえるだろう。ドライバーはその数字の恩恵を、空気を壁と感じるどころか、壁の隙間に滲み入るかのような淀みのない加速感覚にもみてとれるはずだ。
日本市場においてのCセグメント級のセダンというのは、どちらかといえばニッチ的なポジションにあたるだろう。が、メルセデス・ベンツ CLAクラスはそのデザインやサイズ感、走りの質感においても充分期待にこたえる仕上がりになっている。その上陸は今秋の予定。マーケットでの反応が楽しみな1台だ。
Mercedes-Benz CLA 250|メルセデス・ベンツ CLA 250
ボディサイズ|全長4,630×全幅1,777×全高1,436mm
ホイールベース|2,699 mm
トランク容量(VDA値)|470 リットル
重量|1,480 kg
エンジン|2リッター直列4気筒 直噴DOHCターボ
最高出力| 155.2kW(211ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|350Nm(35.7kgm)/ 1,200-4,000 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(DCT)
駆動方式|4WD
タイヤ |225/45R17
最高速度|240 km/h
0-100km/h加速|6.7 秒
燃費(NEDC値)|6.1-6.2 ℓ/100km
CO2排出量|142-144 g/km
価格|38,675ユーロ