マセラティ クアトロポルテに試乗|Maserati
Maserati Quattroporte|マセラティ クアトロポルテ
クアトロポルテ50周年の節目に7代目へとモデルチェンジ
マセラティ クアトロポルテに試乗
1963年の初代モデル登場から、じつに半世紀の歴史をもつに至った、マセラティのプレミアムサルーン「クアトロポルテ」が、フルモデルチェンジを果たし、
デトロイトモーターショー2013でワールドプレミアをかざった。動的性能と同時に、環境性能、居住性、快適性も向上させる現代化のメスを、マセラティは、クアトロポルテに、いかに振るったのだろうか? 渡辺敏史氏が、量産目前の新型に試乗した。
Text by WATANABE Toshifumi
マセラティ流ダウンサイジング
50年代まではサーキット出自のレーシングカーコンストラクターであったマセラティ。そのビジネスを長年ささえてきた陰の功労者である「クアトロポルテ」は今年、初代誕生から50周年を迎える。そのタイミングにあわせるカタチでフルモデルチェンジを果たし、マセラティ曰く、7代目のモデルとなった。
日本でもっとも売れたマセラティとなっただろう先代にたいして、まず大きくかわったのはエンジンのバリエーション。前型のV型8気筒自然吸気ユニットにかわり、新型では3.8リッターV型8気筒と、3リッターV型6気筒の二本立てとなる。マセラティ流にダウンサイジングコンセプトを採り入れたことになる、まったくあたらしいこのユニットは、シューマッハ連勝時代のスクーデリア・フェラーリでエンジン設計を担当したエンジニアがマセラティに移籍し、設計を担当。その製造は前型に引きつづき、全量をフェラーリが担当することになる。
V8とV6とは、主要部品を共有化するモジュール設計となり、V8エンジンはツインスクロールタービンを採用。530psを6,800rpmで発揮と、ターボにして高回転域までパワーをしっかり繋げたセットアップがなされているのが特徴だ。たいしてベーシックなニーズに多く応えるかたちとなるだろう、V6直噴ツインターボは、410psの出力とともに1,750rpmから550Nmのトルクを発生。車格に見合ったパワーとともにフレキシビリティも確保している。
ちなみに前者の最高速は307km/hとマセラティの量産モデルとしては過去最速。0-100km/h加速は4.7秒となる。後者においても285km/hの最高速と5.1秒の0-100km/h加速は、「クワトロポルテS」を上まわるものだ。いっぽうで、CO2排出量はダウンサイジング効果もあり、先代比で20パーセント以上改善されている。
Maserati Quattroporte|マセラティ クアトロポルテ
クアトロポルテ50周年の節目に7代目へとモデルチェンジ
マセラティ クアトロポルテに試乗(2)
より広く、より軽く
エンジン背後にマウントされるオートマチックトランスミッションは、従来の6段オートマチックより4kg軽量化されたというZFの8段オートマチックを採用。V6モデルでは、このトランスミッションに、マグナシュタイアと共同開発した電子制御センターデフシステムを組みあわせた4WDモデルも、FRとともに用意される。北米や新興国市場でのニーズを見据えたこの駆動システムはスタンバイ式で、通常は0:100のFR状態を保ち、挙動に応じて0.15秒以内に最大50パーセントの駆動力が前輪へと配分される仕組みだ。
噂されるEセグメントサルーンの登場を見据えてか、新型クアトロポルテのサイズは数字的にみれば前型にたいして、ひとまわり大きくなった。「Sクラス ロング」にも比する堂々とした体躯であるいっぽう、アウターの大半をアルミ化するなどの材料置換や設計最適化が施され、車重は前型比で最大100kg減となる。
大型化を利して劇的に向上したのは居住性や積載力で、後席フォールディング機能つきのトランクスペースは容量にして80リットルのプラス、後席のレッグスペースは100mm以上のプラスとなる。実際に座ってみても、180cm級の大人が足を組めるほどのゆとりはショーファードリブンとしても最上の部類に入るもので、あらたなユーザーニーズを掘り起こすことになるだろう。
Maserati Quattroporte|マセラティ クアトロポルテ
クアトロポルテ50周年の節目に7代目へとモデルチェンジ
