伊藤嶺花×小山進|スピリチュアル対談(前編)
Lounge
2015年3月4日

伊藤嶺花×小山進|スピリチュアル対談(前編)

スピリチュアル対談 Vol.16|小山進

伊藤嶺花が“視た”ゲストの肖像

「ロックンロール・スピリッツの聖職者」(前編)

さまざまなステージで活躍するクリエイターをゲストに迎え、スピリチュアル ヒーラーの伊藤嶺花さんが、ひとが発するエネルギーを読み解くリーディングと複数の占星術を組み合わせ、クリエイターの創造力の源を鑑定。現世に直結する過去生や、秘められた可能性を解き明かし、普段は作品の陰に隠れがちでなかなかおもてに出ることのない、クリエイター“自身”の魅力に迫ります。

Photographs by SUZUKI KentaText by TANAKA Junko (OPENERS)

第16回目のゲストは、京都府出身のショコラティエ/パティシエ小山進さん。世界のショコラ愛好家が一堂に会する「C.C.C.(Club des Croquers de Chocolat)」の品評会で、2年連続最高位を獲得するなど、日本人の感性をフルに生かした、小山さんの丁寧なもの作りがいま注目を浴びている。世界を驚かせたその創造力の源とは?

海外での修行経験いっさいなし!

伊藤嶺花(以下、伊藤) まずは、2年連続のダブル受賞(※)おめでとうございます。

小山進(以下、小山) ありがとうございます。ぼくなんかが賞を獲るぐらいだから、最初は参加者が5人ぐらいしかいないとおもっていたんです(笑)。じっさいは300人ぐらいいたみたいで。

伊藤 素晴らしい快挙ですね。チョコレートに本腰を入れはじめたのは、いつごろの話ですか?

小山 19歳からお菓子の世界に足を踏み入れて、39歳のときに兵庫県三田市に自分の店「パティシエ エス コヤマ」を構えました。もともとチョコレートをたくさん扱っている店ではあったんですが、中心はケーキなどの生菓子で、チョコレートにどっぷりというのはなかったですね。

それが自分の予想に反して、お客さまにご迷惑をおかけしてしまうぐらい、列の絶えない店になってしまって。これはなんとしてでも、並ばずに商品を買っていただける店を作らないといけないってなったとき、もう1店舗作るならチョコレートやなっておもったんです。いまから6年前の話です。

伊藤 どんなきっかけで「SALON DU CHOCOLAT」に出展されることになったのでしょう?

小山 本格的に海外で修行した経験もないですし、世界に通用するとかそんなことを考えたことはいままで一度もないんです。そんなぼくが出展することになったのは、毎年伊勢丹新宿店で開催されている、日本版の「SALON DU CHOCOLAT」がきっかけですね。そこでフランスから訪れていた主催者に「フランスでもウケそうだから、一度出てみないか?」と言われて。リップサービスやとおもっていたけど、毎年声をかけていただいているうちに、東日本大震災が起こったんです。ぼくは阪神淡路大震災も経験していますし、お菓子屋としておもうところがあったんですね。

伊藤嶺花×小山進|スピリチュアル対談(前編) 02

震災前から日本がだんだん弱くなってきている、という話をいろいろなところで耳にするようになりました。じゃあなにが弱くなっているのかなって。いまの日本は強いところもいっぱいあるけど、親とか先生以外の人が子どもを育ててくれた古き良き時代と比べると、行き過ぎてしまったところがある。立ち戻らないといけないことがあるとおもうんです。

声をかけていただいたタイミングが、そういうことをすこしずつ行動に移していきたいとおもっていたときだったから、次の行動の指針になればとおもって、招待を受けさせていただくことにしました。そしたら、たまたまそれに品評会がついてきたんです。

伊藤 その品評会には、世界のショコラティエが集結するそうですね。どんな準備をして挑まれたのでしょう?

小山 ぼくがいまさらヨーロッパのことをリサーチしても、石に灸をすえるようなもの。「普段お店で出しているものが、お客さまからおいしいと言っていただいているものが、本場でも評価されましたよ」ということでないと意味がないとおもったんです。これまで自分がやってきたことの延長として、あくまでも自然体で臨みました。

伊藤 その結果、最高位を獲得されたわけですね。すごい!

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2011年の「C.C.C.」で最高位を獲得した5種のセット「C.C.C. デギュスタシオン No.5 2011」

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つづく、2012年の「C.C.C.」で最高位を獲得した5種のセット「C.C.C. デギュスタシオン No.5 2012」

※毎年10月、パリでおこなわれるチョコレートの祭典「SALON DU CHOCOLAT」。小山さんは2011年、その祭典で発表される世界でもっとも権威あるショコラ愛好家協会「C.C.C.(Club des Croquers de Chocolat)」の品評会で、初出展ながら最高位の「タブレット5枚+★」を獲得するという、史上初の快挙を成し遂げる。さらに、その年一番活躍したショコラティエに贈られる「SALON DU CHOCOLAT AWARD」の「外国人部門最優秀ショコラティエ賞」も受賞。つづく2012年にも同賞をダブル受賞した。

