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2020年6月22日
サステナブルファッションを実現するためにできること
ファッションにおけるサステナビリティとは何か
2015年に国連サミットでSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)が採択されたことで、サステナビリティへの関心が世界的に高まっている。個人一人ひとりがそれぞれの生活を見直して、地球への負担を減らす意識を持つべき時代に突入した、ということである。2020年を生きる我々だけでなく、次代を担う子どもたちやその先の世代のために今できることは一体何か。環境や社会に優しい選択を、まずは毎日のファッションから取り入れてみてはいかがだろうか。
Text by ANDO Sara
今日から実践できるサステナブルアクション
実は、ファッション産業は石油産業に次いで世界で2番目に環境汚染を引き起こしているといわれるほど、地球に負荷を与えることが懸念されている。問題となっているのは「大量生産・大量消費・大量廃棄」の社会システムだ。ファストファッションの台頭により、衣料品の消費量は年々増え、それに伴い一人当たりの衣類の廃棄量も増えている。現在、日本における衣料品の廃棄量は年間で約100万トンといわれており、枚数に換算すると毎年約30億着の服が捨てられていることになる。その量もさることながら、これに対して毎年の衣料品供給量は40億着を上回るという。
一見関係ないように思えるが、これが地球環境に大きな影響を及ぼしているのだ。年を追うごとに深刻化している地球温暖化の原因である二酸化炭素の全排出量のおよそ10%をファッション産業が占めていることはあまり知られていないかもしれない。一着の服には、製造から輸送、調達、販売、回収、廃棄に至るまで、たくさんのエネルギーが消費されると共に二酸化炭素が発生する。さらに、衣服を作る過程や廃棄焼却処分で生じる温室効果ガスや汚染水、ダウンやレザー、ファーを使うために動物を大量に処分することなど、看過できないほどの地球の危機的状況が広がっている。
こうした背景を踏まえ、ファッション性と地球環境保護の両立を目指し、サステナビリティを意識したブランドや企業が増加している。サステナブルであることがクールでオシャレだと消費者に訴えながらブランディングを図る企業も多く見られるようになってきた。
ハイブランドの中でも、いち早くサステナブルな活動に取り組んだのがSTELLA McCARTNEY(ステラ・マッカートニー)だ。菜食主義者で動物愛護家でもあるデザイナーのステラは、ブランドを設立した2001年からレザーやファー、羽毛といった動物由来の素材やPVC(ポリ塩化ビニール)は一切使用せず、代わりに再生カシミヤやナイロンをもとにした再生繊維、人工スパイダーシルクなど環境に優しい素材を使い、コレクションを発表している。
ステラ マッカートニー(@stellamccartney)公式インスタグラムより
GUCCI(グッチ)もサステナブルな活動に早い段階から取り組んでいるブランドのひとつだ。2017年には、2018春夏コレクションをもってアニマルファーの使用を禁止するというファーフリーを宣言し、天然毛皮や動物の一部を使用したアイテムを一切廃止。翌2018年にはGUCCI EQUILIBRIUM(グッチ エクリブリウム)という特設サイトを立ち上げ、そこで様々な活動を報告している。サステナブルな素材を使用した商品を製造し販売することに加え、ジェンダーの平等や途上国の生活向上など、多角的な視点から持続可能な社会の実現に貢献している。
グッチ(@gucci)公式インスタグラムより
PRADA(プラダ)とMIU MIU(ミュウミュウ)を展開するプラダグループも2019年にファーフリー宣言を行い、2020年春夏コレクションから動物の毛皮を使った製品を廃止している。また、プラダは再生ナイロンを使ったプロジェクト「Re-NYLON(リ・ナイロン)」を立ち上げ、2021年までに使用するナイロンをすべて再生素材に切り替えるという取り組みを行っている。
上記は一例であり、現在多くのブランドが環境やサステナビリティに配慮したモノづくりやプロジェクトを展開している。これは消費者行動に反応する一過性のトレンドではなく、地球規模の大きなテーマとして今後より重要な行動指針になっていくはずだ。「サステナブルかどうか」が洋服を選ぶ基準になるのが当たり前になる日も近いかもしれない。
2013年、バングラデシュの首都ダッカ近郊で起きた縫製工場が入ったビルの崩落事故は記憶に新しいものであろう。1100人以上の命が奪われ、2500人以上の負傷者が出る大惨事となったが、これをきっかけに安全で整備された労働環境などを整えていくことが重要視されるようになった。