マセラティ クアトロポルテに試乗(3)
贅沢にアップデート
デコレーショントリムづかいが大胆になったタンブルシェイプのダッシュボードは、もちろんアッパーからのレザーラップで仕立てられる。シートは標準でも本革が用意されるが、さらにオプションで高品質な3つのレザー&アルカンタラトリムを用意。セミアニリン染めのマテリアルはポルトローナフラウが仕立てたものとなる。
中央に据わる8インチのインフォテイメントシステムに、各種コントロールパネルもインテグレートされたことにより、車内に配されるスイッチ類の数は前型比で半減。車内のすっきりした印象に一与している。オーディオはオプションで16チャンネルアンプ、15スピーカーで1,280Wの「B&Wハイファイシステム」が用意されるなど、装備面も今日的なアップデートが隅々まで施された。
最終のプリプロダクションというタイミングで用意された試乗車は、3.8リッターV8のモデル。走りだしてまず驚くのはその静かさ、滑らかさになるだろうか。傍で聞いていれば充分に猛々しい存在感を伝えるエキゾーストサウンドは車中ではしっかり抑えられ、積極的な操作をしない限りはエンジンが必要以上に吠えることもない。
くわえてロングホイールベース化も奏功してのしっとりとした乗り心地はラグジュアリーユースにも充分対応するもの。この点、先代の獰猛さを知る向きには若干物たりなさを覚えるかもしれないが、逆にいえば新型はそれほどダイナミックレンジが広がったと察することもできる。
Maserati Quattroporte|マセラティ クアトロポルテ
クアトロポルテ50周年の節目に7代目へとモデルチェンジ
マセラティ クアトロポルテに試乗(4)
高いポテンシャル
その予想が間違いではなかったと知るのはスポーツモードでワインディングを駆けた時だった。大胆な重量減を果たした新型クアトロポルテの振る舞いはあきらかに軽快で、かつストロークのしっかりと採られた「スカイフック」サスペンションは、ハイアベレージでも路面にしっかり追従し、ドライバーに大きな安心感をもたらしてくれる。
ここ数年のモデルをみるに、マセラティのシャシーチューニングはアジリティとスタビリティの折りあいが絶妙で、万人にコントロールしやすいものになっているが、新型クアトロポルテもその例に漏れず、この手のサルーンとしては相当飛ばせるクチに仕上がっているといえるだろう。
アイドリングから1,500rpmあたりまでのごく低回転域から力強いトルクを発するあたらしいエンジンは、街中を這いまわるような使いかたを余儀なくされる時でもストレスフリーの穏やかなドライブを可能にしてくれる。いっぽうで、まわせばその速さは圧倒的。スペックにあらわれる通り、ターボユニットにありがちな高回転域での頭打ち感はなく、レッドゾーンまで綺麗にパワーを乗せているのでフィーリングも至ってすっきりしている。
今後のマセラティの主力となるこのユニット。初出の仕上がりは充分期待に応えるものだった。今後考えられるエボリューションモデルの追加にも、対応できるポテンシャルも備えているといえるだろう。
すべてがあたらしいアーキテクチャへと一新された、クアトロポルテは、マセラティの未来をうかがうに相応しい洗練性と情感とを折りあわせた仕上がりをみせていた。
日本市場への上陸はこの春先となる予定だ。
Maserati Quattroporte V8|マセラティ クアトロポルテ V8
ボディサイズ|全長5,262 × 全幅1,948 × 全高1,481 mm
ホイールベース|3,171 mm
トレッド 前/後|1,634 / 1,647 mm
トランク容量|530 リットル
重量|1,900 kg
エンジン|3,798cc V型8気筒ターボ
最高出力|390kW (530ps)/ 6,500-6,800 rpm
最大トルク|710Nm / 2,250-3,500 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|FR
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン / 5リンク
タイヤ 前/後|245/40 ZR20 / 285/35 ZR20
ブレーキ|ベンチレーテッドディスク
最高速度|307km/h
0-100km/h加速|4.7秒