2台のスポーツカーを中心に人気のホンダ|Honda
CAR / MOTOR SHOW
2015年1月19日

2台のスポーツカーを中心に人気のホンダ|Honda

Honda|ホンダ
東京モーターショー 現地リポート

2台のスポーツカーを中心に人気のホンダ

2013年の東京モーターショーにおける国産メーカーの展示のなかでも、とくに注目を集めているのは、やはり「S660コンセプト」「NSXコンセプト」を擁するホンダだ。プレスデーをふくめてほぼ毎日会場に通い詰めているという大谷達也氏が、そのホンダ ブースをリポート。

Text by OTANI Tatasuya

S660には長蛇の列

今回の東京モーターショー、私は一般公開日を含めて合計6日間も足を運んだが、いつ訪れてもいちばん混雑していたのがホンダのブースで、なかでもあたらしい軽オープンスポーツカー「S660コンセプト」がとりわけ注目を集めていた。そのステージに近づくには列に並ばなくてはならないのだが、この長さがときには50メートルを越えるほどの人気を集めていたのである。


ご存じのとおり、S660コンセプトはホンダ「ビート」の再来だとされる。3気筒 660cc SOHC 4バルブエンジンをコクピット後方に横置きしたミドシップ レイアウトで、ソフトトップを折り畳めばオープンにもなったビートが発売されたのは1991年5月のこと。


当時はスズキ「カプチーノ」、オートザム(マツダ)「AZ-1」と軽自動車規格の2シーター スポーツカーが3台も発売されたが、なかでもいちばんヒットしたのがこのビートで、5年間で3万4,000台ほどが販売された。さらに驚くのがその現存率、つまり現在まで残っている台数の比率である。じつに、販売されたうちのなんと70パーセント近くがいまも元気に走り回っているそうだ。

HONDA S660 Concept|ホンダ S660 コンセプト 05

HONDA S660 Concept

HONDA S660 Concept|ホンダ S660 コンセプト 09

HONDA S660 Concept

公開されたS660コンセプトは、その名のとおりコンセプトカーで、量産型は2015年の発売を目標に開発中とされる。基本的な成り立ちは“先代ビート”と同様、660ccをミドシップした後輪駆動で2シーターのオープンスポーツとなる。


もっとも注目されるのは、その軽自動車とはおもえない大人びたスタイリングだろう。前回の東京モーターショーでは「EV STER」というコンセプトカーが展示されたが、この評判がすこぶるよかったため、S660のプログラムが決まったという。前後のオーバーハングが極めて小さく、フロントからリアまで一直線に上昇するキャラクターラインを入れ込んだ強烈なウェッジシェイプなどは、いずれもこのEV STERから受け継がれたもの。ちなみに、デザインを担当したのはどちらもホンダの杉浦 良氏である。

量産型でもこのデザインがそのまま踏襲されるようだが、じつは展示されたコンセプトカー、全幅が軽規格より3.5cmほど広くなっているという。これはワイドなタイヤをカバーするためにフェンダーを大型化した結果だというが、もちろん、量産型はきっちり軽規格の枠に収まってくるはず。


デザイナーの杉浦氏に「このクルマに黄色いナンバープレートがついたら、だいぶ印象が変わってしまうんじゃないですか?」とたずねたところ、「すでに黄色いナンバーを前提にデザインしています」との答えが返ってきたので、これはまちがいないだろう。

HONDA EV-STER|ホンダEV-STER 18

2011年の東京モーターショーで発表された「EV STER」

会場では「価格が200万円を切っていれば……」という声を数多く耳にしたが、どうやらこれは難しいかもしれない。ただし、200万円をわずかにオーバーする程度であれば、われわれ庶民の手にも届くスポーツカーが久々に登場することとなる。再来年の発売が待ち遠しい。

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S660、NSXにつづく、第3のスポーツカーのうわさも

ホンダのもうひとつの目玉は「NSX Concept」。こちらは各地のショーで展示されたものと基本的におなじだが、今回はきれいなパールホワイトにペイントされて登場した。V6 直噴エンジンを縦置きにし、3モーター方式(前:2、後:1)の「SPORT HYBRID SH-AWD(Super Handling - All Wheel Drive)」を搭載、フロントの左右輪を独立して駆動することで軽快な操縦性を実現するという。


このNSXで興味深いのは、開発の中心がアメリカで、とりまとめ役(ホンダはLPLと呼ぶ)がアメリカ人であることだろう。ただし、パワープラントの開発は日本の栃木研究所が中心となっているほか、LPLのテッド・クラウス氏はアメリカ人とはいえ父親の影響で若い頃からフォーミュラカーを操っていたエンスージャストだから、スポーツカーにたいする考え方は確か。

また、初代NSXのLPLだった上原 繁氏とも膝を突きあわせて話し合いをしているとのことなので、新型は初代NSXのスピリットを現代の技術で蘇らせたハイブリッド スポーツカーになると見ていいだろう。

HONDA NSX Concept|ホンダ NSX コンセプト 22

HONDA NSX Concept

HONDA NSX Concept|ホンダ NSX コンセプト 27

HONDA NSX Concept

ところで、ホンダはS660、NSXにつづく“第3のスポーツカー”を開発しているとの噂が根強い。

先日、ホンダの栃木研究所でおこなわれた取材会では、本田技術研究所(以下、研究所)の山本芳春社長が「大きいのと小さいのをやれば、真ん中をやりたくなるのは自然なこと。研究所として現在、開発に取り組んでいます」とその存在を認めた。

ただし、研究所は本田技研工業(以下、本田)のために新型車の開発をおこなうための会社で、最終的に商品化するかどうかは、厳密にいえばメーカーである本田が決めること。もっとも、研究所が本田の同意なしに開発に着手するともおもえない。というわけで、中型スポーツカー、おそらくは「S2000」の再来も楽しみに待ちたいところだ。


そのほか、国交省を中心に現在検討中の“マイクロコミューター”構想にマッチする小型電動EV「MC-β」、新型フィットベースのコンパクトSUV「VEZEL」などがホンダ ブースを飾っていた。

           
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