プジョー208GTiに試乗|Peugeot
Peugeot 208 GTi|プジョー 208 GTi
プジョー 208 GTiに試乗
プジョーブランドでラインナップされるコンパクトカー「208」のスポーツモデル「208 GTi」は、かつて「パリ ダカール ラリー」や「WRC」など、ラリーイベントで活躍した「205 GTi」を先祖にもつ。日本でも7月1日に発売となるこの208 GTiに、渡辺敏史氏がひと足先に試乗した。
Text by WATANABE Toshifumi
206と207の反省点
「小さくても気が効いていて、運転が楽しい毎日のパートナーたるクルマ」
80年代後半以降、一気に拡大した「ホットハッチ」は、そういうニーズにピタリとハマるコンセプトだった。
旧くからのクルマ好きならちょっと昔をおもいだしてみればおわかりいただけるだろう。VW「ゴルフ GTi」を皮切りに、ルノー「サンクターボ」やプジョー「205 GTi」と続々登場したそれらは、小さい体躯でも大人4人が乗って使えるというベース車のユーティリティはそのままに、控えめな加飾とともに、鍛え上げた走りをアピール。用途や場面をえらばない上質なスポーツコンパクトとして、クルマ好きから一定の支持を得てきた。
もちろんそれは今もかわらないわけだが、なんとなくちがう気がしなくもない。スポーツ性やラグジュアリー性も強化され……と、横幅は広がったわけだが、悪目立ちしない普通の佇まいで、毎日ストレスなく乗れて……というモデルを探そうとおもうとじつはあまり見当たらない、そうおおもいのかたもいらっしゃることだろう。
横幅……といえば、昨今のホットハッチは日々のアシとしてちょっと大きく立派になりすぎたという感もなくはない。
プジョーは「205」の後継となる「206」から「207」の世代で、GTiの周囲に、よりラグジュアリーな「GT」、よりスポーティな「RC」を用意し、3つのグレードを展開、多様なニーズをカバーしていた。が、きめこまかなニーズに対応しようとしたそれが、結果的に「GTi」の存在を埋没させたという反省があったようだ。
Peugeot 208 GTi|プジョー 208 GTi
プジョー 208 GTiに試乗(2)
こだわりをもつ人に向けたGTi
「GTi is Back」というキャッチフレーズを下げて登場した208 GTiは、あくまで公道を舞台にマルチパフォーマンスを「シック」に提供するという。プジョー側がこのクルマを説明するうえでもちいたシックとは、英国流にいえばアンダーステートメントということになるだろう。それこそが、往年の205 GTiが獲得した世界観でもある。
そもそも208のインテリアは、現行Bセグメントのなかでもトップクラスの質感を誇るものだが、GTiのそれにはテーマカラーの赤を随所にとりいれた演出で差別化がはかられた。赤い縁取りがなされたメーターリングはLEDによって発光するギミックがとりいれられているが、視線内での煩わしさを感じさせないように光量は控えめに調整されている。
トリム類には赤いグラデーションがくわえられるなど、GTiの個性は外観よりむしろ強く打ち出されているかたちだが、各々のクオリティが高いこともあって、全体の印象は玩具的には感じられない。
随所に赤が配されるレザーとのコンビシートは、いわゆるフランス車的なアタリの柔らかさはないが、体全体をしっかり包み込みながらタッチの良さとホールド感とを両立している。
いっぽうで車重は前型の「207 RC」にたいして約90kgもの軽量化が施さており、油脂類が含まれた日本基準の計測値でも1,200kgと充分に軽く、サイズも通常の208と同様と、扱いやすさはそのまま踏襲されている。
動力性能的には最高速が230km/h、0-100km/h加速が6.8秒とBセグメントのホットハッチとしては一線級の速さを誇りながら、CO2排出量は139g/kmと環境性能においても充分に今日的な仕上がりだ。
ちなみに208 GTiに用意されるボディタイプは3ドアのみ、そして搭載されるトランスミッションも6段MTのみとなる。日本では商機に乏しい組みあわせも、見方をかえればこだわりをもつ人がえらぶというGTiのプレミアム性の表現にみえなくもない。
プジョー側としても208 GTiの重要なファクターであるドライビングプレジャーについて、この組みあわせだからこそ、もたらされるものがあるとしている。平たくいえば、シンプルなボディに3ペダルの組みあわせだからこそ楽しいんだよというメッセージとも受け取れよう。
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プジョー 208 GTiに試乗(3)
かつてのモンテカルロラリーの舞台でGTiを試す
208 GTiの走りは転がり出しから軽く滑らかで、強大なパワーを前輪で抑え込むクルマとはおもえないほど洗練されている。205/45R17と大径のタイヤを意識させない、適度な手応えとともに、スッキリしたインフォメーションをもたらしてくれるステアリングフィールも好印象だ。
遮音性にも気が配られ、エキゾーストサウンドにも過度な誇張はなく……と、クルージング時の室内はベースモデルにたいしても大差はないほどに静かで快適だ。
かつてモンテカルロラリーの舞台でもあったエリアに設定された試乗コースは、ところどころに激しい凹凸や大きなアンジュレーションがあらわれるタイトなワインディングがたっぷり織りこまれていた。が、208 GTiはそのタフなシチュエーションで、驚くほどのパフォーマンスをみせてくれる。
激しい加減速でもアシは路面を離れることなくねっとりと地面をとらえつづけ、パワーオンにも確実なトラクションをみせてくれるいっぽう、すべてにおいてリアクションは丸くおおらかで乗員に痛々しい衝撃を伝えない。適度なロール感とともにコーナーを素早くしなやかに駆けていくライドフィールは、まさにプジョー205 GTiの再来をおもわせる。
くわえて、その走りの気持ちよさを陰でささえているのは、日本の狭い山道でもピタリとハマる手頃な車格と重量といえるだろう。度重なる変速操作もむしろ楽しいとおもわせる、その取りまわしやすさや軽快な振る舞いは街中をキビキビと走りまわるにも、もちろん好都合だ。
控えめな主張をくわえたエクステリアに質感の高いインテリア、そして強大なパワーを柔らかくささえる絶妙のフットワーク。見渡せば該当するものが少ない、大人のための気の効いたスポーツハッチとして208 GTiは最適な選択肢だとおもう。むしろMTというハンディも意外性として、乗る人のアピアランスをアクティブに高めてくれるはずだ。
Peugeot 208 GTi|プジョー 208 GTi
ボディサイズ|全長3,960×全幅1,740×全高1,470mm
ホイールベース|2,540 mm
トレッド 前/後|1,480 / 1,490 mm
最低地上高|120 mm
最小回転半径|5.4 メートル
重量|1,200 kg
エンジン|1,598cc 直列4気筒 DOHCターボ
圧縮比|10.5 : 1
ボア×ストローク|77×85.8 mm
最高出力| 147kW(200ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|275Nm/ 1,700 rpm
トランスミッション|6段マニュアル
ギア比|1速 3.538
2速 2.041
3速 1.433
4速 1.102
5速 0.880
6速 0.744
減速比|3.562
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|トーションビーム
タイヤ |205/45R17
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃費(JC08モード)|13.8 km/ℓ
燃料タンク容量|50 ℓ
価格|299万円