スピリチュアル対談 Vol.16|小山進

伊藤嶺花が“視た”ゲストの肖像

「ロックンロール・スピリッツの聖職者」(前編)

「おいしい」とおもう感覚を掘り下げる

小山 おいしいとおもう感覚を、実験しながら掘り下げていくのが好きなんです。たとえば、エスコヤマを代表する「小山ロール」。日本人の作るロールケーキって、ヨーロッパの人から見ると、スポンジの生地をジェノワーズって言うんですけど、それに生クリームを巻いているだけだとおもわれている。それが最近賞を獲ったりしたことで、「日本のもの作りって、じつはすごく深いところまで考えて作られているんじゃないか」ってことに気づきはじめた人がたくさんいて。このあいだも、有名なフランスのパティシエが、小山ロールを食べるためだけにうちの店に来られて、「すごい、すごい」って連発していました(笑)。

「絶対ヨーロッパ人には考えられないレシピだ」って言う人もいます。ヨーロッパでどうこうという話はぼくにはわからないけど、多分あそこで賞を獲ること自体、日本で本当においしいものを作っている人からしたら、そんなに難しいことではないのかもしれない。かと言って、だれでもいいというわけでもない。きっちり丁寧にやっていないとダメだし、深く掘り下げることを普段からしていないとダメだとおもいます。

伊藤 そうですよね。深く掘り下げるということを、品評会だからというわけではなく、つねに意識されていらっしゃいますもんね。

小山 そうしないと面白くないとおもうんです。ぼくとほかのパティシエのちがいはなにかっていうと、それぞれのオリジナリティ。毎日のインプットもちがえば、子どものころのインプットもちがうわけじゃないですか。それを全部取り込んでアウトプットすると、世の中にいっぱいオリジナリティのある商品ができる。

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もっと言えば、一番楽しいのはああでもないこうでもないと言いながら、あたらしい商品のアイデアを練っているときです。ぼくはキッチンで商品を作りません。試作はキッチンでしますけど、発想の種というのは、24時間どこにでも転がっているわけです。だれかと会って話したり、これまで食べたことないものを食べたり、そんなところにヒントがある。「こんな自由な人がいるのに、おれはなにしてんねや」って悔しいおもいに駆られたりしてね。

独立するときに三田を選んだのも、自然の多いところの方がぼくは心地がいいし、そんなところの方が、子どものころのことを思い出しながら、いろいろなアウトプットに変えられやすそうだとおもったからなんです。

大人のための店を作りたい

伊藤 じっさいに三田にお店を構えてから、アウトプットしやすくなりましたか?

小山 特別にはないんですけど、「ええ環境やなぁ」っておもいながら仕事していると、いろいろアイデアは浮かんできますね。じつは今年2月、おなじ敷地内にあたらしい店をオープンしたんです。「Rozilla(ロジラ)」というチョコレート専門店で、大人のための店を作りたい、という想いを形にしたものです。

伊藤 どうして大人のためのお店にしようとおもわれたんですか?

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小山 先ほどお話しした“強かった日本に立ち戻る”ということとリンクしています。ぼくが小さかったころは、駄菓子屋のおじちゃんや近所のおばちゃんが、ぼくの名前だけじゃなく、学校の成績もなにか悪さをしたらそれも知っていた。そうやってみんなが興味を持って、地域を支えてくれていた時代といまはちがうじゃないですか。

ぼくにも21歳と17歳と2歳半の子どもがいるんですが、上のふたりが小さかったころは忙しくて、あんまり遊んでやれなかった。「これ見て、これ聞いて」に答えてやれなかったんです。

自分の子ども時代はといえば、母親はぼくの話をよく聞いてくれました。伝えることをあきらめないまま大人になったのは、たぶんその経験が根底にあるからだとおもうんです。いまでも人に伝えるのけっこう好きですから。「どっちみち言ったって無理やろ」とか「どっちみち変われへんやろ」とはならない。

伊藤 「伝わるまで伝える」という想いを強く持っていらっしゃるんですね。

小山 そうなんです。そんな子どもたちの「これ見て、これ聞いて」を聞き逃さない世の中にしたいという想いから、この店を作りました。コンセプトは「大の大人が本気で作った秘密基地」。「子どもに堂々とした後ろ姿を見せられているか?」という、大人に対するぼくなりの問いかけです。「子どものときは秘密基地作ったし、ごっこ遊びもしたし、いっぱい面白いこと考えてたやん。バカバカしいこと考えてたやん。いつの間にそれを忘れて、どこに置いてきてしまったの?」ってことを、この店でちょっと思い返してほしいなと。

スピリチュアル対談 Vol.16|小山進

伊藤嶺花が“視た”ゲストの肖像

「ロックンロール・スピリッツの聖職者」(前編)

ミュージシャンから歯科技工士……やってみたいこといっぱい!