このようにファッション業界においてサステナブルであるためには、環境に配慮しているだけでなく、業務に従事している労働者の雇用と安全を保証していることも重要だ。その条件として、清潔で安全な労働環境が整っているか、労働者に対して適切な賃金が支払われているか、生産はできるだけ地元のものでまかなわれているか、素材のために海や河川を汚染したり労働者の健康を害したり動物を殺したりしていないか、などが挙げられる。
このようにファッション業界においてサステナブルであるためには、環境に配慮しているだけでなく、業務に従事している労働者の雇用と安全を保証していることも重要だ。その条件として、清潔で安全な労働環境が整っているか、労働者に対して適切な賃金が支払われているか、生産はできるだけ地元のものでまかなわれているか、素材のために海や河川を汚染したり労働者の健康を害したり動物を殺したりしていないか、などが挙げられる。
SDGsが世界中で注目を集め、企業だけでなく個人にもサステナブルな取り組みの実践が期待される一方で、「具体的に何から始めればいいのかわからない」という声も多いのも現状だ。しかし難しく考えることはなく、我々の日常的な行動が、環境・資源の保護や維持に繋がっていることに気付くことで前進する。地球に暮らす一人ひとりが環境問題について考え、日々の生活の中でできることを少しずつ実行していくことが大切なのだ。まずは身近なところから始めてみてはいかがだろうか。
例えば、素材に注目して、より環境負荷の少ない製品を選ぶのもひとつの手だ。化学農薬を使用せず、労働環境も守られた中で育てられたオーガニックコットン製のものや、リサイクルカシミアやリサイクルポリエステルのアイテムを買うことが、サステナブルファッションへの第一歩となるだろう。
あるいは、買った商品をメンテナンスしながら長く愛用することも大きな貢献になる。安いから、トレンドだからとやみくもに買うのではなく、着心地の良さやシルエットの美しさなど、感覚的に満足できることを基準に選ぶのもいいかもしれない。
また、サイズや好みが変わって着なくなった衣類は、燃えるゴミとして捨てるのではなく、リサイクルショップやネットオークション、フリマアプリを活用するなど、3Rを意識してみてほしい。3RとはREUSE(リユース:使用済みのものを再利用する)、REDUCE(リデュース:廃棄物の発生を抑え、製造時に使用する資源を減らす)、RECYCLE(リサイクル:廃棄物などを原料やエネルギー現として有効活用する)の頭文字を指したもので、ゴミを減らし資源循環型社会を形成していくためのキーワードだ。
さらに、服を購入する時の選択肢としてリユースショップを視野に入れておきたい。誰かが大切に着ていたものを引き継いでまた大切に着ることは、手軽にできるサステナブルな活動といえるだろう。
また、サイズや好みが変わって着なくなった衣類は、燃えるゴミとして捨てるのではなく、リサイクルショップやネットオークション、フリマアプリを活用するなど、3Rを意識してみてほしい。3RとはREUSE(リユース:使用済みのものを再利用する)、REDUCE(リデュース:廃棄物の発生を抑え、製造時に使用する資源を減らす)、RECYCLE(リサイクル:廃棄物などを原料やエネルギー現として有効活用する)の頭文字を指したもので、ゴミを減らし資源循環型社会を形成していくためのキーワードだ。
さらに、服を購入する時の選択肢としてリユースショップを視野に入れておきたい。誰かが大切に着ていたものを引き継いでまた大切に着ることは、手軽にできるサステナブルな活動といえるだろう。
ショッピングの際、プラスチック製の包装材を断ることも地球環境保全に繋がるアクションだ。生活の中で何気なく使い、ゴミとして捨てたプラスチック製品の多くは海に流入し、海洋環境や生態系へ悪影響を及ぼしていることは近年周知されるようになってきた。このままでは海の生物が絶滅し、2048年までに海洋資源が枯渇してしまうとの見通しも示されている。深刻な海洋汚染を食い止めるためにも、マイバッグを持参するなどプラスチックゴミ削減に積極的に取り組みたいところである。
未来に向けて地球環境を守っていくことは、人類の義務であり、責任であり、課題である。そのためにも、サステナブルファッションはますます重要になっていくことが予想される。そこで一人ひとりが行動を見直して、今できることを考えて、サステナブルな流れに乗ってみればいい。まずは社会の取り組みや活動について学ぶことから始めてみるのはどうか。このような小さな意識や心がけの積み重ねが、やがて大きなうねりとなり、世界を変えていくはずだから。