伊藤 お店作りにも相当なこだわりが詰まっているんですね。

小山 もうね、そういう想いがなかったらものを作れない人間なんです。逆にその想いを形にできるなら、パティシエじゃなくても、なりたい仕事はいっぱいあったんですよ。先生、ミュージシャン、陶芸家、テレビのプロデューサー、映画監督、歯科技工士……。

伊藤 歯科技工士ですか(笑)。

小山 人の口にシリコンゴムを押し付けてみたかったんです(一同爆笑)。いまでもおもっていますよ。歯医者に行ったときは、シリコンゴムを練ったり、セメント練ったりしているのを横目で見ながら、「ぼくにやらせてほしい!」って(笑)。

伊藤 面白い夢ですね(笑)。ミュージシャンといえば、音楽はすこしかじったことがあるとうかがいましたが。

小山 ほどほどですよ。あくまでも「ほどほどに」がちょうどいいんです。

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伊藤 歌う方ですか?

小山 ギターと歌です。中学3年生のときから、ずっと甲斐バンドの大ファンなんですけど、あるとき知り合いづてに甲斐よしひろさんとお会いする機会があって。それだけでも幸せなのに、それ以来甲斐さんと親しくさせていただいているんです。学生のときに好きになったバンドって、LP(レコード)聴いて、ライブを観に行って、ステージの構成とかを見て、かっこいいとおもっているわけじゃないですか? それを考えて作った人にじっさいに会ったとき、ものすごく素敵だったから、なんかすごくホッとしたのを覚えています。

そしたらこのあいだ、甲斐さんからツアーパンフ用の対談依頼がきたんですよ。もう、ひっくり返りましたね(笑)。新譜のライナーノーツも書かせてもらって。

伊藤 えー、すごい!

小山 もう気分は音楽評論家ですよ(笑)。そこでも、当然自分じゃないと書けない内容を書かなきゃいけない。ぼくが頼まれた曲は高校2年生のときに流行った曲だったんです。いまちょうど高校2年生の息子がベースをやっているので、一回聴かせてみたんですよ。そしたら「むっちゃかっこええ!」って言ってカバーしだして。ライナーノーツにはそのことを書きました。

チョコレートを通して伝えたいこと

伊藤 いい話ですね。想いを形にするという意味では、ケーキやチョコレートを通して、なにかを「伝える」ことをすごく大事にされていますよね。

小山 そうですね。そのためには、味で伝えなきゃいけないし、その味は唯一無二のものでなくてはダメだとおもっています。ここでいう「味」って、お菓子そのものの味だけではなくて、味を取り巻く周辺の部分、店の庭やお菓子を包んでいるパッケージも含めた味わいです。

お菓子ってたしかに幸せを呼ぶものだとおもうんですけど、同時に「このお菓子のコンセプトはこうだから、わたしもこんなことを大事にしていきたい」って感じてもらえたり、人の人生を左右する可能性だってある。

ぼくたちの先輩世代には実現できなかったことを、きちんと形にして残しておきたい。いまはものが増えすぎて溢れているような時代だからこそ、真のオリジナリティが必要になる。言い換えれば、「本物でありさえすれば」なんでもいい。お菓子を軸に伝えられることがたくさんあるとおもうんです。

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伊藤 いま一番伝えたいことはなんですか?

小山 「みんなめちゃくちゃ楽しいでしょ?」ってことですね。

伊藤 先ほど「伝えなきゃ」とおっしゃられていましたが、本当に伝えるために現世に生まれてきた方です。パティシエ、ショコラティエ、ミュージシャン、歯科技工士。職業はいろいろありますが、ご自身でもおっしゃられていたように、なんでもよかったとおもうんです。宇宙から降り注いできたメッセージを受け取る力を持っていらっしゃるので、それを受け取って、ご自身のなかに浮かんできたアイデアを、どんどん実現したいという魂の持ち主です。

小山 ほぉ!


前編では小山さんの現世での使命が明らかに。後編では、ずっと一貫していたという驚きの前世と、現世での使命についてさらにくわしく解き明かしていきます。

──前世から引き継ぐ異端児の精神!?
スピリチュアル対談(後編)へ

小山進| KOYAMA Susumu
1964年、京都府生まれ。大阪あべの辻調理師専門学校卒業後、1983年に神戸の「スイス菓子ハイジ」入社。本店シェフパティシエ、商品開発部長に。数々の菓子コンクール(TVチャンピオンほか多数)で優勝し、2000年に独立。有限会社パティシエ エス コヤマを設立し、全国10数社の商品開発および技術指導をおこなう。2003年より兵庫県三田市に「パティシエ エス コヤマ」を開店。支店は出さず、店頭販売だけで1日1600本の売上を誇る「小山ロール」は、1本売りロールケーキの先駆けに。2011年、2012年と2年つづけて「C.C.C.(Club des Croquers de Chocolat)」で最高位を獲得し、国内外で大きな反響を呼ぶ。2012年11月に技術指南書『chocolat japonais(ショコラ・ジャポネ)』(柴田書店)、初の一般書『丁寧を武器にする』(祥伝社)を出版した。

取材協力
code kurkku(コードクルック)
渋谷区代々木1-28-9
ランチ│11:30~14:30ラストオーダー
ティータイム|14:30~17:00
ディナー│18:00~24:00 ※23:00ラストオーダー
Tel. 03-6300-5231
http://www.kurkku.jp/codekurkku/

           
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